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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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救世主

第六十六章 救世主


「ブランシェ! 大丈夫か?」

俺はとっさにブランシェを抱き上げた。

「四郎‥‥さん?」

「ああ、そうだ。体は大丈夫か?」

「大丈夫。私‥‥どうしたの?」

「ホワイティアの魔力で動けなくなっていたんだ」

「そうだったの。で? ここはどこ?」

ブランシェはきょろきょろと辺りを見回した。白を基調としたホワイティアの城と違ってここは黒を基調としている。違いは一目瞭然だ。

「落ち着いて聞いてくれ。ここは黒の国だ」

「黒の? え!? 敵国?」

ブランシェは慌てて床を這いながら壁際に移動した。

「安心してくれ。ここは君の敵じゃない。むしろ味方だ」

「どうして! 黒が味方なの!?」

「俺が保証する。ここにいれば安心だ」

「でも‥‥」

「俺を信じてくれ。君は俺が守るから」

「私、四郎さんを信じてる。だからお願い。私から離れないで」

「ああ、大丈夫だ。いつも一緒にいるよ」

「よかった」

取り敢えずブランシェは落ち着きを取り戻したようだ。だが、何やら痛い視線を感じる。

「ふーん。そうやって女を虜にしていくのね」

マリーは腕組みをして冷ややかな目で俺を見ている。

「これって異世界じゃなかったら大事件よね。付き合ってる恋人の前で別の女の子に甘い言葉をかけるなんてなかなか見られない光景よね」

小百合は指をボキボキと鳴らしながら少しずつ近づいてくる。

「お兄ちゃんは私の許嫁になってるんだよ。もう少し自覚すべきだと思うけどな」

芽依は鬼が持っていそうなぶつぶつの付いた棍棒を肩に担いでいる。どこからこんなものを出したんだ? この小説はギャグマンガじゃないんだぞ。

「この人たちはどうしてこうも暴力的なの?」

ブランシェのこの一言がさらにマリーたちを刺激する。

「何いい子ぶってるのよ! そんな言葉で四郎の気を引こうとしたって無理よ」

「気を引くつもりなんかない。そんなことしなくても四郎さんは私の方を向いてくれているから」

「四郎はあなたに興味なんかないわよ!」

マリーの声はさらに大きくなった。

「そんなはずはない。私のこと誰よりも好きって言ってくれたから」

芽依も黙ってはいない。

「残念だけどお兄ちゃんと結婚するのは芽依って決まってるんだよ」

これにはさすがのブランシェも少し動揺したらしく俺の方を向いた。

「どういうこと?」

「こ、これに関しては俺のせいじゃないから」

「ちょっとはっきりと話して」

ブランシェまで俺を攻める方に回ってしまった。ああ、何て不幸なんだ。俺は決して悪いことはしていない。これは自信を持って言える。が、ここは自分の命を大切にしよう。

 俺はおもむろに部屋の出口へと駆け出した。

「ちょっと待ちなさい!」

俺が部屋を飛び出そうとすると透明な壁にぶち当たって部屋の中へと跳ね返された。

「マリー、ナイスね」

小百合がマリーとハイタッチをしている。ああ、またしてもこの地獄は続くのか。と思ったときマリーのお姉さんが入ってきた。

「どうして気圧の壁ができているんだ?」

「お姉さん!」

俺は藁をも掴む思いで彼女の後ろに隠れた。

「何だ? 修羅場でも迎えたのか?」

「はい、そうです。助けてください」

「はははは。よく事情は分からぬがあまりいじめると大切な彼が家出をするかも知れんぞ」

「だって‥‥」

マリーは下を向いている。もしかしてお姉さんには弱いのか? まあ何にせよ助かった。女性陣の戦闘オーラが静まっていくのがわかる。

「四郎君もはっきり誰にするか言ってやればいいではないか?」

せっかく助かったと思ったのだが、また余計なことを‥‥。

「そうよ。四郎、はっきり言いなさいよ」

「はっきりって何を言えばいいんだ?」

「『俺はマリーと結婚する』って言えば皆諦めるわよ」

「ちょっと何勝手なこと言ってるのよ!」

「そうだよ。結婚するのは芽依だよ。魔人さん願いを叶えてくれるもん」

「結婚するってどういうこと?」

ますますヒートアップさせてしまったような気がする。俺はさらに小さくなってマリーのお姉さんの背中に隠れた。

「わかった。わかった。四郎君、私と一緒に来てくれるか? 少し話をしよう。すまぬが彼氏は借りていくぞ」

俺はまるで太鼓持ちの様にマリーのお姉さんにくっついて部屋を出た。

「結婚するって何?」

「だから四郎は私と結婚することになっているのよ」

「違うよ。芽依と結婚するんだよ。巻物の魔人さんが願いを叶えてくれるんだよ」

このまま彼女たちをほっておいてもいいのもだろうかという気がしないでもないがどうにかなるだろう。俺はB型気質丸出しの精神でこの部屋を後にした。

 俺がついて行ったのはマリーのお姉さんの部屋なのだろうか。たくさんの武器が壁にかけられている。

「少しほとぼりを冷ましてから部屋に戻るといい。女と言うものはカッとなるとどこまでもヒートアップするものだ」

マリーのお姉さんは大きな声で笑うとどこから出したのか一杯の紅茶を差し出した。何かホワイティアの時と違って安心して飲めそうだ。

「ありがとうございます。助かりました」

「礼には及ばぬ。ゆっくりしていくといい」

お姉さんは大きなロッキングチェアを少し揺らして言った。

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