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105話 初めて来た思い入れのある場所

 同意書のサインを求めてビルジニを探し回っているのですが、どういう訳か彼女が捕まりません。いつもでしたら探すまでもなく不意に現れるといいますのに、こちらが探そうとすればこうも難しいだなんて。


 お昼休みは用事があるといっていなくなってしまい、仕方なく同じクラスのリビオに放課後に来てもらう様に声をかけたのですが、放課後になって教室に行くと、ビルジニはまた用事でいなくなっていたようだ。


「同意書なら俺が預かって明日書かせますよ?」


「うーん、そうね。お願いしようかしら…………ところでビルジニってどこに行ったかわかります? 昼休みも用事でいなかったと言うことは同じ用事かなって思いましたが」


 多分学園の敷地内のではないかと考えた私でしたが、リビオは首を横に振る。どうやらリビオにもビルジニの居場所がわからないみたいです。仕方なく私は用紙をリビオに渡し、明日受け取る約束をしました。


 時間が空いてしまいましたので、私は【橙】【黄】【青】【紫】のワンダーオーブを手に入れる場所を探すことにしたいのですが、それも難しい。


 スザンヌを引き連れ、学園内の散策はそろそろ限界があります。何故か。最近、明らかに怪しまれているからです。ですので、何か都合のいい言い訳を考えていますが、スザンヌはそれすらも平気で見抜きます。


 別に怪しまれたからと言って何か問題があるとは言えません。ですが、万が一でも両親に報告されてしまうようなことがあり、報告次第では門限まで決められてしまうかもしれません。


 優秀すぎる従者ってのも考え物ね。いっそこの前みたいに授業で敷地内を歩き回れれば良いのですが。そうだわ。久しぶりにブランクに協力して貰いましょう。


 彼ならば私とスザンヌを引き離すなんて容易でしょうし、ワンダーオーブの入手に手を貸すのは元々の約束。問題ないわ。早速今夜約束をして…………不意に誰かに名前を私は振り返ると、そこにいたの金髪に赤に近い紫色の瞳。従兄のアレクシスだ。


「アレクシスじゃない」


「偶然ですねクリスティーン姫」


「…………ええ」


 そうだわ。今日はアレクシスを利用させて頂きましょう。


「本当に偶然だわ! せかっくですし学園内を散歩しながらお喋りしませんか?」


 あまりにも自然すぎる誘い方。これならスザンヌも自然なことと理解し、疑われることなんてありえませんね! そう思って彼女の方に視線を向けると、いかにも何か企んでいるんだろうなという意を込められたジト目で私のことを見つけていました。


「何か言いたいことはあるのかしら」


 私はスザンヌの耳元でそう呟くと、スザンヌは私に耳打ちし返します。


「私の顔色を窺おうとしましたので。何か意味ありげなことはすぐにわかりました」


 誰よこの子私の従者にしたの。本当にあのおっとりした優しいセシルの妹なの?


 私がぽーんと口を開けて彼女を見つめていると、スザンヌは私の顎に手を伸ばし口を閉じさせた。「はしたないのでおやめください」と言われ、自身のマヌケ面を想像し、急に顔が紅くなる。


「スザンヌ、深い意味はないわ…………その、貴女がどういうか気になって視線を向けただけよ」


「そうでしたか。文句は言いますが姫様の決定には従いますよ。私は姫様に仕えていますので」


 そう言われ私は内心、でもジェラールの言うこと優先したりしない? と、忠義を誓ったばかりの従者を疑うのでした。あと、文句言わないで。


 アレクシスと並んで会話をしながら南東方面に向かいます。南東方面には遠方から通う学生寮があり、学生寮付近には確か【黄】のワンダーオーブを手に入れる場所があったはずです。


「魔法遠征ですか。私も同学年でしたらご一緒したかったです」


「本当ですね。残念ですが仕方ありません」


「実は我々も別方向ですが魔法遠征をするんですよ。北にある帝国に向かいます」


「そうなんですね。私達は南にある砂漠の国と伺っています」


 帝国というと、オリバーの父であり、乙女ゲームの攻略対象だったローワン・フィッツジェラルド=ド・コリングウッドの統治する国ですね。私達も来年はそちらになるのかしら。


 しばらく歩いていくと学生寮付近では数名の生徒たちが衣類の洗濯をしたり、巻き割をしたりと生活感の強い風景が平がっていました。白いシーツをブワッと広げる女生徒に、勢いよく薪を割る男子生徒。買い出しに行ってきた数名の生徒たちが荷車から食料品などをおろしています。


「平民寮かしら」


「いや、数名貴族生徒も混じっているね」


 この学校にしては珍しい。身分にものを言わせて平民生徒に働かせるならやりそうだと思いましたが、貴族生徒も混じって共同生活をしているなんて想像できない。


「私が行ったら騒がれるかしら」


 私がそう呟き、誰も否定はしなかった。そんなこと、私が一番わかっているわ。自分のふるまいははっきり言ってその場しのぎが多い。優しい人の姿をしたり、意地悪な貴族令嬢も演じた。そんな私を見てきたクラスメイト達からの最近の印象は、気まぐれな姫様。


 つまり、いつ意地悪な姫になるかわからない地雷なのだ。私だったらそんな女関わりたくない。だから仲良く暮らしている学生寮の生徒たちのところにいって、無理に気を遣わせるような真似はできない。


 あそこにはなるべく近寄らないようにしましょうか。乙女ゲームをプレイしていたころは、なんどもヒロインの姿でお世話になったあの学生寮にはね。


 しばらく周辺を歩き、【黄】のワンダーオーブを手に入れる場所の目星だけつけて帰ることにしました。

例えゲーム画面の向こうでも、確かにそこに思い出はあった。


今回もありがとうございました。

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