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ソナス

「マキナ君、起きたまえ」


「マキナさん、移植終わりましたよ」


喜寿屋女史と長谷川の声で目を覚ますと視界に様々なUIユーザーインターフェイスが展開されていた。おー、設計したとおりに機能

してる。やっぱりロボならこれは欲しいところだよな。

まずは手を握ってみる。うん、この辺の動作はあまりいじっていないこともあって変わらない。


【ロック解除】


ハンガー固定部分に指令を送ると身体を支えていたロックがはずれ、思わず前につんのめりそうになるのをオートバランサーで事なきを得た。

その場で屈伸、肩回し運動と軽く準備体操もどきをやってみたが軋みもエラーを吐くこともなかった。


『うん、良い感じ』


二人に向かってサムズアップすると二人も笑顔でサムズアップで返してくれた。


「しかし、本当に良かったのか?」


『何がです?』


喜び、小躍りしている俺に少しばかり憂いを含んだ声で喜寿屋女史が尋ねる。


「その状態だと表情もなければ皮膚感覚もない。それで君の人間性は保てるのか?」


まあ、女史の心配するところも分からなくもないが、我思う故に我ありコギトエルゴスムの精神で。ぶっちゃけるといっぺん死んだんだし、人間止めても良いやくらいの心ずもりでいた。


『大丈夫じゃないんですかね?』


表情があったなら苦笑でもしている声で答えていると不意にステンの扉が開き眼鏡姿の傍目から見ても仕立てが良いのが分かるスーツに身を包んだ老年の男性とロングのTシャツから短パンを覗かせた中学生ぐらいだろうか?黒髪のマッシュショートの女の子?いや男の子か?が入室してきた。


老人の姿を見て喜寿屋女史が驚きの声を上げた。


「お爺様なんでここに?」


お爺様?女史の父上が社長だから祖父となると会長?

ん?ん?

会長ってことはこの会社の創立者の喜寿屋日出男氏?マジかー。何でそんなお偉いさんがどうしてここに?


俺と長谷川も事実に気付き呆然としていると日出男氏は俺に笑顔を向けた。


「君がマキナ君か。話は宝子から聞いているよ。実は君に頼みがあってね」


『頼みですか?』


こんなお偉いさんからどんな頼みをされるのだろう?戦々恐々としていると


「しばらくこの子の教育係になって欲しい」


日出男氏に背中を押され少年が1歩前にでた。少年は物珍しそうに俺を見つめている。


「この子はソナス。この子に君の持てるものを何でも良い、教えてやってくれないか」


俺のもてるもの…。正直、俺の目の前にいる人物ほど俺はたいしたものを持っているとは思えない。人生経験も技能も知識その他諸々。


『俺に教えられるようなことなんて…』


俺が言いよどんでいると


「知識ではない。君のような稀有な存在と触れ合うことこそがソナスの学習になるんだ」


あ…。俺珍獣なんですね。確かに好き好んでロボットになりたいやつなんてそうそういませんからね。


『分かりました。俺から学ぶものがあれば幸いです』


「うむ。よろしく頼んだぞ」


虚無を見つめる俺の視線など会長は気付くことなく素直に了承したことに喜んでいた。


「では、今日からソナスと共に暮らす部屋に案内しよう。ついてくると良い」


おっと?ほぼ軟禁状態からの脱出はありがたい。自室は快適にカスタマイズはしたもののやはり好きな時に外出できないのは少しばかり窮屈だった。


「マキナ君を自由にするんですか?」


女史が慌てて日出男氏に問う。


「彼に暴走などの危険性がないことはお前が証明してくれただろう」


「それはそうですが…」


会長の微笑みに女史は少しばかり眉根を寄せた、それは困っているような何かを心配しているようなそんな感じだった。


「何か心配事でもあるのか?」


「篭の中のほうが幸せなものもいます」


確かに、小鳥やハムスターなどのペットは外敵のいる家の外では生きられない。人の手で保護されて生きたほうが彼らにとっては幸せだろう。


「マキナ君。君はどうだね?」


俺は守られなければ生きられない小動物じゃない。心配はありがたいがそんな心配は無用だ。


『俺なら大丈夫です』


俺の返答に満足げに日出男氏は頷くと「行くとしようか」とソナスを従え、ステンの扉をくぐった。俺もすかさずその後を追い自室を後にした。

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