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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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俺の人生

第五十二章 俺の人生


 俺が家に帰るとマリーが漫画を読んで笑い転げていた。

「あら、お帰りー。遅かったわね」

「お前もしかして一日中漫画を読んで笑い転げているのか?」

「別にいいじゃない。それにしても漫画って日本文化の最たるものよね。ぜひ私の国でも広めるべきよ」

「確かに日本の漫画は世界中で読まれてるからな。お前の国にはないのか?」

「あるわけないでしょ。これをコピーして私たちの言葉に翻訳すればきっと売れるわ」

「それを海賊版と言うんだ!」

「この世界の人は裏の世界なんて知らないんだからばれるわけないわよ」

「それはそうだが、お前には罪悪感と言うものはないのか」

「そんなに深く考えなくてもいいじゃない。本当に真面目なんだから」

マリーは再び漫画を読んで笑い出した。

「小百合と芽依はまだ帰ってないのか?」

「お義母さんと買い物に行ったわ。ママも一緒よ」

そう言えば二号がいない。

「二号‥‥、いや、お前のお母さんは何をしに行ったんだ?」

「表の世界のスーパマーケットを見てみたいんだって」

「そうか。まさか浮かんでついて行ったりはしてないよな?」

「そんなわけないでしょ。小百合の鞄に入って行ったわよ」

「少し安心した。尻尾アクセサリーが空中に浮いていたら大事件になるからな。ところでお前は見事にニート生活を満喫しているようだが、学校に行かなくていいのか?」

「前に言ったじゃない。私は飛び級をして今は大学生なの。しかも研修生としてこっちの世界へ来てるわけだからこれでいいのよ」

「本当にいいのか? どう考えても研修しているようには見えんが」

俺は小さめの声で呟くと椅子に座った。

「はあ」

自然とため息が出る。

『俺が白の国に行ったら、こいつら大騒ぎするだろうな』

ふとそんなことを考えているとすぐに十分が経過した。あまり考えていても仕方がない。俺は覚悟を決めると椅子から立ち上がりマリーを見つめて言った。

「マリー」

「え? 何?」

「こんな俺を愛してくれてありがとうな」

「な、な、何よ急に!」

顔を真っ赤にして慌てるマリーに背を向け、俺は巻物が入った桐の箱を持ち上げた。

「四郎、まさか白の国に行くつもりじゃないでしょうね!」

マリーの声を背に聞きながら、俺はワープゾーンへと入った。


 ワープゾーンの出口は王の間に繋がっていた。目の前にはホワイティアが王座に座っているのが見える。

「やっと帰ってきたわね。もう、少し心配しちゃったじゃない」

「約束は守ったぞ。ブランシェに合わせてくれ」

「いいわよ。でも、会わない方がいいんじゃない?」

「どういうことだ?」

「あなたがこの世界に帰ってきたとわかったらブランシェはあなたと一緒にいたがるわ。でもあなたは私と一緒にいることになるから無理に引き離さざるを得なくなるじゃない」

「わかった。じゃあ、せめて無事なところを見せてくれ」

「それなら簡単よ」

そう言うとホワイティアは大きなスクリーンのようなものを空中に出現させた。

「これが現在のブランシェよ。自分の家にいるわ」

ブランシェが台所で料理を作っている。

「それで? 俺は何をすればいいんだ?」

「私の目につくところで暮らせばいいのよ。あなたがどんな人かを観察したいだけだから」「わかった。好きにしてくれ」

「あら、いい覚悟ね。でも安心して。煮たり焼いたりしないから。あなたの部屋はこの王室の隣に特別室を用意したわ。私の部屋と繋がってるわ。超特別待遇なんだから」

「ありがとう」

俺は一言お礼を言っておいた。

 いったい何が目的なんだ? 俺を観察しても仕方ないだろうに。俺は出口の見えないトンネルに入ったときのような不安に包まれながらここでの暮らしを開始したのだった。

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