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30話 大賢者の息子リビオ・エル・ベルニエ

 小屋の中はいくつもの液体が入った器に、散乱している資料。ヒカリゴケや食虫植物。


 どういう組み合わせで揃えたかわからないものが床、壁、テーブルの上に棚の中、いたるところに散乱していた。


 かろうじて人が通れる道ができているところをみては、まるで雪を踏み固めて通り道にしたかのような本来歩けた幅より狭い道を歩くと、そこには黒髪の少年が両手から不思議なオーラを放出しながら、宙に舞う緑色の塊をいじくっていた。


「何をしているのかしら?」


「え!? 誰ですか?」


 私の気配に気付いた少年は、手からオーラを出すのをやめてしまい、彼の目の前で宙に浮いていた塊は霧散してしまった。


 彼はそれを見ながら寂しそうな表情をする。


「ごめんなさい。私はクリスティーン。貴方は?」


「リビオ」


「そうリビオ。さっきのものは?」


 私がそう尋ねると、リビオはまた手から緑色のオーラを出す。しかし、さきほどのものはそこにはなかった。


「わからない。あれは空気中に溢れる魔力に対して状態魔法をかけ続けたもの」


 状態魔法。レイモンの得意とする魔法ね。息子であるリビオも、状態魔法を扱えるみたいね。


「貴方はどんな魔法が使えるの?」


 そう尋ねると、リビオは周囲をきょろきょろ見渡して白い円盤を見つけると、それを手に取った。一瞬で円盤は染まり、そこには緑色と藍色と紫色に変色した円盤があった。


 三色。確か三色に変色するだけでもかなりの魔法の才能が認められるのよね。レイモンのように五色とまではいかないものの、やはり親子なのでしょう。魔法の才能は遺伝されていたようです。


「時間がいるのよね? もう一度やって頂戴」


 そう言われ、リビオはまた緑色のオーラを宙に向けて放つ。私は目を閉じて念じる。彼が魔法を行使している空間だけに意識を向ける。


「時空魔法、加速(アクセル)


 すると彼の手元にはどんどん緑色の塊が集まり一瞬で先ほどの状態に近いモノが完成してしまいました。私は魔法を解除して時の流れを現実世界と同じ速さに戻します。


「これでいいかしら?」


「時空魔法?」


「そうよ、貴方のお父様から魔法を習っているの」


 私がそういうと、リビオは数秒考えこむ。そしてぽつりとつぶやいた。


「じゃあ、貴女が姫様ですね。こんなところにいて平気なんですか?」


 彼は私が姫と気付いたが、それに対して驚く様子もない。ただ一応なんでここにいるのだろうかくらいの疑問は持たれた。


「ちょっと抜け出してきたわ。この小屋前から気になっていたのだけど、普段レイモンとは外で会いますからね。今日は貴方が入っていくところが見えましたのでせっかくなので来ちゃいました」


「ふぅん。真面目に魔法の勉強をした方が良いのに」


 真顔で痛いところを突いてくる少年ですね。でも顔を見て会話をして、彼がブランクではないことは間違いなさそうだ。ではあの不可思議な魔法を操る謎の少年は一体何者なんでしょうか。


「それでその緑色の物体は何に使われるのですか?」


「? いや、見てて落ち着くなって」


 水槽にいるクラゲを眺める感覚かしら。確かにその緑色の塊は、空中をフヨフヨ浮いているだけだった。落ち着くかと言われれば、人間の頭部くらいの球体が、ぐねぐねと少しずつ形を変えたり戻したりしながら浮遊している。見慣れるまで不気味と言っても過言ではない。


「意味はないのね」


「あるよ…………僕はこれが好きだから」


 …………変わった子供。でも、レイモンの息子が真っ当な子だったら、それこそ笑ってしまいそうだわ。私がクスリ笑うと、リビオは私の顔をじーっと見つめていました。


「何よ? あまりレディの顔をジロジロ見るものではないわ」


「ごめん。でも、見ていたいなって」


「…………」


 彼がレイモンの息子だというなら仲良くなって損はないわよね。だったら、好意的に捉えられているうちにもっと接近しましょうか。


「今、友達と数人で貴方のお父様から魔法を習っているの。リビオもどうかしら?」


「…………お父様に相談するよ」


「待っているわよ」


 私がそういうと、リビオはなぜか小さくうずくまってしまいました。照れ屋さんなのね。可愛いところあるじゃない。

これで後は【藍】【紫】の子供たちですね。


今回もありがとうございました。

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