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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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大丈夫か?

第十六章 大丈夫か?


俺はマリーを背負ったまま森の出口へと向かった。

「マリー、体調はどう? 痛いところはない?」

小百合が優しい言葉をかける。

「だめ、体中が痛いの」

「大丈夫か? 少し休むか?」

「大丈夫だから、少し大変だけどこのまま背負って行って」

「ああ、わかった」

「ごめんなさい、重いでしょ?」

「いや、全然重くない。お前本当に軽いな」

小百合が少しむっとした顔になる。

「私35kgしかないから。ちょっと痩せすぎだよね」

この発言に小百合と芽依の眉毛がぴくりと動く。因みに芽依は小学6年生にもかかわらず40kgを超えている。小百合の体重は分からないが身長が165cmもあることから考えるとマリーより大幅に重いことが予想される。

「ふふ、四郎の背中って暖かーい」

そう言うとマリーはギュッとしがみついた。

「ちょっとマリー? 随分口数が多くなったけど、もう大丈夫なんじゃないの?」

「か、体中が痛むわ」

「その割にはさっきから笑みがこぼれているわよね」

「あ! か、体がもうだめだわ」

「やっぱり少し休もう」

「ううん、いいの。みんなに迷惑はかけられないわ。このまま行きましょう」

「いや、ここまで来ればファイヤードラゴンが現れることもないだろう。あの大きな木の下で少し休もう」

俺はマリーを降ろそうとしたがマリーは俺の背中から降りようとしない。

「ちょっとマリー降りなさいよ」

小百合が怪訝そうな顔で言うと、

「もうちょっとだけ」

とマリーが腕に力を入れる。

「何言ってるのよ! 早く降りなさいよ」

「体が痛くて降りられないわ」

「大丈夫か?」

俺は心の底から心配した声でマリーの方を見る。すると俺の顔のすぐ近くに可愛らしいマリーの顔があるではないか。俺は真っ赤になり思わず顔をそらした。

「四郎君! 何赤くなってるのよ!」

小百合の顔はかなり危険域に達している。だが、美少女の顔がすぐ近くにあれば男なら誰だって赤くなるってものだ。ましてや俺はキスすらしたことがないうぶな奴なんだぞ。それも考慮に入れて考えてくれ。

 その時、突然芽依がマリーの破れた服の中に手を入れ背中に触った。

「ちょっと! 何するのよ!」

「マリーさん。背中の傷って全くなくなってるよ」

芽依の素朴な一言が小百合の心に響く。

「マリー、まさかわざと重症の振りして」

「ち、違うわよ」

「いいから四郎君から降りなさいよ」

小百合と芽依は俺の背中からマリーを無理矢理引きずり降ろした。

「ちょっと、それが命がけで戦った仲間に対する仕打ちなの?」

「治ってるなら自分で歩きなさいよ!」

「いいじゃない。四郎も重くないって言ってるんだし」

「そういう問題じゃないでしょ。恋人の私でさえおぶってもらったことなんてないのに」

「あら、あなたみたいに重い人はこんな長くは背負えないわよ」

「な、な、な」

小百合の顔がみるみる真っ赤になっていく。当然止めに入らねばならない状況なのだろうが、怖くて何も言い出せない。

「ちょっと四郎君! あんた私と付き合ってるんでしょ! 何とか言いなさいよ!」

そら来た。この雰囲気で何を言えばいいのだ?

「確かに、治ってるんだったら‥‥」

「何? 四郎だって私を背負うことができて喜んでたじゃない」

「四郎君! 喜んでたって本当なの!?」

「ち、ち、違‥‥」

「この際はっきり言ってやったら。こんなずる賢い女より私の方がよくなってきたって」

何を言い出すんだ!

「本当なの!? 四郎君!」

俺は慌てて手を振るが言葉が出てこない。

「あら、二人きりの時は『お前の方がいいよ』って言ってくれるじゃない」

そんなこと言ったことない!

 ガチャ! 小百合は刀のつばに手をかけた。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。今のはマリーが勝手に‥‥」

「問答無用!」

小百合が刀を振り上げるのを見ると俺は慌ててマリーの後ろに隠れた。

「何でマリーの後ろに隠れるのよ」

お前のせいだろうが!

「大丈夫よ四郎。あなたは私が守ってあげる。命に代えてもね」

あれ? これってまさかマリーはわざとこの状況に導いている? 確かに俺はマリーに命がけで助けられたことで、俺のマリーを見る目が変わったような気もする。しかし、それは好きという感情ではなく。じゃあ、マリーは何を考えて居るんだ? マリーの意図は?

 小百合が刀を八相に構える。

「四郎。絶対私から離れないでね」

そうか。今の流れは自分に向いて来ていると判断したマリーが勝負に出たと言うことか。しかし、この構図は美女二人が俺を巡って戦っていることになる。何という幸せ。

「私のために戦うのは止めて」

というギャグを言いたかったが怖くて言えない。とはいえこのままではけが人が出るのは必至。下手すれば俺の命も危うい。何とかしなければ。

 その時、芽依がポツリと提案した。

「じゃあ、みんな平等にお兄ちゃんにおんぶしてもらえばいいよ」

あほかー! そんなことでこの場が収められたら苦労せんわ!

「わかったわ。そういうことなら・・・・」

小百合は静かに刀を下ろした。

 こんなことで収まるんかーい!

「じゃあ、私からね。お兄ちゃんしゃがんで」

芽依は大はしゃぎで俺の背中に飛び乗った。やはりマリーより少し重い気がする。

 その後小百合の番になったが結局恥ずかしがって俺の背中に乗ることはなかった。これはこれで少し残念な気もするが・・・・

そして、ようやく俺たちがこの世界に来た場所まで来ると黒い渦巻きが現れた。

 もし、俺がこの二人のどちらかと結婚することになるとしたら・・・・不幸な未来しか想像できないのは気のせいだろうか。たぶん俺の意見は一切聞いて貰えないような気がする。

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