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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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結婚式前日の緊張

第六十章 結婚式前日の緊張


 いよいよ結婚式前日の夜を迎えた。今日は結婚式の打ち合わせだけで一日が過ぎていった感じだ。夜になっても最終打ち合わせとかで爺や的な人物が入れ替わりこの部屋にやってくる。

「では、もう一度確認いたします。新婦様の後について新郎様の入場になります。五メートル以上離れることをお忘れなく。そしてこれがお互いに交換する指輪にございます。時価百三十億円になりますので、お気をつけてお持ちください」

「ひ、百三十億円!」

俺は思わず手を引っ込めた。

「そしてこれが儀式の最後にサインしていただく婚姻届けです。これと同じものを用意しておきますのでここにサインしていただきます。もちろん新婦様からサインし次に新郎様のサインになりますので、順番をお間違いになりませぬようお願いします」

「随分立派な紙だな」

「それは当然にございます。何しろ女王様のご結婚ですから」

「まるで本物の婚姻届けに見えるが」

「当然本物でございます」

え? どういうことだ? マリーに見せつけるための偽の結婚式だろう。本物の婚姻届けを使っていいのか?

「明日の結婚式は本当の結婚式なのか?」

「おっしゃってる意味がよくわかりませんが」

やはりホワイティアは家来たちに本当のことを言ってないのか。少し用心深すぎるような。

 長い最終確認を終えると爺や的な人物は部屋から出て行った。やれやれ、やっと一人になれた。

「どう? 明日の段取りは全て頭に入ったかしら?」

「だから突然入ってくるなって言ってるだろう!」

「あら、いいじゃない。明日から夫婦なんだし」

「冗談はやめてくれ。結婚式は偽物だろう」

「誰が偽の結婚式って言ったの?」

「え????? どういうことだ?」

「明日の結婚式は正真正銘の本物よ。明日からあなたはこの国の王配になるのよ」

「そ、そんなこと聞いてないぞ! どういうことだ?」

「あれえ、言ってなかったかしら。おかしいわぁ」

「なんで俺が突然選ばれるんだ!?」

「私あなたが気に入ったのよ。他の人と違って敬語を使わないし、私の言葉にツッコミを入れる人なんて今までいなかったの」

「それは下手に逆らって処刑されるのが怖いからだ!」

「四郎は怖くないの? 処刑されてもいいの?」

「いや、それは困る」

「そうでしょ。だったら私と結婚するのは嫌だなんて言わないわよね」

「嫌だって言ったら?」

「ギロチンと銃殺を選ばせてあげる」

もの凄い笑顔でさらりと答えた。どうやら詰んでしまったようだ。俺に決定権はない。

「でも、俺でいいのか? 何のとえもないぞ。国民や家来たちから非難されるのが落ちなんじゃないか?」

「大丈夫。避難なんて言わせないわ」

ホワイティアはそっと俺の腕に寄り添ってきた。

 これはもしや初恋的な感じか? 完全に冷静な判断力を失っている。結局ホワイティアもブランシェと同じなんだ。この国の女性は基本純愛なのだろう。いったん恋に目覚めると一途に愛し続けるということか。おそらくいろいろな男に手を出すなんてことはないと思う。

 しかし、待てよ。俺が王配の輩ではないということにホワイティアが気付いてしまったらどうなる? まさかぽいと捨てられる? もしかして処刑される? 理由なんて何とでもなる。これはかなりまずい状況なのでは? 背中に冷や汗が流れるのを感じた。

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