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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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マリーのいない日々

第六十九章 マリーのいない日々


 何もない静かな時が流れる。やがてマリーはゆっくりと立ち上がると何も語らず俯いたまま歩を進め始めた。

「マリー」

俺は自然と名前を呼ぶが、マリーは振り返ろうとはしない。ただただ床を見つめるだけだ。そのまま夢遊病者のように部屋から出て行った。

 次の日からマリーは俺の前に顔を出さなくなってしまった。今まで当たり前の様に傍にいた人物だけに何となく違和感を覚える。

「四郎さん。今度はあなたの世界のマフラーを編んでみたの。使って」

ブランシェが店で売っていそうな見事な出来栄えのマフラーを差し出した。

「四郎君。私はクッキーを焼いたわ。一緒に食べましょう」

「お兄ちゃんを主人公にした小説を書いたよ。モテモテのお兄ちゃんが女の人を振りまくるという痛快活劇だよ。読んでみて」

マリーが来なくなった分こいつらがやたらと俺にまとわりついてくるようになった気がする。まあ強力なライバルがいなくなったのだから当然と言えば当然か。

「元気を出して四郎君。みんなでトランプしよう」

「トランプって何?」

もしかして俺に気を使っているのか? 確かに最近の俺は考え込むことが多くなっている。マリーが俺を殺そうとするなんて思ってもいなかったからショックを受けたのは事実だ。それが表情に出ているのかもしれない。そう、俺を殺そうと‥‥

「お兄ちゃんの番だよ」

「おお、悪い」

マリーには愛されていると思っていた。いや愛されていたのは間違いないだろう。そんな人物にあんなことをさせるなんて。よほど追い込んしまったのだろう。心の奥底に溜まったイライラを俺が爆発させてしまったようだ。

「お兄ちゃん、それアタリだよ!」

「アタリ? ババ抜きをやってたんじゃなかったっけ?」

「リーチ一発ホンイツ三暗トイトイドラドラで親の三倍満だよ」

「いつから麻雀になったんだ!? てか、お前は小学生だろうが!」

「今、女子小学生の間で麻雀が大ブームなんだよ」

「嘘つけ!」

「あら? それ私もアタリだわ」

「小百合まで何言ってるんだ!」

「私もロン」

「ブランシェ! 確か『トランプって何?』って言ってたよな! トランプは知らなくても麻雀は知ってるんかい!」

落ち込んでいるはずなのに思わずツッコミを入れてしまう。もはやこれは病気か?

 大騒ぎをした日の夜はより寂しさを感じるものだ。俺はソファーに座ると先程メイドが持ってきてくれたフレッシュジュースを口にした。マリーは怒っているのだろうか。それとも落ち込んでいるのだろうか。マリーが去っていった扉を見つめて考え込んでいると小百合の声がした。

「四郎君、ちょっといい?」

「ああ」

「お話ししない?」

「何の話だ?」

「私たちの将来の話よ」

え? 何だ唐突に。しかし断る理由もないので俺はオーケーすることにした。

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