vs 地方公務員2
突然だが、レベルの高い低いはなにによって決まるか?
それは、細分化、分業化によって決まる。
例えば文化レベル。
ニューヨークのマンハッタンでなら犬の散歩は仕事として成立するが隣家まで1キロはあるような田舎では成立しない。
これは田舎より都会のほうが文化レベルが高いと言える。
これは傭兵なんかも同じで、肉弾戦用の使い捨ての命なんてのは現地にいくらでもいる。
わざわざ金を払ってまで雇う兵隊に求められるのは、狙撃、爆破技術だったりヘリの操縦だったり、そういった特殊技能だ。
じゃあスパイは?
これもかなりのレベルで細分化されている。
人から情報を引き出すヒューミント。
通信関連のコミント。
電子情報関連のエリント。
他にも衛星画像の解析や通信傍受、新聞やネットの関連記事をスクラップするだけ、なんて窓際っぽい種類もある(そしてこれが馬鹿にできない諜報活動だったりする)。
私たち零細のつらいところはひとり、ないし少数で全てをやらなければならないところだが、一応私たちにも専門性はある。
それは『地域性』というところだ。
レイカちゃん曰く、スパイ教本には「尾行対象者の行先は事前に下調べして頭に叩き込んでおこう!」と書いてあるらしいが、ぶっちゃけ無理な話だ。だってどこ行くかなんてわからなくて、それを調べるために尾行するんだもん。
まあ、知ってるにこしたことはないのは間違いないわけで、そこで「この地域は一通り知ってます! だって地元だから」というローカル型零細スパイの私たちの専門性が出てくるわけだが、いかんせん仕事がない。
そこで、仕事を探す、という仕事になるわけだが……。
余談ながらレイカちゃんは休日になるとバイクを乗り回して地域探索をしているらしい。
真面目な優等生らしい行動だ。
「ちゃんと渡した資料、読んで確認してますか?」
「ちゃんとやってますよ。ゲームやる時間削ってね」
夏木くんに渡されたのは1ダースのキングサイズファイル。
そこにびっしり載せられているのは、重要人物、要注意人物、あるいは指名手配されている人物の顔写真入り情報だ。それも手書きの。
なにかの間違いで彼らを見つけたら仕事開始という寸法だ。
「あれって夏木くんが作ったのよね?」
「そうですよ」
「なんで紙媒体なの? こういうのって電子媒体で保管したほうがいいんじゃないの?」
「そういうの苦手なんで」
……さいですか、スポーツ特待生め。
私は紙コップに備え付けのコーヒーメーカーからコーヒーを入れた。
『激』が付くアメリカン(薄味)なやつ。
正直おいしくない、が、ティルナノグのよりは幾分マシな安物コーヒーだ。
「そういえばなんの用?」
私は紙コップを夏木くんに渡した。
「なんの用、とは?」
受けとる夏木くん。
「だから夏木くんがここに来た理由。きみ、用もないのにこんなところに来て仕事サボるタイプじゃないでしょ?」
「あ、そうそう。伊織さんにお客さんです」
「それ、すぐに言わなくちゃダメなやつじゃね?」
私は作業用エプロンを取り、パソコン修理室を出た。
一歩遅れて夏木くんが紙コップ片手に付いてくる。
「どんな人なの?」
「どうやら知り合いみたいですよ。僕は知らないけど正和さんたちは知ってるみたいでしたし」
「正和も知ってる人?」
誰だろう?
そう思いながらサービスカウンターまで行くと、そいつはいた。




