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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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謎の光るボタン

第七十六章 謎の光るボタン


 すっかり元気を取り戻したマリーと俺はいつもの部屋に戻った。

「マリーさん! お久しぶり!」

芽依が元気よく言った。

「生きてたの?」

ブランシェは意外ときついことを言うときがある。

「・・・・」

「・・・・すっかり仲良しね」

小百合は機嫌が悪いのか声が暗い。

「あら、ご無沙汰だったわね。小百合。私がいない間に四郎と進展はあった?」

「残念だけど全くなかったわ。この二人が厳しく見張っているのでね」

「そう、安心したわ。じゃあ、ライバル関係は続行ってことかしら?」

「ねえブランシェ。私たちって眼中にないってこと?」

「許せない」

芽依とブランシェがブツブツ呟くのは全く無視され話は続いていく。

「そうね。それもあと少しの間だけどね」

「どういうこと?」

「私日本に帰ることにしたのよ。明後日にはここを出るわ」

これを聞いたマリーは驚きの表情を見せた。

「どうしたのよ突然」

「もうすぐ高校受験でしょ。私の将来を考えた場合、ここにいては駄目だって気付いたの」

「じゃあ、四郎のことは諦めるってこと?」

「もし、四郎君がここに残るのなら、そうなるわね」

マリーは俺の方を向いて大きな声で尋ねた。

「四郎、あなた小百合と帰るつもりなの?」

「まだ決めてない」

「じゃあ、帰る可能性もあるってこと?」

「ああ」

俺の声は自然と小さくなっている。

「駄目よ! そんなの私が許さないわ!」

「四郎君の行動をあなたが決めるのはおかしいわ」

小百合がすかさず言い返す。

「そうだよ。お兄ちゃんの好きにすればいいよ」

「何よ。芽依まで」

「四郎さんには四郎さんの生き方があるから。自分で決めるべき」

ブランシェは俺に近づきそっと手を握っていった。

「ちょっと、どさくさに紛れて何四郎の手を握ってるのよ!」

両手を握り下に突き出す仕草でマリーが怒鳴った。

「あ、でも私はどうなるの?」

「ちょっと離れなさいよ。とにかく四郎はここに残るのよ」

「何で決めつけるわけ?」

「そうだよ。マリーさん自分勝手すぎだよ」

ブランシェの何気ない心配ごとには誰も気付いてないようだ。

「まあ、待てって。帰るかどうかは明日中に決めるから」

俺は得意のその場しのぎを発動した。結局、このあと一時間ほど言い合っていたのを考えると、俺の発言はほとんど効力がないようだ。

 午前零時を越えたあたりでようやく解散となったが、小百合が帰ってしまうとこの名物的な光景も見られなくなるのだろうか。で、肝心の俺はというと、このまま落ち込んでいたマリーをおいて帰ることはできないという考えが俺の脳を支配しつつあった。もちろんブランシェのことも気になっている。一番の問題は芽依だ。俺が残れば芽依はおそらくここに残る選択をするだろう。芽依の将来にどの程度の悪影響を与えるのかが予測できない。

 俺は悩みながら寝室に戻るとテーブルの上に光るものが置かれているのを発見した。よく見ると見覚えのある小さなボタンだ。

「これって立体映像が出る例のボタンか?」

誰がこんなものを置いたんだ? まさか三号の忘れ物? そんなことはあるまい。いくら何でもこんなところに忘れるわけがない。第一ここに三号が来るとは考えにくい。では誰が? 俺はしばらく迷っていたが、このままでは埒が明かないと思いこのボタンを押してみることにした。

 俺が恐る恐るボタンに触れると一人の女性が現れた。

「ホワイティア?」

そこに映っている女性はホワイティアだった。顔には包帯を巻いている。あの爆発で怪我をしたのだろうか。どうにも痛々しい。しばらくすると映像が動き話し始めた。

「四郎。四郎。四郎。どうしてあなたは行ってしまったの? あんなにも私のことを愛してくれていたのに」

いや、そんなこともないのだが・・・・

「私あなたがいないと生きていけないの。どんな願いでも叶えるわ。だからお願い、私のところへ帰ってきて」

今にも泣き出しそうな声で語りかけている。あのプライドの高いホワイティアがこんなことを言うなんて意外だ。

 ベッドに入ろうとすると枕元にまたボタンを発見した。まさかホワイティアか?

「もし、あなたが帰ってこないのなら私自殺するわよ。それでもいいの? 毎夜あなたの枕元に化けて出てやるんだから」

割と日本人っぽい考え方である。

「でも、そんなことをしたらピピプルを喜ばせるだけだから止めるわ」

何が伝えたいんだ!

「お願い戻ってきて。すぐに戻ってきてくれたら、あなたの好きなホワイトドラゴンの剥製をあげるわ」

そんなもの好きじゃねえ!

 待てよ? このボタン誰が置いたんだ? この城の中にホワイティアが送り込んだスパイがいるってことか? 俺はこのボタンを持つと慌ててお姉さんのところに走った。

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