私達。
一向に警戒を解かないアリーに私はため息をついた。
「生憎、私は行方知れずになった相棒程お人よしじゃないよ。もう一度聞く、手を組まない?」
私はまたそう言ってまっすぐアリーを見つめた。アリーは逃げようがないと確信したのか覚悟を決めたように頷いた。
「分かった、手を組むんだよね。そっちの目的はなに?」
アリーは私をしっかりと真正面から見据えながら尋ねてきた。
「簡単な事では無い。ただやるしかないことといったら?」
私はそう言って逆に問いかけるように彼女の顔を見た。アリーは答えにたどり着いたようではっと顔を上げる。そして静かに答えた。
「本気で思ってるの?」
私は一度ため息をついて、気を落ち着かせて答える。いや、正確には落ち着こうとした。今からしようとしているのは米国では国家反逆罪、日本では内乱罪なるものだ。数時間前まで国にお勤めしてた人が今では反乱を企てるなんて誰が思うだろう。まぁきっと思いはするだろうがそれだけだろう。
私は実際にしたんだ。アリーと今話していることと、体内のGPSを取り除いたときの傷の痛み。もう帰ることができないということが全て現実であり、もう後戻りできないと言うことを何よりも私に知らしめる。
「本気よ、私の相棒はこれが原因で姿を消したから。私は彼女を探して、場合によっては彼女の代わりに成功させなければ無いの。」
私がそういえば彼女は真剣な顔でその口から自身の願望を紡ぎだした。
「私は、もう生きていたくない。百年か千年か忘れたけど鶴やカメよりも長いときを生かされてきた。全てを知ってしまった、周りにいた親しい人たちももういない。信じられる人なんていない。痛みを伴い何も利益を生まないあの実験も、さらに私が生きているだけで誰かが絶えがたい苦痛にさらされるならば尚更、私は生きていたくなんてないしこんな人生なんていらない!もし万が一にも私のような子が生まれたら、生きているのなら。同じ目にあってるのなら私は!私の存在で全て始まったのなら私の手で全て終わらせる!!」
そう真剣な顔で、悲痛な表情で訴える彼女の眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。そして真っ赤なその瞳には、更に赤く何よりも激しく燃え上がる炎が見えた気がした。
「よし、改めて。アリシア・ジェーン・グランツラィヒ、宜しく。私のことは」
そこまで言ったところで私の口は止まった。今まで誰かに向かって自分のことを呼び名で呼んでほしいといったことなど無かったからだ。そう、アサリという若干屈辱的であるがほんの少し、本当に少しだけ愛着のわいてきたあだ名もニートが考えてくれたから。
「どうかした?」
こんな状況だからかアリーは警戒するようにあたりの気配を探ろうと五感を研ぎ澄ませる。私は首を左右に振って言葉を続けた。
「私のことはアサリと呼んで。私は今後もアリーと呼ぶけどいいよね。」
そういえばアリーは頷いて手を差し出してきた。意図を察した私は手を握る。
「成功させるよ。」
「何が何でも、だね。」
「「私達の革命を。」」