17
俺たちは、王都を出てから
かれこれ3時間は走っている。
周りにある人工物と言えば
現在走っている道が真っ直ぐ延びているだけで、左右には草原が広がっている。
「そろそろ、昼にするか」
ちょうど、太陽も真上を過ぎた辺りで丁度いいと思った。
その事を、後ろを走っているフィアに伝えようと振り替えると言葉を失った。
「・・・どうしたんだ一体?」
そこには、
汗を滝の様に流し、肩を激しく上下させて呼吸をしているフィアの姿があったからだ。
しかも、その眼は俺を貫く様に見ている。
「・・・・ろうが」
「なんだって?」
フィアの声が微かに聞こえたが何を言ったのか分からず聞き直す。
フィアは少しは呼吸が落ち着いたのか、こちらをさらに睨み殺すように見てきた。
「お前が、あり得ないスピードでずーと走るからだろうが!」
フィアの怒りの声で言い放ってきた。
しかも、その表情は少し怖く軽く後退りをしてしまった。
「あり得ないスピードってギガウルフ位のスピードだろ
お前だって、頑張れば出せるだろ」
俺はなに言ってんだという感じでフィアに返した。
「そんなスピード、簡単に出せるわけないでしょ!
今だって、身体強化のみ集中して追いつくのがやっとだわ!
それに魔力が持たないわよ!」
フィアが更にお怒りになり、言ってくる。
本当に怒っているのか口調が異なっている。
これは変に答えるともっと激しくなりそうだな。
「そうだったのか、それは悪かったから機嫌を直してくれ
ほら、水とタオルだ」
俺は、少しでも怒りを静めて貰おうと水とタオルを差し出す。
フィアは今一度俺を睨むと、疲れているのかそれ以上なにも言わず
水とタオルを受け取った。いや、奪い取ったが正しいか?
そして、タオルで汗を拭きながら水を飲んでいる。
「さてと」
俺はその間に昼を作ろうと道の端によった。
以前にもここで使用した人がいたのか
ちょうどいいスペースになっている。
俺はそこで土魔法で石を作り
簡単な石かまどを作った。
そこに生活魔法で火をおこした後
収納空間から鍋を出して石かまどの上に置く。
そこに水魔法である程度まで水を入れる。
そのあとは、食材を取り出しては調理して鍋に入れていく
沸いてくると同時に味が染み込んだのかいい匂いがただよってきた。
「いい匂いだな。」
そう言いながらフィアが近付いてきた。
息はある程度整ってはいるが
額からは汗がまだ出ており、それをタオルで拭っている。
「もう少しで出来るから座って待っててくれ」
俺は土魔法で簡単な椅子を作り
それを指差しながら言った。
フィアは頷くと椅子に向かって座った。
「カリュ、お前は色々な魔法を使っているように見えたがどこまで使えるのだ?」
フィアはそう聞いてくると再度残っている水を飲み始めた。
「んっ、あぁ光と闇以外なら全魔法を使えるみたいだぞ「!っげほ」
・・・まぁそうなるわな」
フィアは予想していた通り口に含んでいた水を吹き出した。
魔法には人によって相性があるのは知っているが
相性がいいの以外は基本初級魔法しか使えない。
中にはメインのほかに一つだけ中級までなら使える奴がいたと読んだことがあるが
それも長い努力の末と書いてあった。
しかし俺は全属性のすべての魔法が使える。
これを、使ってみたとき周りが驚いたのを今だに覚えている。
いや、アリスだけは別だったな。
フィアがむせている間にいい感じに鍋が出来たので
器を取り出して、それによそいフィアに渡す。
俺も同じようにして食べ始める。
食べている最中、
フィアからどうやって使えるようになったか
と質問にあったが気づいたら使えてたと答えておいた。
食べ終わり軽く食休みをしてから片づけをし
また走り出す。
今度はウルフぐらいのスピードで走っている。
このスピードだとフィアも問題なくついてこれるらしい。
しばらく走っているとふと疑問に思ったことがあったので聞いてみることにした。
「フィア、そういえば隣町までどれくらいかかるんだ」
俺は聞くとフィアの顔があっけにとられている。
「お前まさか知らずに向かっていたのか」
フィアが聞き返してきたので
俺は「あぁ」と答えるとフィアはため息をつく。
「もしかして、何も調査せずにこの道を進んでいたのか。」
俺は同じように返答するとさらに深いため息が出てきた。
「お前は馬鹿なのか、たまたま道があっていたから良かったものの
逆方向だとかなりの時間を無駄にしたぞ。」
フィアはあきれながら言った。
確かに調べてはいないが
この大陸の地図は頭の中に入っているため
方角に関しては特に問題はなかった。
けれど、実際の距離はおおよそでしかわからなかったので
フィアに聞いたのだがこの返答の仕方からして次回からは調べようと思う。
「はぁ、王都からだと歩いて5日ほどの距離だが
このスピードだと明日には着くと思うぞ」
フィアはあきれながらでも答えてくれた。
俺は例をいうと道に沿って走り続ける。
しばらく走り続けると
道に崩れた馬車が見え始めた。