43話 この夫婦の進展はまだまだ遠い
エリザベートとバラ園で遊んだ後、私達は夕暮れになったことに気付き、彼女に抱えられて食堂に向かいました。
移動する時はいつも私を抱えるエリザベート。よく考えたら五歳児ってそこそこ重いのではないでしょうか。
軽々持ち上げられているような気がします。
それとも私ってすごく軽いとか。いえ、この世界にいて碌な運動はしていません。
また食事も健康に気を使ったものとは考えにくいですし、これは多分ですがエリザベートは思ったより力持ち説が立証されてしまったような気がします。
「貴女、今変なことを考えていませんか?」
「いえ、何も考えていませんよ。青色が大好きなお母様」
「あまりしつこいと…………あまりしつこいと…………今度から食事は貴女の席だけ一つ遠くしますよ?」
「お父様に泣きつきます」
「くっ……もういいわ。好きになさい」
エリザベートは顔を紅くしながら、歩きます。私はそんな母に抱きしめながら大人しく運ばれることにしました。
何も喋らない私に対して、エリザベートが耳打ちをします。
「ジェラールって何をすれば喜ぶかしら?」
彼女の歩く速度は、心なしか遅くなったような気がします。
「え? 本人に聞けば宜しいのでは?」
「今まで聞けなかったから、貴女に聞いているのでしょう? ジェラールは貴女には心を開いているでしょう?」
嘘、私の母親ニブすぎ。ジェラールと同じベッドで眠っている時点で信用されていると考えるべきだと思うんですが、違のでしょうか。
この二人は夫婦生活五年以上ですよね。それとも信頼してもらえているかどうか不安とか。貴女ちょっと乙女すぎません元悪役令嬢でしょ?
ですが、もし夫婦仲が進展するのであれば何か協力したいところですね。
幸い、ジェラールは乙女ゲームの攻略キャラクター、ある程度のプロフィールも公表されています。
それにジェラールの攻略方法は王族として扱わずに、一人の人間として扱うという何とも使い古されたパターン。
「そのですね…………」
あれ? これってどう説明すればいいの? もしそのまま言ってしまえば、何故そんなことを知っているのかと言われます。
「お父様は、お母様と仲良くできれば幸せだと思います」
私がそういうと、エリザベートは私の顔をじーっと見つめる。何かを言いたそうにしていることはわかりますが、それが何かはわかりません。
「お母様?」
「何故そこに貴女がいないのですか?」
「へ?」
「ジェラールには貴女も必要でしょう。さあ、そのジェラールの待っている食堂に行きますよ。尤も、朝食や昼食同様、夕食もいらっしゃらないかもしれませんけど」
エリザベートの足取りは、先ほどと違い、やや速足になります。どうしました。ジェラールに早く会いたくなりました?
上機嫌な母を見ていると、私まで嬉しくなったような気がします。これでは、どちらが子供かわかりませんね。
食堂につくと、既にジェラールの姿がありました。私がエリザベートの耳元で「綺麗な青い色ですね」と呟くと、ほっぺたをつねられてしまいました。痛い。
「エリザベート、今何をしていた?」
「え?」
「いえ、そのクリスティーンがあまりにも恥ずかしいことをいうものですのでつい」
「恥ずかしいこと? なんだ? 俺に言えないことか?」
ジェラールがこちらに近づいて、つねられた私の頬を撫でながら、エリザベートを睨みます。エリザベートは私が言った言葉を、ジェラールに伝えるべきかどうか迷っていたところで、エリザベートが何かを言いそうになる前に私が割り込みました。
ここはエリザベートの為に、私が怒られることを聞いたと言うことにしましょう!
「お父様の〇〇〇〇(※自主規制)って大きいんですかって聞いたのです!!」
めちゃくちゃお説教されました。
だってとっさに思いついたのがこれしかなかったんですもの。
ジェラールとエリザベートには、あまりにも衝撃的すぎてなぜクリスティーンがそんなものを知っているかまで考えが回りませんでしたので、それを教えた人の犯人捜しは発生しませんでした。
今回もありがとうございました。





