55話 深紅の瞳の級友カトリーヌ・ド・カリーナ
私以外の生徒たちは、壊すことなく魔力測定を終えてゆきます。クラスメイトの半分くらいが十歳を超えたくらいから魔法を使い始める中、親が魔法省で働いている子や、興味本位で魔法を使っていた子供たちは比較的高い数値を叩きだしていました。
魔力量は使えば使うほど、筋肉のように育つ。
その為、私と同じくらいの頃から魔法を使い始めていたミゲルの魔力はクラスメイト達の中でも私を除いて一番でした。おそらくビルジニやリビオも高い数値を叩きだすでしょう。
残念ながら、ジョアサンが魔法を行使しているところはまだみたことありませんので、いつぐらいから使い始めたかは検討も尽きませんけどね。
それにしても私の魔力高すぎよ。正直、久々にゲームパラメータみたいなものが見れると思ってドキドキしていたっていうのに。
もう体力測定の通知結果でいいから頂戴。
その後はクラスごとから更に波動魔法の使い手守護魔法の使い手と別れさせられました。ミゲルとはひとまずここでお別れをして、集団の中に溶け込みます。…………あ、私が先頭なんだ。
みんな顔と名前しか知らないクラスメイト達を引き連れて、長距離に設置された的を確認する。
どうやら波動魔法の飛距離を測るのでしょう。アンヌ先生は波動魔法側の方についてきたみたいで、守護魔法の方に別れた方には別の大人が向かっていました。
「はいはぁい。それではぁ…………ジャンヌ・ド・バヴィエールさん!」
あら? 今度は私からではないのね。アンヌ先生に呼ばれた卵色の髪をした女生徒が、前に出ていく。
「波動魔法波動」
ジャンヌさんが基本魔法を使うと、その魔力の波はゆっくりと進み、的にヒットすると、的は石があてられたかのような揺れをしてゆっくりと静止する。そしてアンヌ先生は名簿とカルテを見ながら顔を上げる。
「ジュリー・ド・カッセルさん!」
また別の生徒が呼ばれたタイミングで、的が少しだけ遠くなった。なるほどね。これは魔力測定の結果が低い生徒から呼ばれているんだ。同じ波動でも飛距離や威力が異なるから、結果を測定する際に的の位置を少しずつ遠くしているのね。
「つぎぃ。ミシェル・ド・ブラン君!」
この予想通りでしたら、私の名前が呼ばれるのは最後でしょう。そしてあれから数名が呼ばれ、気が付けば十人目。
的の距離はジャンヌさんの時が五メートルほどだったのに、今呼ばれたアラン君の的の距離は百メートルは超えているかもしれない。
しかし、的の大きさは同じ。飛距離が足りていても、当てることが難しいでしょう。アラン君は思いっきり外してしまう。
そして私の一つ手前。私と同じくらいの長さの銀髪の女子生徒が、呼ばれる前に前に出た。
「カトリーヌ・ド・カリーナさん」
「はい」
銀髪にエリザベートと同じ深紅の瞳。その立ち姿は、正しくエリザベートそのものでした。彼女はカリーナ公爵家出身で、エリザベートとは血縁ですらないはず。的の距離はここから視認することも難しい距離にありました。先生、これもしかして私はもっと遠くなるってことですか?
「波動魔法、波動」
カトリーヌさんが波動を放つ。あの距離の的に当てることができるのでしょうか。そんなことを考えていたら、突如、地震がグランドを襲ったかと思えば、ものすごい轟音とともに大地が抉れ、砂埃が舞う。カトリーヌさんの手から放たれた魔力は、トンネルを掘る削岩機にも負けない威力で前進し、五十メートルもいかないところで魔力がすべて焼失しました。
「え?」
「…………この程度まで弱めても飛距離が伸びにくいのね」
カトリーヌさんがそう呟いて私のすぐそばにまでくる。そして私の耳元で囁いた。
「私も驚かせてくれるかしら?」
何故か初対面の令嬢に喧嘩を売られてしまいました。まあ、いいでしょう。五歳から高めた魔力。いつかある決戦の為に準備したこの力。そんなに驚きたいっていうのなら見せてあげようじゃない。
「波動魔法波動!!!!!」
私の手のひらからはライフルの弾丸を意識した波動が発射される。それは一瞬。
一般的に基本魔法である波動は、精々子供のキャッチボールくらいの速度しか出ない。
だからみんな、私の波動が不発に終わったかと思う。
しかし、アンヌ先生とカトリーヌだけは射出さえた魔力を目で追おうとした。
ライフルの弾丸と同じ速度で動く魔力を追うことはできず、彼女たちが首を動かそうとしたタイミングには、はるか遠くに用意された的が大爆発を起こしていた。
「そ、…………測定をぉ、終わりにしますぅ。教室に戻りますよぉ」
私の周りにはたくさんのクラスメイト達が集まり、カトリーヌはそれを遠巻きで眺めていた。
今回もありがとうございました。





