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8話 ライバル意識

 特に何も予定がないある日のお昼に事件は起きました。私の所に公爵家令息であり、従兄のアレクシスと、騎士団長の息子であるミゲルがやってきました。それだけなら何も問題はありませんでしたが、どうもそういう訳にはいかないようです。


 問題は、二人が互いににらみ合っている中、私がその二人の間から抜け出せないと言うことだけです。


 大人しいミゲルですら、アレクシスに対し敵意を向けていることは、前世で鈍い鈍いといわれ続けた私にもわかる。

 

「ミゲル、今日は僕が姫様のお相手をするから君は帰ってもいいんだぞ」


「いえいえ、アレクシス様。公爵家の跡取りともなれば、学ばなければいけないこともたくさんあるでしょう? クリスティーン姫のお相手は是非このミゲルにお任せください」


 会話を聞いている限り、お互いの目的は相手が帰ること。それほど二人は仲が悪かったのですね。今度からお互いがなるべく同時に会わないようにしましょうか。


 ミゲルに至っては普段の内気な雰囲気とは打って変わって、アレクシスに対して強気の姿勢で追い返しそうとしていました。


 しかし、二人は最初に自己紹介をしていましたし、ほぼ初対面のはず。何故二人はこんなにも仲が悪いのでしょうか。まさか一目見た瞬間にライバルと悟ったとか? なんのよ。


「えと。とにかくお茶にしましょう? 今日はミゲル様のお好きな焼き菓子を多めに用意してもらいましたの」


「本当ですか姫様! 嬉しいです」


「待ってください! ミゲルの好きな焼き菓子とはどういうことですか?」


「あ、あれ? もしかしてアレクシス様は焼き菓子はお嫌いでしたか?」


「いや、そういう訳では」


 いや、このリアクションは絶対に好みではなかったですよね。まさか幼児に遠慮して貰うことになるとは、元アラサーとしては心が痛い。


 だが許せ。今の私も五歳児なんだ。それにしてもやはり二人には仲良くしてもらいたいものだ。さすがに魔法学園に通う頃には仲直りしているよね?


 魔法学園に通い始めるのは十四歳から。つまり、あと十年で乙女ゲームの舞台に立ち入ることになる。魔法適正の鑑定は十三歳の時に行われるため、それまで私や二人にどのような素質があるか不明ですけど、まあ、待ちましょう。


「あの、アレクシス様。宜しければ他のお菓子を用意しますが?」


「そうです、こちらは私と姫様の二人で頂きますので、アレクシス様は別の物を頂いたらいいと思います」


「いえ、私も焼き菓子は大好きです。頂きましょう!!」


 どうしてそこまで不仲なのよ。何か原因でもあるのかしら。お互いが欲しい物が一緒とかそういう奴かそれとも因縁?


 私にはわからない二人の因縁があるみたいですが、それは私がワンダーオーブを手に入れることに関係ないでしょう。


 焼き菓子を頂いている最中は、みんな夢中でしたが、やはりアレクシスが不機嫌そうでした。そうですわ。ここはアレクシスのご実家であるクレメンティエフ領産の茶葉で淹れた紅茶を頂きましょう。


 早速セシルにそれを伝えますと、セシルはすぐに用意してくださりました。


「二人ともこちらを飲んで落ち着いてくださいな」


 二人が紅茶の香りをかぐと、アレクシスが何かに気付きにやりと笑う。やはり領地の紅茶はお好きなのですね。


「クリスティーン姫、こちらは我が領地の茶葉で間違いないですね?」


 アレクシスがそういうと、ミゲルが紅茶を飲む手をおろす。


「はい、そうなんです。とーっても美味しいですよね?」


 さささ、紅茶でも飲んで心を安らげるといいんですよアレクシス。


 アレクシスは先ほどとは打って変わって、少しずつ表情が柔らかくなる。反対にミゲルは焼き菓子を食べていた時とは違い、その表情は徐々に曇り始めた。


 あれれ? どうしてそういう表情になってしまわれたのでしょうか。男の子の不機嫌スイッチがわからないわよ。せめて私に弟か妹がいれば良かったのだけれど。


「お口に合いませんでしたかミゲル様?」


「いえ、そんなことは、ですがもっといい茶葉を今度姫様にプレゼントします」


「でしたらこちらもいい茶葉を見つけ次第献上させて頂きます」


 何故そこで張り合う。男の子だからなのでしょうか。しかしお互いの意識は完全により良いものを用意できるかに移っていた。


 そりゃあ、良い茶葉を頂けるなら嬉しいのですが、そこは仲良く二人で見つけてくるとかそういうのではダメなのでしょうか。


 そもそもこの二人からは良い茶葉を見つけたいという気持ちより、相手より良いものを用意できるんだぞというマウントの取り合いにしか見えません。


 でもそうね。そういうところが子供らしくていいわよね。ミゲルも最初はおどおどした男の子だと思っていましたが、同年代の男の子相手にこんなにも強気に出れて見直しました。


 アレクシス様もミゲル様もどっちも頑張れ! 私は美味しい紅茶を頂きたいわ!


 もしかして元アラサーの私が一番子供?

■アレクシス・ドゥ・クレメンティエフ

・クリスティーンの従兄。公爵家の跡取り息子。

・父親のルートは【青】のワンダーオーブ


■ミゲル・エル・ラピーズ

・騎士団長の息子。

・父親のルートは【橙】のワンダーオーブ


今回もありがとうございました。

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