vs 地方公務員4
宮本靖は就職活動に失敗した後、公務員試験のための専門学校に2年通い、その後にここ「グッダー膝折町店」にバイトとして入った。
私より1か月ほど後だ。
あいつ、カタログスペックは高かったのよね。
誰でも知ってる一流高校から誰でも知ってる一流大学卒業。身長だって180超えてるし体格もガリ寄りながら痩身で足も長い。
だけど、公務員試験では筆記は通るものの毎度面接で落とされる。
その理由は、すぐにわかった。
まず猫背。それで下を見て歩く。
人の目を見て話さない。
独り言が多い。それもこっちに聞こえるか聞こえないかくらいの。
叱られた後とかにボソッと呟いて内容が、
「なんで俺だけ」「あいつだってやってるじゃねえか」「俺は悪くない」。
ま、そりゃ落ちるわね。
びっくりするほど仕事もできなかったけど、私たちは物理的に尻をぶっ叩いて靖を矯正していった。
靖はバイト生活1年半、去年の公務員試験に合格した。
正和なんかはスモールTに資金援助してもらって祝勝会を企画していたみたいだけど、それからすぐに靖はバイトを無断欠勤して辞めた。
そして今日いきなり訪ねてきてあの態度だ。
この泥沼から抜けて公務員になったのはすごいと思うし本人の努力を否定するつもりはない。
けど、くそ雑魚だった頃を知っている私たちからしてみれば、ひとりで受かった気になってんじゃねえぞ、ってのが本音だ。
「つーわけで一発お見舞いしてやるぞ」
「はあ?」
仕事終わり、正和はいきなりそんなことを言った。
「このままじゃあいつのためにならん。ここで思い知らせてやらなきゃな。これから作戦会議のためおまえんち集合な」
「……別にいいけどなんでうちなのよ。どっか別の場所でいいでしょ?」
「別の場所ってどこだよ。ティルナノグは8時には閉まるし、駅前まで行くのは手間だし金がかかるだろ? なにげに歩いていける距離ってのもポイント高いよな、ここ」
「駅前行きんさい。バス使いんさい。つーか忘れてるかもしれんけどあんたんち私んちの隣だからね?」
まあ正和んちはうちほど広くないし一人暮らしの私と違い、正和のお母さんとその彼氏と同居だから大人数で押しかけはできないんだけど。
家に到着すると、私は車を駐車場に止めた。
車を降りる。
「あいつら、もう到着しているみたいね」
塀の前にずらりと並ぶ車、バイク、それに自転車。
数からいって今回集まったのは10人くらいか?
だが、その姿はない。
「どこにいんのよ。さすがに勝手に家の中に入られてたら中止だからね」
「さすがにそこまで常識知らずじゃないだろ?」
といっても同僚どもの姿はなく玄関には灯りが付いている。
ねえちゃだったらあいつらを家の中に入れるはずもなく……。
私はある予感を胸に玄関の戸を開けた。




