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ブラックテイルな奴ら  作者: 小松広和
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この国の習慣て

第百二章 この国の習慣て


 ブランシェは意外としつこかった。ホワイティーとの夜を根掘り葉掘り聞かれ、俺はまるで浮気がばれた夫が妻に言い訳するようにおどおどと説明した。俺は絶対に悪くないという自信はあるのだがすっかり被告人となっている。

「わかった。じゃあ、ホワイティーとは何もなかったと言うこと?」

それは十回ほど説明した。

「私は四郎さんを信じる。でも、注意すべき人物が増えてしまった」

わかってない!

 横で書類整理をしているお姉さんが大きな声で笑った。

「モテる男は大変だなあ」

「からかわないでくださいよ」

「この様子もマリーに報告だな。まるで夫婦のようだった・・・・と」

「だからそういう冗談は止めてください! 心臓に悪いですから」

「君たちの世界には『どっきり』という企画が流行っているそうじゃないか」

「ええ、テレビでよくやっていますけど」

「もしこの部屋に隠しカメラが仕掛けてあって別室でマリーがこの部屋の様子を見ていたとしたらどうだ?」

「冗談・・・・ですよねえ」

「マリー、マリー、出てきてもいいぞ」

俺は思わずブランシェの後ろに隠れた。もし殺されても白魔術で復活してくれるよね。

「はははジョークだ」

「だからジョークを言うのなら笑えるジョークにしてくださいってば!」

俺は思わず怒鳴ると床に座り込んでしまった。本当に疲れる。

 結局その日は何もできず俺は自分の今へと戻ることにした。居間ではマリーと芽依がソファーに座って話もせずにそれぞれのことをしている。喧嘩でもしたのか?

「あら、随分と遅かったわね。ブランシェと何を話し込んでいたの?」

「何でわかるんだ?」

「ちょっと、本当に話し込んでいたって言うの! 何を話し込んでいたのよ!」

しまった。疲れていると脳が働かない。まさか夫婦のような会話をしていたなんて言えるわけがない。俺は冷静さを保ちつつ落ち着いた声で言った。

「真犯人の手がかりについて話していただけだ」

「ふーん。、まあいいわ。お姉ちゃんに聞けばわかることだし」

「わかった。悪かった。スパイの話ではなくホワイティーが真夜中に俺の寝室に来たときのことを言い訳していただけだ」

「ちょっと、どういうこと? ホワイティーが夜中に四郎の部屋に出いるしているって言うの!」

完全に墓穴を掘る俺。

「ホワイティーとそういう関係だったの!」

マリーは俺の襟を両手で持ち上げきつい口調で問いただした。それにしても「墓穴を掘る」という諺。今回ほどぴったりと合った用例はなかろう。誤解を解かないと殺される。

「違うんだ。来たのは一回だけで話を少ししただけだ」

「嘘をついても駄目よ。ホワイティーはこの城で私に次いで美人だわ。真夜中に向こうから来て少し話すだけなんてあり得ないわ!」

心なしかマリーの手が熱くなっているような。

「本当だ。俺がお前に嘘をついたことがあるか?」

ちょっと自信がなかったがとりあえず言ってみた。

「そんなの知らないわよ。でも真夜中に美人が寝室に入ってきたら普通理性を失うわよね」

そんな極端な。

「だったらホワイティーに聞いてみたらいいじゃないか。彼女なら嘘はつかないだろ?」

「それもそうね」

マリーは俺の寝室の方を向くと大きな声で叫んだ。

「ホワイティー。ちょっと来て」

「はい」

ホワイティーは俺の寝室のベッドメイキングをしていたようだ。

「あなた夜中に四郎の部屋へ行ったらしいわね」

「はい、一度だけお伺いしました」

「その時四郎と何をしていたか正直に言いなさい」

すると、ホワイティーは、

「そんな女の私からは言えませんわ」

と言って真っ赤な顔を両手で押さえた。

 この国の住民は何か? 人を追い込んで喜ぶ習慣があるというのか?

 俺は見たこともない花畑を横切ると大きな川へと出た。すると川岸に一隻の舟が見える。そして舟の船頭が俺に声をかけてきた。

「兄ちゃん、乗りな」

俺は逆らうでもなく片足を舟に入れたところでマリーの大きな声が聞こえた。

「ちょっと四郎! 起きなさい!」

「お兄ちゃん! 死なないで!」

目を開けると俺はホワイティーに抱えられマリーと芽依が俺をのぞき込んでいる。

「もう、いきなり死ぬなんて何考えてるのよ!」

誰がやったんだよ!

「久しぶりに白魔術を使いました。覚えていて良かったです」

ホワイティーには感謝しなくてはいけないな。嫌待てよ。こういう状況に至ったのはこいつのジョークのせいじゃないのか? 俺は複雑な思いで三人を見つめた。

 結局その日、俺はベッドで過ごすことになった。マリーがどんな強烈な黒魔術を使ったのかはわからないが結構体にダメージがあったようだ。それにしても何をしているんだろ俺。スパイを特定しなくてはいけないのに。そして無情にも夜が更けていくのであった。

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