第百八章 小百合は預かった
第百八章 小百合は預かった
「どうしたんですか? そんなに慌てて」
「大変だ! 小百合ちゃんが誘拐された!」
三号は小百合のことを『小百合ちゃん』と呼んでいたのか。普段『キュピ』としか言ってなかったので気付かなかった。
「誘拐されたって一体誰に?」
「恐らくホワイティアだ」
俺は顔が青ざめるのを感じた。ここを離れると言うことは無防備になると言うことだ。ホワイティアに誘拐されてもおかしくはない。
「あなた。どうして小百合さんが誘拐されたとわかったのです」
いつの間にかやってきた二号が低い声で問い詰める。
「そ、それは。男の第六感だ」
「あなた確か小百合さんがここを出て行く時に変な箱を渡してましたわね」
やはりあれは盗聴とか盗撮の機械だったのか。
「まさか若い女の子の生活を盗み見していたんじゃないでしょうね」
「そんなことをするわけがなかろう」
三号の声は明らかに震えている。実にわかりやすい。
「覚悟はできていますか?」
二号は大きく手を振り上げた。
「四郎君もそう思うだろう。な、な」
「ちょっと俺の後ろに隠れないでくださいよ。マリーとは魔力が違うんですから」
俺と三号は部屋中を逃げまくった。てか、何で俺まで逃げなきゃないけないのだ?
その時お姉さんが部屋に飛び込んで来て叫んだ。
「大変です。ホワイティアからの通信が来ました」
お姉さんが大きく手を四角形に動かすと空中にモニターが現れた。
『お久しぶりね、ピピプル。今日はいい話を持ってきたわ。あなたの城で生活していた娘を預かったの。この娘をどうしようか迷ってるんだけど、どうしたらいいと思う? ギロチンの刃の切れ具合を試してみてもいいし、新しい攻撃形白魔術の実験台にしてもいいわね。でも、あなたの城にはこの娘を失うことをとても悲しむ人物がいるかもしれないわね。そこで提案なんだけど、四郎とブランシェをこの娘と交換するってのはどうかしら? 決して悪い条件じゃないと思うわよ。返事は三日以内に。期限厳守よ』
なんと言うことだ!
「ホワイティア、許せぬ。出兵の許可をください」
お姉さんの提案に俺は慌てて口を挟んだ。
「ちょっと待ってください。そんなことをしたら小百合が危ないです」
「確かにそうかもしれませんね」
二号は落ち着いた声で言った。
「私がホワイティアと交渉してみましょう。全てがうまくいく方向で解決できるといいのですが」
「俺がホワイティアの所に行くのは構いません。でも、ブランシェが行くのは危険すぎます。ブランシェだけでも条件から外して貰えるようにお願いしてください」
こうして俺達が対策を練る中、命拾いした三号はそっと胸をなで下ろすのであった。