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母の過去
その日は空がとても蒼かった。
それだけ見たら普通だろうと思うだろう。しかし空を真面目に意図的に見ようとしたことはあるか?空の蒼が幾つあるか数えたことはあるか?視界の中の雲を数えたことは?
真夏日の中、耳障りというほどもう煩いと感じなくなってしまった蝉の鳴き声が辺りにこだまする。
申し遅れたが、私は篠宮 奈々。16歳。県内の花神高校に通う1年生。これは、私が母から聞いた嘗てこの国を武力で市民の安全を守ろうとした組織の内部の話し。
その組織の名は
日本国殺人ウイルス宿主殺し研究所。