見知らぬ着信音
バイトで酷使した体をソファーに預け、七美はぼんやり天井を見上げた。昨日から今朝にかけての記憶は、相変わらずまだ戻らない。朝の男は、一体誰だったんだろう。
一番腑に落ちないのは、一緒に寝ていたにも関わらず、何かされた形跡がなかったことだった。添い寝フレンドじゃあるまいし、全く意図がわからない。いくら考えても答えは見つかるわけもなく、お風呂に入ろうと立ち上がった。
その時だった。聞き覚えのない着信音がかすかに聞こえたのは。
恐る恐るスクールバックの中を覗くと、暗闇の中で見知らぬスマホが光っていた。着信画面には、「璃花子」という文字。しばらくすると着信音は止んで、画面は真っ暗になった。
スマホを手に取りボタンを押すと、瑠璃子からの着信が40件と表示された。
不意にあの綺麗な寝顔が思い浮かび、彼女か奥さんだろうと予想した。彼女がいても既婚者でも、時々羽目を外したくなる時があるのかもしれない。でも、結局浮気する勇気はなかったとかそういうことなのだろうと、七美は無理やり自分を納得させた。明日交番にでも届けようと思い、再びカバンの中にスマホを戻す。
今度からナンパに乗るのはやめようと、七美は少しだけ反省した。