vs 地方公務員11
「まったく、余計なことをしてくれたねぇ」
佑月道夫は夏木小次郎に今回の件の報告を受けるなりそう言った。
ティルナノグのまずいコーヒーをすすり、顔をしかめる。
「なんだこれは! コーヒーの歴史に対する冒涜だ!」
あえてなにも言わない。おおむね同感だからだ。
「今回の対象、公安がマークして泳がせてたんだよ? それをきみたちが台無しにしたんだ」
「それにしては周りに誰もいませんでしたが?」
「それほど暇じゃないからね。四六時中張り付いているってわけにもいかないんだよ」
「見ていない時に悪事を働く。ずいぶんとザルじゃないですか?」
「……なんだおい。小癪な口を利くじゃないか」
柚木は顔を傾げると、覗き込むように下から夏木の顔を見上げた。
「失礼しました。ですが、対象は残念なことになりましたが、行動自体は間違っていたとは思っていません」
柚木は大げさに手を広げた。
「ぬるいなあ。世の中結果が全てだよ。どうして(How)なんて分析は学者連中に任せておけばいいんだよ」
「それで、結果は?」
夏木が訪ねると、柚木はにやりと笑った。
「なかなかに面白い情報が引き出せたよ」
そう言って渡された封筒を、夏木は見た。
中に入っていたのは、地図だった。
「……朝桐中央公園に隣接している、市所有の雑木林ですか?」
「そう。結社はなぜかここの情報を集めていたんだ」
「これの何が面白いんですか?」
「ここ、オライオンが買収を進めていた土地なんだよ。途中で例の事件が起きてポシャったんだけどね」
「また、オライオンですか」
「さらに言うとね。ここ、昔はアメリカ軍の
管理する野戦病院があったんだよね。ベトナム戦争で負傷した軍人がここに運ばれてきてたんだよ。なにか思うことはない?」
「……結社の成立は、学生運動をしていた連中の就職時、ベトナム戦争と重なりますね」
「いいねいいねぇ♪ 状況証拠でしかないけどこうも重なるとなにかありそうって思えてくるよね」
「それじゃあ、雑木林を探索しますか?」
佑月道夫はバカにしたように鼻を鳴らした。
「君たちに重要事項を任せるわけないじゃん。これは朝桐警察にやらせるよ」
「よりによって朝桐警察、ですか」
近隣では朝桐警察の評判は悪い。
それは、特段警察官の質が低いとか上層部の不祥事が多発したとかの理由ではない。
単純に、地理的な問題だ。
まず、「朝桐」と名前の付く駅だけで3つある。さらに周辺数市の駅が加わり、その多くに繁華街が付随する。それらすべてが朝桐警察の管轄なのだ。
他市と比べて特段人員配置が多いというわけでもない朝桐警察のおまわりさんは東奔西走することになるのだが、そんな人手不足の中では通報から2時間してもまだ来ないなんてこともざらになってしまっているのだ。
そして、そういう因果から朝桐市ではある特徴が現れる。
「君たちには、中央公園で群れているガキどもの相手をしてもらおうかな」
チーマーの存在だ。




