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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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ブランシェへの思い

第四十二章 ブランシェへの思い


「じゃあ、芽依は番人の兵士に話しかけて」

「わかった」

「小百合はその隙に宝物庫に鍵がかかってないかを確認して」

「了解」

「もし宝物庫に鍵がかかっていたら今日のところはいったん退却。鍵がかかっていなかったら私が魔術を使って煙を充満させて大声を出すわ。おそらく番人は驚いて私の方に来るはずよ。そうしたらあなたたち二人で宝物庫に入って例の巻物を探して」

「もし見つかったらテレパシーで報告すればいいのね」

「ええ、巻物を持って私がいる方向と逆の方に逃げれば作戦成功よ」

「いよいよだね。ワクワクするよ」

「芽依ちゃん。もし失敗すれば私たちは全員捕まってしまうのよ。本当に一世一代の大勝負になるわ」

「大丈夫だよ。もし捕まりそうになったら、芽依の氷攻撃でやっつけるから」

「それはうまくいかない可能性があるわ。黒魔術の攻撃は白魔術で無力にされるかもしれない。私の黒魔術がたかが使用人のブランシェにかわされたことでもわかるでしょう」

「じゃあ、どうすればいいの?」

「とにかく逃げるのよ。この世界に来た場所へ辿り着けたら私たちの勝ちよ」

「わかったわ。下手に抗わないでとにかく逃げるのね」

「もし、もしもよ。誰かが捕まっても立ち止まっちゃ駄目。一人になっても表の世界に行ってパパとママに巻物を渡して」

「マリー、あなた囮になるつもりじゃないでしょうね?」

「さあ、それはどうかしら? でも捕まっても大丈夫。白馬の王子様がきっと助けに来てくれるから」

「白馬の王子様?」

「そうよ。四郎という王子様がね」

「そうね」

三人は暫く笑った後、誰からともなく手を握り合って頷いた。

「四郎、聞こえる。今から作戦を実行するわ。展開によっては今日この城から脱出することになるから心の準備をしておいてよね」

「おお、わかった」

「例の巻物を手にしたら私が知らせるから、すぐにその部屋から城の外へ向かって。場合によっては兵士が捕まえに来ることも考えられるわ。行動は迅速にして。それとくれぐれもブランシェには感づかれないようにね」

「了解」

俺の体に緊張感が走る。

「どうしたの?」

「いや別に」

「何か急に様子が変わったわ」

何でそんなことがわかるんだ? 別に何も言ってないし態度だって変えてないつもりだが。「どうしたんだ? 急に変なこと言い出して」

「四郎さんとは長い付き合いだから顔を見ればわかる」

決して長くない。

「どこへも行かないで」

何と俺の心がわかるのか?

「何を言い出すかと思えば」

「なぜかはわからないけど、急に不安になったの」

マリーの言う感づかれないようにとはこのことか。

「大丈夫。君を置いてどこへも行かないから安心して」

「よかった」

ブランシェは俺の手を持ち上げると自分の頬に当てて一粒の涙を流した。

 俺に限ったことではないと思うが、男と言うものはこういう雰囲気に弱い。なぜこの展開で涙が出るのだ? 俺は何も泣くようなこと言ってないぞ。

これはブランシェを置いて出て行くのは相当な決心がいるかもしれない。俺がいなくなった後のブランシェはどういう生活を送るのだろうか。毎日泣いて暮らすとか? これは俺の考えすぎか? こんなことを考えるとブランシェが愛しく思えてくるから不思議だ。もしかして好きになりかけているとか? まさかね。

「ねえ、私のこと好き‥‥なんだよね?」

ブランシェが絶妙のタイミングで聞いてきた。

「も、もちろん好‥‥」

「どうしたの?」

「ああ、ごめん。何でもない」

俺はブランシェを騙しているのだろうか。こんな健気な女の子を。

「なんか変?」

俺は暫くの間ブランシェから視線をそらし俯いていた。

「四郎さん?」

やがて俺はいきなり顔を上げるとブランシェを見つめて言った。

「好きだよ。たぶん‥‥今まであった誰よりも好きなのかもしれない。でも‥‥」

「でも?」

「ごめん。気にしないで。今のはただの独り言」

「もの凄く気になる」

「大丈夫。『でも』は単なる言い間違い。気にしないでくれ」

「本当?」

「ああ、本当だ」

俺とブランシェが何とも微妙な会話をしているとマリーからのテレパシーが聞こえてきた。

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