表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異次元執行官の闓覇  作者: 黒曜 海星
2/3

部下という名目でのルームメイト

「へえ〜、見た目以上に頭がいいんんだね」

「どんな風に見えてるかは知らんが、そこまで自分が頭いいとは思ってないよ」

「それ聞いたらみんな、きっと唖然とするか嫉妬の視線が飛んでくるよ」


そんな事を言って彼女はクスリと笑った。

このクラスの現状を見る限り、俺が呼んだ書籍とは少し違うようだ。ここでは出きる者は授業を聞かなくてもいいようだ、もちろん聞く者達に迷惑がかからない程度に。だから俺は愛莉に声を掛けた。


「この授業の後は昼食になってるけどどこで食べるんだ?」

「もうお昼の話?まだ授業が始まったばかりだよ。まあ、確かに購買に行くにしろ昼食を買いに行くんだったらそれくらい早めに考えたほうがいいかもね」

「やっぱり混む?」

「う〜ん、行った事ないからわからないけど結構混むって話は聞いたことあるよ」

「でも、食堂に行けばすごい行列だけど売り切れとかはないかも」

「だけどあそこってよく後方に並ぶ生徒が並ぶだけで昼食の時間が終わっちゃうんだよ」

「その話ぶりだと愛莉は食堂とか購買はいかないのか、朝も思ったけどここ、全寮制だよな?」

「うん、そうだよ。この学園って面白い特徴があって、お昼の時間は買い置きがしてあれば自分の部屋に戻って自炊してもいいっていうね、ちなみに今朝のことはその前の期間が長い休暇だったから帰省してただけだよ」

「そういうことか、ということは俺はまだ今日きたばっかりだから購買か食堂か…」


俺が悩み始めると小声で愛莉は提案してくれた。


「…こ、ここの生活に慣れるまでなら私が…作ってあげてもい、いいけ…ど」

「いいのか?」

「慣れるまで…だからね!」

「おう、ありがとな」


ちょうどいいタイミングで授業終了のチャイムが鳴った。チャイムと同時に一気に廊下が騒がしくなり、うちのクラスの生徒(主に男子)が教室外に向かって全速力と言えるかのようなスピードで走り出した。「これは慣れるまで時間がかかるかも」と、俺は愛理に聞こえないように呟いた。


「じゃあ、行こっか」

「ああ、しばらくお世話になります」

「よろしい、ついてきて」


愛莉はそう言うと先導して歩き出したが、本人にとって歩いているつもりであっても明らかに外見は心が弾むようなスキップだった。


それから校舎を出てそう遠くない学生寮街を歩き、彼女の部屋に着いた…いや、これはもはや家だな。聞けばこの学園の定期試験で優秀な成績を収めると個人の希望によるが、一軒家に引越しができ、家の場所はその成績の順位によって決まるらしい。この大きさなら学園長が気楽に言っていたことも頷ける。


「さ、上がって適当に座ってて、適当にあるもので作るから」

「わかった、お邪魔させていただきます」


それから二十分ほど過ぎて適当に作るにしては随分とご馳走が出てきたので早速いただくことにした。


「?!美味いな!」

「ふふ、ありがとう」

「さて、昼食時間は2時間ちょいくらいあるし…真面目な話をいたしましょうか」


話の途中から愛莉の声が変わった。


「何のことだ」

「とぼけなくても結構です。学園長から聞いているのでしょう?わたしのことも今回のクラス編成のことも、わたしは貴方がどのような立場なのか、片言だけなら聞いていますのでその詳細は存じあげないので教えていただきたいのだけれど。日本支部以外の部隊から送られてくるなんてそうそうないのよ?それだけ貴方がやり手であることは分かるけどいくら漁っても偽名と用意された経歴しか出てこないのよ。一体貴方は何処の誰なのかしら?」


はー。俺は面では小さく内ではとてつもなく大きな溜息をついた。


「相手の立場が己より下という確証はどこにある?言葉を改めてはどうかね?」


溜め息後は重みのある話し方をした。理解が間違っていなければ先の発言はそうしろという合図なのだろう。だがその当人がとぼけた顔をした。当然だろう、知らされていた相手が組織のトップ中のトップなのだから。


「はい?」

「我はWoT所属ドゥーズが第一位、ラヴェグス・イルミンスール・ユッグ・奏宮であるぞ。対面者に名を求むはまず、己が名・所属・階級を述べることは常識であるぞ…そんなこともできぬとはそれほどお主が自らを低い者だと認めているということかね?」

「上司が有能でも部下はどうも違うようだな」

「し、失礼を申したことに謝罪を入れさせていただく許可を」


愛莉は少し間を開けた後、俺の前で膝まづいた。所謂、中世の国王拝面時に使われたものと同じだ。


「面をあげよ」


賢い愛莉ならこの言葉の意味も理解できるだろう。できなくば所詮、その程度なのだが…


「多大なまでの今までの無礼をお許しください、そして私目の侮辱は構いませんが我らが筆頭を侮辱することはお辞め頂きたく願いいたします」


冗談とはいえあの学園長も随分と慕われているようだ。そんな部下を差し出すとはな。


「よかろう、先の侮辱は撤回しよう。さればもう一度問う、名を名乗らぬか?」

「は、失礼いたしました。私はWoT学園科日本支部特殊諜報部隊所属、第2席世立明十学園学園現潜入官の松永愛理であります」


学園長の時もだがこの世界にはその者の実力を示す順位というものがある。これは単純な戦闘力に限らず、戦闘経験・魔力量・契約獣のランクで決まる。そしてこの順位の頂点にある上位12人のレイドパーティーを世間一般ではドゥーズと呼ぶ。また、その他WoT内に存在する機関のトップを中心にした順位も存在するため、今回愛莉が言ったものは日本支部学園科の中でのことなのであろう。


「そうか、まさかやり手どころか右腕だったとは」

「お褒め頂き光栄に預かります」

「では汝の上司であり現学園長でもある者から通達を伝える、”汝の上司は今期間のみにおいて1位殿に移譲、我らが君主の手足となりて行動せよ“とのことだ」

「は、その通達と命じを謹んで承らせて頂きます、我が主」

「ならば最初の命令だ、その言葉使いは禁止!」

「…へ?」

「だからその堅苦しいやつは禁止だ!いいな?」

「わ、わかりました」

「まだ堅いぞ!」

「う、うん、でも組織の中では使ってもいい?流石にわたしが気まずくなると思うんだけど…」

「俺が出したのは命令で禁止と言ったぞ」

「それじゃあ支部とかでも…その、タメ口じゃないといけないの?」

「お前は禁止の意味を理解してないようだから言うが、禁止とは場所や時関係なくダメだと言う意味だ」

「あ…うう」

「じゃあ話は夜にでもするとしてさっさと食べて校舎に戻るぞ、せっかく作ってくれたんだから冷める前に食べないと俺が損する」

「…え?今なんて言った?」

「だからさっさと食べて校舎に戻るぞ、と」

「その前!」

「なんか変なこと言ったか?」

「その、話は夜にでもって」

「あ、ああ、聞いてないのか?俺たちは学園長に会う前に知り合ってしまったが、そうじゃなくとも学園案内役として愛理を俺に付けると同時に愛理の部屋基家は大きいから同居させることにしたらしいぞ。それは周りへの影響考えて色々まずくないかと言ったが行動しやすくなる代償と考えれば安いものだろと言われては返す言葉がなくてな。と言うことでいろんな意味でこれからよろしくな。荷物については少ないが夕方には届くそうだ」

「な、よ、よくないわよ!」

「そんなこと言っても決まったことだから仕方ないだろ、それとも俺がこの家にくることは嫌か?」

「そ、そうじゃないけど…」

「わ、わたし一応これでも年頃の女の子なんだけど!だから…その…」

「つまり俺が男だからと、ならば大丈夫だ、けして襲わないとここに誓おう」

「そう、じゃなくて…」

「…まさか、襲って欲しいのか?」

「も、もういいわよ!」

「なら食べよう、もう時間が押してきてるしな」


言葉にはならなかったが、少し間をおいて頷いた愛莉は食事を再開した。女の扱いについては今までの任務等でマスターしたつもりだったが年齢によって扱い方が変わるのか?それにしても襲って欲しいのかと聞いたとき、否定しなかったが…今夜試してみるか。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「よし、では今日の授業はここまで、来週から中間だけどシンウィルートくんはみんながテストしてる間に基礎学力の確認と実力調査をするからそのつもりでね」

「実力調査については教師陣は試験官として動けないから学園長が直々にやってくれるそうよ、真面目に受けてね」


そう言って担任はクラスを後にした。平常授業8時間が終わると部活動が3〜5時間あるようだが今日は自分の荷物の整理もあるので見学等については明日に回すことにした。クラスメートには寮がどこになったとか色々と聞かれたが、愛莉も女の子として色々あるだろうから適当に流しておいた。時がくれば知れ渡るだろうし、俺から言うのは愛理に一度許可をもらったほうが良さそうだ。


 この世界には魔力を持って生まれてくるものとそう出ないものがいて、その確率は半々だが、その魔力を保持した子供の中で稀に能力(ユニークアドバンテージ)を持って生まれることがある。能力については必ず一人一つでその種類も様々だがやりようによってはその量は増量する。


愛莉は部活があるらしいので俺は適当に学園の人の目が触れないところを見計らって能力の一つでもある浸透(アンミラー)飛翔(ソール)を使って昼間に開けておいたベランダから家に入ることにした。家に着いた俺は、届いている荷物を昼のうちに聞いておいた部屋に収納した。買い置きというのは端末で簡単にオーダーできてすぐに届くようなので昼のお返しにでも夕飯を用意して待つことにした。幸い彼女の部活は運動系らしいので作り甲斐がありそうだ。整理と料理に3時間ほどかかってしまったので彼女が帰ってくるまではそう長くないだろう。その間はクラスに集められたと言うこの国からのスパイとやらの資料を見ることにした。


しばらくすると家のドアが開いた音がした。が、彼女以外の気配も感じたので彼女にはバレるかもしれないが部屋で気配を消して資料をまとめることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「え〜、またうちにくるの〜?」

「いいじゃん、こんなに大きな家なんだからわたし一人くらい」


一人?やばい、今日からシンもうちにいるんっだった。


「あ、やっぱりダメ!」


そう言った頃には靴を脱いで家主より先に家に上がっていた友人の姿があった。


「え?なにこれどう言う仕掛け?それにこんな料理、今まで見たことないよ」

「へ?何の話?」

「この卓上にある豪勢な料理にことだよ!」


見てみると本当に何品もの美味しそうな料理が並んでいた。シンが作ってくれたと言うことは一瞬でわかったので素直に嬉しかった。でもそれと同時にいまはどう言い訳を取り繕うかと言う戸惑いが生じた。取り敢えず…


「ああ、それは多分彼が作ってくれたんだと思う」

「彼?」

「うん、昨日たまたま帰省先で会った人から世話になったのでお礼が言いたいって言われたから今日の夕飯でも作ってもらえると嬉しいかなって言ったの、その彼は学園の付属大学の人らしいから」

「正直、部活後にキッチンに立つのって辛いじゃん?」

「確かに、でも彼って男の人だよね?そんな簡単に家にあげちゃだめだよ!」

「信用できる人だと思うけど…忠告ありがとう」

「じゃあ食べてみよう!美味しそうだし」


食器や飲み物も机に揃っていたので白米と味噌汁を注いでしょくたくにつくことにした。「ん!美味しい」と二人同時に言ってしまうほど美味しかった。それからしばらくの間、帰省中の間についてなどを語らっているとふと、彼女があることを口にする。


「ところで愛りんの部屋の隣の部屋だと思うけど誰かいるよね?随分と綺麗に気配を消してるけどわたしには誤魔化せないよ、流石に誰かはわからないけど」


愛莉にはバレるとわかっていたがまさか素人にもバレるとは、もう少し真面目に隠れたほうがよかったかもしれない。それとも愛莉の友人の方が鋭いだけか?


「あー、やっぱりわかっちゃうか」

「今日、留学生が来たじゃん?それで色々あってうちに住むことになったの」

「えっと〜、年頃の男女が同居することになるってそこらの色々あってではならないと思うんですけど~」

「確かにそう思うよね」

「前にその留学生がこっち側(・・・・)って言う話はしたよね?その階級についてだけどわたしも学園長も知らされてなくて、それを知ってしまった上で変えるか聞いて問題ないって言われると流石にそれ以上のことはできなくて…」

「で、その階級は?」

「多分直接聞いたほうがいいと思う」


そう言って愛莉は席を立ち、俺がいる部屋のドアをノックして言った。


「ちょっと説明してもらってもいい?」


そう言われたので自室となった部屋を出て、廊下を通りリビングに入室した。正直、そっちで話をすませてもらってもよかったとも思うけど表情には出さない。愛莉との話方から愛理と同等くらいの階級だろうけど、お互いまだ知らないも同然なので堅い表情にしておいた。愛莉は仕方ないとでも言いたげの顔をしたがまず友人の紹介を先にすることにした。昼に言ったことは覚えていたようだ。


「まずこちらの紹介をするね、ほら」

「本当にこっち側なの?」

「大丈夫だから」


どうも俺のことを危険視しているらしく、わずかに殺気も放っている。


「わたしは愛莉と同じく、WoT学園科日本支部特殊諜報部隊所属、第3席世立明十学園学園現潜入官の矧稠 夕波(はぎしげゆうなです」

「で?貴方は?」

「本当に彼奴の部下は礼儀がなっていないな、例えるなら無法地帯が適切すぎるほどだ」


相手が相応の態度で接してきたのでそれなりの態度で対応して見せたのだが何故か放つ殺気が見てわかるほどに増量した。ちなみに今言ったことについては一部理解できるところがあるのか、冗談だとわかっているのか、どちらにしろ愛莉は口を挟んでこなかった。


「我はWoT所属ドゥーズが第1位、ラヴェグス・イルミンスール・ユッグ・奏宮である」

「は?冗談も大概にしなさい!そんな組織のトップがこんなところにくるわけないでしょ!本名と階級を言いな…さ…」


少しイラつく発言を受けたので無言の殺気を放って黙らせて組織での自分の紋章と今期の指令書を見せてやった。


「え?じゃ、じゃあ、まさか本物?」

「何度言えばわかる、能力や技能は有能でも人格はまるで幼き子供だな」

「い、今までのご無礼をどうかお許しを!」

「ああ、わかったからそういう敬語は無しだ、いいな?」

「ありがとう、それと…わかった!」


どうやら信用できる相手には素直らしい。そのあとは俺も食卓について一緒に食べることにした。そして夕食食べ終わると歓談を少しして夕波は自分の寮へ帰った。そして色々話そうかと思ったが愛莉は久しぶりの部活ということもあってお疲れのようだったので細かいことは明日にしようと決めた。


その夜、ちょうど彼女は疲れてあまり抵抗できないようだから印つけ(・・・)もかねて襲ってみることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ