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vs 地方公務員5

「おかえりなさいませお嬢様」


「ただいま。毎度のことながら当たり前のように人んちに不法侵入してるの、お姉さんどうかと思うわよ」


 そこにはツインテールでメイド服の小柄な美少女、前原麗華ちゃんがいた。


「おぉ~レイカちゅわ~ん!」


 興奮して飛びかかる正和。レイカちゃんんはそれをスッと避けてスパンと足払いした。


「ぐは!」


 一回転して背中から落ちる正和。受け身も取れなかったからけっこう痛そうだ。


「お嬢様、大人数のお客様をお呼びになるときは事前に連絡を頂かないと困ります」


「うん、レイカちゃん。お客様なのはあんたもだかんね?」


 この子、最近毎日うち来て家事してるのよね。

 いや、助かっているのは事実だけど、たぶん監視されているんだろう。

 なんか私と朝子が共謀してるって疑ってたし。



 私は靴を脱ぎリビングに向かった。


 うちのリビングはダイニングと合わせると30畳以上になるちょっとした広間だ。

 そこに、10人近い同僚が散らばってうずくまっていた。

 馬鹿ども、おそらく正和と同じようにレイカちゃんに飛びかかってぶん投げられたのだろう。


「お嬢様、どのようにおもてなししましょうか? 冷蔵庫の中からあり合わせのものでも作りましょうか?」


「ごめん、やめて。お願いだからそれはやめて」


 誰にでも欠点はあるものだ。

 レイカちゃんにとっては料理がそれで、なんか栄養補給重視で味は二の次って考えてるっぽい。

 詳細は省くが、彼女の手料理を食べて体重がキロ単位で減った、とだけ言っておく。

 明日職場がインフルエンザ大流行並に人手不足になったら目も当てられない。


「とりあえず、ピザと、あとタイ料理のデリバリーがあったよね。そこから適当に注文して」


「了解しました」


 レイカちゃんと入れ替わりで腰をさすっている正和が来た。


「おまえ、相変わらずセレブ臭抜けてないよな」


「なによそれ」


「レイカちゃんを当たり前のように顎で使ってることだよ。なんかいかにもな女主人ミストレスって感じだったぜ」


「あんたには言われたくない。毎朝車で仕事場まで送迎させてるのは誰よ」


「それはそれ、だろ? つーかなんでレイカちゃんがいるんだ?」


 知らんよ。私が聞きたいよ。


「あ~腰が痛い。これ、下手したら明日に響くぞ。伊織、湿布なかったか?」


「湿布ならお嬢様の部屋の箪笥の上段2段目左の引き出しに入っています」


 と、戻って来たレイカちゃん。なぜそれをあんたが知ってんのさ。


「ちょっと取ってくるぞ」


「次いでにノーパソも部屋に置いてきて」


 私はノートパソコンを正和に渡した。

 正和は勝手知ったる他人の家、迷うこともなく私の部屋に入っていく。


 あ、そういえば……。


「レイカちゃん、今日は私の部屋掃除した?」


「いえ。していませんが」


 つーことは脱ぎ散らかした寝間着やら下着はそのままだ。

 さすがにそれを見られるのは気分が悪い。

 私は自室に移動した。

 正和は机の前にいた。

 私は寝間着と下着を回収した。


「あんたなにしてんのよ。さすがにピーピングは趣味が悪すぎるでしょ」


「……伊織。まさか悪いことしてるんじゃないだろうな」


「……なんのこと?」


 正和はこちらに振り返った。手には夏木くんに渡されたキングサイズのファイルを持って。


「『副業』再開してるのか? おまえ、中高でクラッカーやってたときもデータこうやってまとめてたよな」


 ……こいつは私の黒歴史をいつまでも。


「だったらどうだってのよ」


「約束したろ? もしまた悪いことするなら俺も絡ませろって」


 そう言って正和はにやりと笑った。


「あんたになにができるのよ。それに、裏仕事で金稼ぎは足を洗ったから。おまわり敵に回してびくびく過ごすのは割りに合わないって言ったでしょ?」


 実は単発で年に数回仕事してるが、わざわざ公言することでもあるまい。


「それじゃあこれはなんだよ」


「あ~、裏セレブ目録」


「セレブ目録?」


「そう。表に出ないけど土地とか株とか持ってる金持ち連中の目録。私が昔、にいちゃに連れられてそう言った連中と付き合ってたの知ってるでしょ? 今でもたまにそういった連中から連絡来るのよ。だから暇なときに更新して顔と名前を憶えているの」


 まあ、嘘は言ってない。嘘なのはそのファイルは別にあってそれじゃないってことだけ。


「なんだ、あれか。おまえ、まだやってたんだ」


「まあね。それよりほら湿布。さっさと人の部屋から出て行きんさい」


 私は背中を押して正和を部屋から追い出した。


 ……うん、ちょっとやばかった。








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