初クエスト2 フィアの料理
一先ず俺達は孤児院の中に入る。
中は掃除が行き届いていて綺麗で整頓されていた。
シュリナに案内されるがまま俺達は部屋に入る。
中では先に入った子供達が手を洗っていた。
皆しっかりと泡立ているが、顔に泡が付いてる子もいる。
隣にを見ると、フィアの顔は綻んでいた。
やはり、こいつは子供好きだな。
と、俺は思っていたことを確信した。
しかし、そのおかげで最初のクエストが子守になるとは。
「どうした?ため息なんかついて」
フィアが顔を覗きこんで聞いてきた。
どうやら、無意識にため息が出ていたらしい。
「いや、何でもない。ほら、子供達が洗い終わったぞ。
俺たちも手を洗うぞ。」
俺は変に追求されないように、さっさと手を洗いに行く。
後ろでは、フィアが「そうか」と言って付いて来ている。
手を洗い終わった俺達は、またシュリナに案内されて別の部屋に移った。
部屋では先に入った子供達が机を拭いたり服を畳んだり おもちゃを片したりしていた。
別の所から水音と子供のはしゃぎ声が聞こえている
「狭いところですが、座ってお待ちください。今、用意しますので」
シュリナはそう言うと、繋がっているキッチンへと向かった。
しかし、すぐにフィアが後を追ってキッチンに入って行く。
一人残された俺は、子供達が働いてるのに申し訳なく感じてきた。
少し考えて二人の後を追うことにした。
中に入るとフィアが物凄い形相で野菜を鷲掴みにし包丁を構えていた。
その隣では、シュリナがハラハラしている。
どうしたんだ?と思っていたら、フィアが包丁を振り下ろした。
高い音が響き、野菜は根の部分が切断された。
今の光景だけでフィアが料理が出来ないのは、誰が見てもわかった。
しかし面白そうなので、俺はこっそりと魔法を使い気配を消して観察することにした。
その間もフィアは野菜を切っては音を立てながら切った野菜を鍋にいれている。
勿論、大きさはバラバラだ。
シュリナも止めようしているけど、怖くて声が掛けられないようだ。
そんな事を知らず、フィアは鍋に水を入れて火にかける。
よくあんな切り方で指切らなかったな。と思わず感心してしまう。
そして、鍋が沸騰するとフィアは黒茶の固形物を入れた。
世間一般的にあるカレールーだ。
さすがにこれなら、もう大丈夫だろと思った。
シュリナも安心したのかほっと肩を落としている。
しかし、次の瞬間シュリナの表情が変わった。
なんだと思いフィアの方を見ると、ルー以外にも色んな調味料を入れていた。しかも、適当に……。
まずは味見しろよと思っていると「出来た」とフィアが声をあげる。
俺は、後ろに回り鍋のなかを見た。
見た瞬間、言葉が出ないというかあっけにとられてしまった。
鍋の中は紫色の液体が煮えている。
いったいどうすればこうなるんだと、俺は呆れてしまう。
「んで、それは食べられるものなのか?」
俺は魔法を解いてフィアに聞く。
フィアはビクとし振り返ってきた。
まぁ気配もなくすぐ後ろから声をかけられたらビックリするわな。
「カリュいつからそこに?」
「途中から居たぞ。料理に夢中で気がつかなかったんじゃないか?それよりはそれは食べれるものなのか?」
と先ほどの鍋を指差した。
「勿論食べられるさ。…タブン。…オソラク。」
「おい、だんだんと声が小さくなっているぞ!本当に大丈夫なんだよな。」
見た目からアウトだが一応聞いておく。
「そんなに言うなら、大丈夫なの証明してやる。」
フィアはそう言うと小皿に少し持って口に運んだ。
俺は反応が遅れてしまい、止めようとしたときにはフィアは完全に飲み込んでしまった。
するとフィアが手にもっていた物を全て落としてこちらに倒れて来た。
俺は、慌ててそれを支えて顔を覗きこんだ。
ちなみになにか触れたような気がするがそんなの気にする暇もない。
フィアの顔は蒼白だった。
「ただの料理になにしてんだよ!シュリナ水とタオルそれと寝かせられる場所を用意してくれ!」
俺が頼むとシュリナはハッとなりすぐに部屋から出ていった。
俺はその間にヒールとリフレッシュをフィアにかける。
リフレッシュは気分を良くするのと解毒効果がある。
効果が現れたのかフィアの顔は少しよくなったような気がする。
「しかし、リフレッシュの効果が出てたらこいつ普通の料理で毒物を作ってんだよな…」
俺は背筋が少し寒くなる。こいつには絶対に料理はさせないようにしようと決意した。
「カリュさん水とタオルとお布団を引きました」
「分かった。ありがとう」
俺は礼を言うとフィアを抱えてその部屋へと向かった。
「たく、最初のクエストから俺に迷惑かけるんじゃねぇよ」
俺は少し顔色が良くなったフィアを見ながら呟く。
「まぁ、無事ならいいんだけどな」
とこちらは小さく呟いた。