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96話 魔狼の毛並みはぽっかぽか

 今、私の目の前には王宮の庭で魔狼であるウィルフリードの白い深々とした毛並みにダイブしてから一切動かくなかったカトリーヌさんの後ろ姿を、ただひたすら眺めていた。


 今から数時間前。講義が終わり帰り支度を始めるころに、カトリーヌさんが昨日同様私の元にやってきました。それは別に構わないのですが、彼女は私の顔をじーっと見つめては右目と呟いていました。


「右目? ああ、解呪されました」


「封印が解けたの!?」


 そういえば呪いじゃなくて封印でしたね。邪龍が世に出てしまいましたね。ちょっとここまでストレートに信じられてしまうと次もやりたくなってしまいますね。


「まあ、それはそれとして今日は王宮に行けばいいのよね?」


「ええ、どうせなら一緒に行きませんか?」


「……わかったわ」


 友人同士の会話らしくはなっていませんが、とりあえず一緒に帰るところから始めましょう。何よりお互いのことを知らなすぎます。


 せっかくですので私の馬車に乗ってもらい、彼女とは向かい合う様に座りました。カトリーヌさんの顔を正面から見ると、やはりエリザベートの顔に似ています。私の隣にはスザンヌ。カトリーヌさんの隣にはピンクブラウンの髪のメイドが座っています。


 思えばエリザベートの実家であるクレメンティエフ家でも、エリザベートの顔は浮いていた。祖父母の顔はどちらかと言えば祖母似ではありましたが、この深紅の瞳ではありませんでした。


「カトリーヌさんの瞳って綺麗な(あか)よね」


「それが何か?」


「遺伝とかですか?」


「先祖返りよ。昔、そういう先祖がいたの。創生時代にいた七人の英雄の一人よ。あくまで言い伝えレベルでしたが、ここまで特徴が似てしまうとそうだとしか思えないって両親がね」


 銀髪に深紅の瞳が先祖返りね。私の特徴は完全に親譲りですし、私にそういう特徴はなさそうね。エリザベートの瞳とジルの瞳は深紅。エリザベートが先祖返りしてそのままジルに遺伝したってことかしら。やはり紅い瞳は何か意味があったりするんでしょうね。


 …………創生時代? 七人の英雄? 何か引っかかるわね。そもそもそんな歴史なんて学んだかしら。まあ、いいわ。


 馬車が王宮に到着する。私達は馬車から降りると、猛ダッシュでズシズシ音を立てながら何かが走ってきます。


「ウィルフリード! ただいま!」


 私がそう言ってウィルフリードに抱き着くと、カトリーヌさんは以前まで私の腕に収まっていたウィルフリードしか知らない為、腰を抜かしてしまいました。


「ナニコレ?」


「私がこないだまで学園に連れてきていたウィルフリードですよ」


「何を言っているの? 貴女の魔狼は貴女の腕の中にすっぽり入るくらいの小ささだったじゃない。これじゃあ私達がお口にすっぽり入るサイズよ」


「…………足の先くらいは出るんじゃないかしら?」


「想像しないで頂戴!!」


 どうやらカトリーヌさんは完全に怯えている様子。私はどんな姿でもこの子をウィルフリードと理解していますから一切抵抗がありませんが、どうやら久しぶりに見る人には違うみたいですね。


 しばらく怖がっていたカトリーヌさんも、大人しいウィルフリードをみて、少しずつ触り始めます。撫でる。そして抱き着く。そして抱き着き始めて数分。彼女はウィルフリードの毛並みに沈んで帰ってきませんでした。


 ここで冒頭に戻ります。


「カトリーヌさん?」


「あと五分」


 朝弱いのかな? せっかくですし私も埋もれてこよう。それから数分後。スザンヌとカトリーヌさんのメイドが私達をウィルフリードから引きはがします。


「危うくこのまま一生抱きしめているとこだったわ」


「魔狼って身体から魔力を放出しているのね。思ったより心地いいじゃない」


 カトリーヌさんはウィルフリードに触れた感想を述べると、四人でウィルフリードの背中に乗せてもら貰いながら、その日は私の部屋でお互いの好きなものや思っていたことを打ち明け合うことから始めました。


 カトリーヌさんは意外と努力家で私より少し後くらいから魔法の勉強をしていたみたいです。こんなにいい子でしたら、もっと早くから仲良くなっておけばよかったですね。あと、嫌いなものは魚料理だそうです。実物の見た目が苦手だとか。


 ついでなのでリビオが普段どこで生活しているか教えてあげると、私も王宮に住むと言い出して聞きませんでした。私としては大歓迎でしたが、さすがにカリーナ公爵家とご相談してください。


 私とカトリーヌさんが二人で話している時、窓の閉め切った部屋の隅のカーテンが、独りでに揺れていましたが、それに気付くものはいませんでした。

そのうちウィルフリードも活躍します。あとカトリーヌさんも。


今回もありがとうございました。

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