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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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主人公、遂に結婚?

第五十九章 主人公遂に結婚?


 ホワイティアはやや俯きながら小さな声で言った。

「いい提案があるの」

「それは聞いた」

「そうよね。言ったわよね」

「だからどんな提案だ?」

「もの凄くいいアイデアだと思うの」

「だからどんな提案か言えよ」

なぜだかホワイティアは下を向いている。さっきまでの威圧感はどこへ行ったのだ?

「何を言っても驚かない?」

「ああ、大丈夫だ」

とは言ったものの不安しかない。このきっぱりした性格のホワイティアが言い渋っているのだ。よほど言い辛い提案なのだろう。

「あのね‥‥」

「何ではっきり言わないんだ?」

あまりにも違和感があり過ぎる。よほど凄いことを言おうとしているのだろうが、とんと見当がつかない。まさか俺を十字架に張り付けてマリーを脅すつもりか?

「マリーを諦めさせるいい方法があるのよ」

やっぱりそうだ。俺を処刑すると脅すつもりだ。で、マリーが断ったら俺は殺されるんだ。ああ、ここに来るんじゃなかった。妙に正義感が強いばかりに‥‥。お願いだマリー断らないでくれ。

 その時下を向いていたホワイティアが突然顔を上げた。

「私たちの結婚式を挙げましょう」

「はひ?」

「私たちの結婚式を挙げるのよ」

「な、な、何を言い出すんだ?」

俺は思わずホワイティアから離れた。

「あら? 嫌なの?」

「いや、そういうわけじゃないけど突然すぎて」

ホワイティアを怒らせまいととっさに言った言葉だったが、当然嫌に決まっている。結婚なんて誰とでもできるもんじゃない。俺の結婚相手は。結婚相手は‥‥誰なんだろう。

「それで結婚式の様子を黒魔族との戦闘地域に大きく映し出すの。きっとマリーは怒るでしょうね。そして式が終わったら落ち込むわ。戦意喪失ってやつね。凄い作戦だと思わない?」

「何だ嘘の結婚式か」

「‥‥」

「どうした? ホワイティア?」

「何でもないわよ。とにかくオーケーね」

「ああ、嘘なら何度でもいいぞ」

「本当なら嫌ってこと?」

「そ、そういうわけじゃなくて、ほら結婚ってそんな簡単には決められないし。ましてや君は一国の王だし。俺なんかと結婚するわけにはいかないだろう」

「わかったわ。式は三日後ね」

急に不機嫌になったホワイティアはそれだけ言い残して部屋から出て行った。


 結婚式の準備は国を挙げて急ピッチに進められた。誰か反対する奴はいなかったのか? 知恵袋的な側近が一人はいそうなものだが。それともこれが作戦であることを言ってあるとか。

とにかく国民の大騒ぎぶりは凄かった。国中がお祭り騒ぎになり毎日のように城の中庭から「女王様万歳」の声が聞こえてくる。これで嘘だとわかったらどうなることやら。まさか俺が罰せられるなんてことはないだろうな。

 式場準備はホワイティア自らがプロデュースするらしく毎日のように忙しそうに指示を出している。そのため俺の部屋にも来なくなってしまった。それはそれで寂しい気もするのだが。

 そんなある日、俺は王の間に呼び出された。

「どうだ。凄い結婚式になるぞ」

「はい、ありがとうございます」

本当のことを言っていいものか迷った俺は辺り障りのない返事を返した。

「今日はいいものを見せてやろう。戦場に巨大スクリーンを出現させてある。そこには明日午後一時女王ホワイティアと四郎の結婚式が執り行われると表示しておいた。先程黒魔族たちの様子が我が国のスパイから送られてきた。一緒に見ようではないか」

ホワイティアが大きく上げた腕を下におろすと空中にスクリーンが出現した。マリーたちが映っている。

『大変です。突如空中に巨大スクリーンが出現しました』

『巨大スクリーンだと? ホワイティアの仕業か?』

『はい、おそらく』

『それで? 何が映っているのだ?』

『はい、ホワイティアと四郎様が明後日挙式を挙げると』

『何だと。すぐベチャ〇ンチを呼べ。一大事だ』

映像に映っているのはマリーではなかった。似ているがマリーより精悍な顔をしている。

「やはり姉のベチャシッコが指揮を執っていたのか」

そうか。映っていたのはマリーのお姉さんか。似てるはずだ。

『どうしたの?』

事情を聴いたマリーが大慌てでやってくる様子が映し出された。

『お前のフィアンセがホワイティアと結婚するそうだ』

『何ですってー!』

映像はここで終わった。

「作戦は成功のようね」

ホワイティアは小さな声で俺に囁いた。本当にこれでいいのか? 何かマリーの戦闘力が増すだけのように思えるが。俺はそう思いながらもホワイティアに頷いて見せた。

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