34話 理想は少しずつ近づいて
着替えを終えた私は、近くで私を見ていたエリザベートの目の前まで歩いていくと、彼女は私を見つめる。
「それでは、ジェラールの所に行きましょうか」
そういってエリザベートは数歩先の扉に向かおうとしたはずなのに、私を一瞬抱きかかえそうになり、途中で気付いて腕を伸ばすのを辞めようとしました。私はその手を引いて抱っこをせがむと、彼女はしょうがないねと言いながら、私を抱きかかえる。
抱きかかえたことで手が塞がり、着替えを手伝ってくださったメイドたちが、代わりに開けてくださりました。
「さて、今日の予定はすべてキャンセルした。もちろん君のもだ」
「さてじゃありません。公私混同はおやめください」
「君はいつでも時間を作れるように予定よりも早い段階で公務を終わらせているから問題ないだろう?」
「……まあ、そうですけど」
いつでも予定を作れるようにって、エリザベートはそんなに突然急用ができてしまうのかしら。それにしてもジェラール。今ちょっと笑っている? なんだか顔には出ていないけれど、声は嬉しそう。根拠はないけど、彼が嬉しそうなことはなんとなくわかる。
「それでは今日は何かをされるのですか?」
「いや、無計画だ。今朝思いついたからな。だからクリスティーンお前が決めろ。お前がやりたいことをやろう」
ジェラール、きっと思いついたのは今朝じゃないですよね。昨日の段階で明日の私の予定をキャンセルした時点から、ジェラールは私に何かしてあげようって考えていたんですよね。でもねジェラール、私は二人と何をしていいか全然思いつきません。
だってこの世界って何があるか全然わからないんですもの。私はずっと王宮に閉じ込められて一度お忍びで建国祭にでかけた程度。普段は礼儀作法とマナーの勉強。王宮内で行われている騎士たちの修練を見学したり、魔法省に遊びに行ったりはしたけど、みんながどんなに風に家族と過ごしているか知らない。
でもそれはきっとジェラールもエリザベートも知らない。だから一緒にいてもどこか距離がある。一緒に食事をしても一緒の時間を過ごしても、同じベッドを共有しても、まだお互いのことがわからない。
「あの……えと…………二人と遊びたいのですが、何をすればいいのか」
私がそういうと、二人は顔を見合わせた。この二人は幼い頃、何も遊んでいなさそうだと直感した。いえ、さすがにそんなことないですよね? しかし、ジェラールがエリザベートに耳打ちをすると、エリザベートもジェラールに耳打ちをしている。お互い、困った表情をしている。こういった表情だけは顔に出るみたい。
もっと嬉しそうな表情とかすればいいのに。
「あまり他人の手は借りたくないが、子供相手ならうってつけの奴がいる。そいつに相談しよう。昼前に呼べるか聞いてみるとする。それまでは朝食とそれからクリスティーンがお出かけできるようになったら行ってみたいことを聞かせておくれ」
ジェラールが誰に頼むかわかりませんが、それはおいておきましょう。私の行ってみたいところ。海とか山。街を普通に歩くのもいい。綺麗な景色も見たいし、王宮の外でしかできない娯楽も楽しみたい。
朝食を頂き、私のやりたいことや行ってみたいところを話しながら、ジェラールとエリザベートが賛成したり、反対したりと、それでもケンカになることはなく話し合いができた。なんだか家族旅行を計画しているみたいで楽しいな。私はこういう家族らしい会話をずっと、ずーっとしたかった。きっと日本人だった記憶がなければ、こうはならなかったんだろうな。
早く恋愛の方も書きたいんですけど、主人公が元アラサーの為幼児に恋愛感情が芽生えない。(そういう趣向ではない為)
今回もありがとうございました。





