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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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面接、ソフィーナ編

第八十章 面接、ソフィーナ編


 朝の九時から例のメイド達を呼び出すことになった。いよいよスパイ捜しの始まりである。

「スパイ容疑の調査であることを知られると警戒されてしまう恐れがある。よって今回は君の満足度調査という体で話を進めることにしよう。三人一緒だと犯人が他のメイドの様子を窺うかもしれぬ故、一人ずつ呼び出すことにする。君も悟られぬよう気をつけてくれ」

「はい、わかりました」

ハキハキとした言葉遣いながらもお姉さんは落ち着きなくしきりに体を動かしている。

「どうしたんですか?」

「うむ、実は・・私は緊張感に弱いのだ」

「緊張感? 戦場では百戦錬磨と聞きましたが」

「戦うときに緊張したことなど一度たりともない」

「はあ」

「だが、こういう動きのないものは非常に緊張してしまう」

「なるほど」

完璧なイメージが強い人だけに意外な言葉だった。


 コンコン。その時ドアをノックする音が響いた。

「ソフィーナです」

「は、は、入っていいぞ」

「失礼します」

ソフィーナはまるで面接試験でも受けるかのように緊張した面持ちで入って来ると、椅子の横に立ったまま座ろうとしなかった。

「どうした?」

「座ってもよろしいでしょうか」

「あ、ああ、座っていいぞ」

なるほど面接の基本を熟知しているようだ。

「実はこの城にホワイト国のスパイが潜入しているらしいのだ。それが誰なのかを今から調べようと思っている」

えー! いきなり全部言っちゃってるんですけどー!

「スパイですか?」

「なぜそれを知っておるのだ!?」

駄目だこりゃ。

「はい、今ピピプル様がおっしゃっておりました」

「そうか。では尋ねるがお前はスパイか?」

「いえ、違います」

この質問でスパイだと言ってもらえるなら苦労はしないだろう。

「では、帰っていいぞ」

「ちょっと待ってください。それで終わりですか?」

俺は慌てて口を挟んだ。

「あっ! いや、まただ。もう少し聞きたいことがある」

「はい、何でもお答えします」

「四郎君、何か聞きたいことはあるかな?」

あれ? 俺は黙って座っているだけじゃなかったっけ?

「おい、四郎君」

「あ、はい。では、ここに勤めて何年になりますか?」

「五年目になります」

「あなたの出身地はどこですか?」

「この城の隣にありますセリーナ村です」

「あなたはなぜこの城で働こうと思ったのですか?」

「はい、私の家は母一人娘一人の家庭です。病気がちの母に楽をさせたくてお給料のいい城で働くことを希望いたしました」

「すると、お金に困っているということですか?」

「はい、お恥ずかしながら」

「なるほどよく分かりました。最後に、もしこの国がホワイティアに攻め込まれたら、あなたはどうしますか?」

「もちろん、王様やピピプル様を命がけでお守りいたします」

「それはどのような手段でですか?」

「はい、私の得意魔術はバリアーです。敵の攻撃を出来る限り防ぎます」

「なるほど。わかりました」

それにしても礼儀正しい人だ。誠実な雰囲気も待ち合わせている。この人はスパイではないような気がする。

納得した俺はお姉さんに『これくらいでいいですか』と小さな声で尋ねた。

「あ、ああ。助かった」

その言葉を聞くと俺はソフィーナに退出してもらうことにした。

 それにしてもこんな経験など今までしたことがない。当然と言えば当然なのだが、生まれてまだ十五年、面接官など経験するわけがない。ましてや今回は全てアドリブでの質問だ。決して頭脳明晰とは言えない俺にしてはよく頑張った方だと思う。この後この状態がまだ二人も続くかと思うと気が遠くなりそうだ。

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