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体長15cm、異世界にて恋願う  作者: 愛♡KEMONO
シルバー・エンカウント編
7/60

07 違和感

ブックマーク感謝です!

「ふぅ........あと143回か.....クソしんどいな.....」


 オレはすでにゴブリンを400匹以上討伐している。

 なんでそんなことができるやつがDランクで、ゴブリン退治に半分の確率で失敗してるかって?

 そりゃあ、酒を飲んでフラフラしながらクエスト受けてるからに決まってんだろ!

 それに、オレは無傷じゃねえぞ。

 

 左腕は骨折、足には剣による切り傷、頰にも槍による傷、背中には棍棒による打撲がある。

 細かい傷を数え始めたら、切りがねぇ。

 満身創痍ってやつだ。

 これをあと三日続けるっていうんだ.....『クソ』しんどいだろ?

 

 今日のところは、バックがゴブリンの『右耳』でいっぱいになったし、夜になって周りが見えにくくなってきたから、帰ることにした。

 オレがゴブリンの右耳を集めているのは、趣味とかじゃねぇ。

 ゴブリンの右耳が、ゴブリン退治の証拠になるからだ。


 きゅるるぅぅ......

 オレの腹から、かわいらしい音が聞こえた。

 .....どうやらオレは空腹のようだ。

 今夜は何食べようかなぁ.......出来る限り安い飯がいい。

 ....名案を思いついたゼ!

 そこら辺の雑草なら食べ放題じゃねぇか!

 ....お腹壊すからやめておこう.....。

 宿もどうしようかなぁ?

 んん〜.......野宿しかねぇな......。

 これは仕方ない......それに、もう慣れた。


「あ゛ぁ〜.......クッソしんどい......。

 やめちまおうかな?.....そういえば、なんでこんなことしてんだっけ?」


 オレの頭に狐のモンスターの顔が思い浮かんだ。

 

「.....ったく.....仕方ないよなぁ.....。

 あいつ(キュー)の撫で心地が良すぎるのが悪い。

 後でたくさん撫でさせてもらわなきゃ.....な.....」


 オレは何度も同じことを考えながら、やる気を保っている。

 自然とやる気が出るおまじないだ....便利だろ?


「ギャギャー!!」


 オレの耳に、今日400回以上聞いた叫び声が届いた。

 今日はまだ眠るには早いってか?

 .....なかなか厳しい事言うじゃねぇか......。


「上等だ!!かかってこいヤァ!!」


 オレはゴブリンの群れに走り出した。



=============================



「......はぁぁ.......やっちまった......。

 これは.....ちょっとヤバイかもしれねぇな.....」


 オレは、どっかの路地裏の壁に背もたれながらつぶやいた。

 何がヤバイかって?

 昨日しくじって、左腕に棍棒を受けちまったことだ.....。

 骨折中なのにそんなものをくらったんだ.....左腕が取れちまうかと思った。

 運が良かったのか、左腕とおさらばとはならなかったが、激痛であんまり寝れなかった。


 いつものオレ....いや、まともなやつなら治るまで休業するところだが、今のオレには時間がない。

 普通の受付嬢は、こんな日が昇るか昇らないかの時間はお休み中だが、ここのギルドにはとびきり有能なリーシャ(強制労働)がいる。

 昨日だって真夜中(およそ11時)にクエストの報告に行ったら、眠った状態のリーシャが発見された。

 気持ちよさそうに寝てたなぁ.....。



==========================



「おい.....リーシャ.....起きろ.....」


 オレは、完全に夢の世界に行ってしまっているリーシャを、さすって起こそうとしている。

 すると、


「ベルさんは.......大間抜けぇ〜.....でへへぇ〜.....」


 何だこいつ?夢の中でもオレを馬鹿にしてきやがる......。

 ツンツン......

 オレは眉間を強く突いた。


「うっ...うっ......やめてくださいよぉ〜......ベルさん.....」


 やっと起きた。


「うすせぇ....人の愚痴言いながら寝てんじゃねぇよ....」


 オレは、額を指でぐりぐりしてやった。


「うぅっ...うっ....もうおきましたから、頭ツンツンしないでください.....痛いですぅ....」


 オレは仕方なくやめてやった。

 こいつだってオレのために残って仕事してんだ....。

 .....自業自得な部分もあるが。

 

「では、深夜の受付をしま〜す.........ん!?その左腕どうしたんですか!?」


 リーシャがオレの左腕の怪我(骨折)に気がついた。

 あぁ......めんどくせぇ....。


「気にすんな....大したもんじゃねぇ...」


「いや、それは明らかにポーション必須の域ですよ!!

 こんだけゴブリン退治の報酬があれば、余裕で買えますよぉ!

 と言うか、一体どれだけのゴブリン()ったんですか!?」


 リーシャが、容量以上にゴブリンの右耳でパンパンになったオレのバックを指差しながら言った。

 

「.....400匹ぐらいだ」


 オレが答えると、


「.....なんでいつももっと頑張らないんですか?

 普段からもうすこ〜しだけ努力していれば、こんなに大変にならなかったのに.....」


 リーシャがもっともなことを言ってきた。

 .....返す言葉がねぇ....。


「うるせぇ.....早く数を数えて報酬よこせ」


 オレが、リーシャにデコピンしながら言った。


「うっ!痛いですぅ....まあ、本人がそう言うなら無理強いはしませんが、治療をお勧めしますよ。

 最悪の場合、後遺症が残ることだってあるんですからね....。

 ....ゴブリンの数を数えてきます」


 リーシャが心配そうな表情をしながら、奥の部屋にオレのバックを持って行った。

 悪い奴じゃねぇんだけど、間抜けなところがなぁ......。


「やあ、随分と遅いじゃないか。

 死んでしまったかと心配したよ」


 ギルマスが二階から降りてきながら声をかけてきた。

 

「心配は無用だ。

 最低でもお前に心配されるほどオレはヤワじゃねぇ」


 オレが愛想なく返事したやった。


「そいつは安心だ。

 ....そういえば、ここに賞費期限が切れてしまった骨格ポーションがある」


 わざとらしくポーションを見せつけてきた。

 骨格ポーションとは、その名の通り骨に関わる怪我を治すことのできる薬だ。

 今のオレにはうってつけのポーションだが、結構値段が高い。


「今日までぐらいならなんとか飲めるんだが、如何(いかん)せん必要とする人がいなくてね....。

 あぁ、どこかにゴブリンにやられて『左腕』を骨折してる『Dランク』の冒険者がいればなぁ!」


 こいつの言いたいことはわかる。

 オレに「どうか....そのポーションをくだしゃい!」とでも言わせたいのだろう。

 

「フンッ!....そんなやつ知らないなぁ....」


 オレがそっぽを向きながらそう言うと、


「そうか....でも、怪我している人がいたら、できれば貰っておいて欲しいよ。

 もちろん、対価として何かを要求することはないよ」


 少し残念そうな顔をしながら、ポーションを受付のカウンターに置いた。

 

「.....チッ....思いあたりがあるから、こいつは貰っておく.....」


 オレはそれを乱暴に手に取った。

 すると、にっこりと笑いながら、


「そいつはよかった」


 と言ってきた。

 チッ....調子が狂うゼ.....。


「俺は仕事があるから、これで失礼するよ。

 .....君が無茶をしすぎないことを祈っておくよ」


 ギルマスが二階に戻っていった。

 ......このポーション.....消費期限一ヶ月後じゃねぇか.....。

 後で、一緒に飲み((酒))に連れて行ってやろう.....ギルマスのおごりだけどな!


「ベルさん!これが報酬ですよ!」


 リーシャが布の袋を持ってきながら、奥の部屋から出てきた。

 .....数えるの早くない?まあ、助かるけどな.....。

 

「....どのくらいになった?」


 オレが緊張ながら尋ねると、


「すごいですよ!銅貨42枚ですよ!」


 驚愕の金額が告げられた。

 

「うそだろ......『銅貨』42枚!?

 どうしてそうなった?」


 銅貨42枚は、ゴブリン討伐クエスト84個分の報酬だ。

 そんなに倒してない気がするんだが......


「今回は複数のクエスト受注という特殊なケースなので、討伐数を5で割った分だけクエストをクリアしたことにしろ、とギルマスから言われてるんです。

 で、討伐数が421匹だったので、この報酬になりました」


 なるほど.....そういうことか......?

 まあ、多い報酬貰えるなら文句はねぇ。


「....今日のところは.....もう寝る....。

 さすがに疲れちまったよ.......じゃあな」


 報酬を受け取り、それだけ言って立ち去ろうとすると、


「待ってください!」


 リーシャが声をかけてきた。

 手にはお弁当のようなものを持っている。


「どうせお金の節約のために、ご飯食べないとか言い出しますよね?

 私が残業してるのに、それを利用してくれる人がいないと….その….努力の無駄です!

 だから、これあげます!……冒険者の皆さんの食べ残しですけど!」


 弁当を渡された。

 こんなアホに心を読まれたのは気にくわないが…..今回は許してやる。


「おう….ありがとな。

 最低でもお前の残業中は死なねぇようにしておくよ」


 オレがそう言うと、


「はい…..そうしてください…..」


 リーシャが、なぜか顔を真っ赤にしてうつむいた。

 

「おい…..病気か?顔が真っ赤だぞ」


 オレが心配してやると、


「う、うるさいですぅ!!今は自分の心配でもしてやがればいいんですよ!!」


 プリプリ怒りながら、奥の部屋に行ってしまった。

 変な奴だなぁ…..いつものことだが。


 オレは一人だけ取り残された。

 …….帰ろう…..帰る場所ないけど…..。



==========================



 そのあと、路地裏で疲れ果てて眠ってしまい、現在に至るというわけだ。

 地面が硬くて、腰が少しおかしくなっちまった。

 寝る寸前に骨格ポーションを飲んでおいたが、左腕にはまだ痛みが残っている。

 骨格ポーションを飲んだからといっても、すぐに骨が治るわけではなく、ただ単に治癒力が上がるというだけだ。

 無いよりは100倍マシだけどな。

 

 腹が減ったから、リーシャから貰ったお弁当を開けてみた。

 焼いた肉と緑の野菜が入っている。

 しかも、野菜で『ベルさん』って書いてやがる.....。

 残飯じゃねぇ…..。

 後で一緒に酒の席に誘ってやろう…..ギルマスのおごりでナ!


 弁当食って元気出たことだし…..そろそろお仕事に行くか…。

 オレは再びギルドに向かって歩き始めた。



============================



「よう…..リーシャ…..弁当美味かったぞ」


 オレは、早朝でも『珍しく』起きたままのリーシャに話しかけた。


「はい!残飯ですが…..お気に召したのならよかったです」


 残飯…..ということにしておくのか…..まあ、それならそれでいいが…..。

 リーシャは書類に何かを書いて、ハンコのようなものを押している。

 カウンターに近づいてよく見てみると、ゴブリン討伐のクエストばっかりだ。


「おい…..それってオレのやったクエストのか?」


「はい、とても多いですよぉ〜」


 今こいつはオレのために仕事をしてるってことだよな?


「その…..ごめんな…..仕事増やしちまって……」


 オレが頭をかきながら謝ると、


「いやいや気にしないでください!

 クエストが達成されることはとてもいいことなので....。

 それに、ベルさんが『珍しく』頑張ってるんです!

 私も少しくらいは頑張りますよぉ〜!」


 リーシャが手をバタバタさせながら許してくれた。

 だから、


「『珍しく』は、余計…..だっ!」


 デコピンしながら、感謝を示した。


「いでっ!もう!事実じゃないですか!!」


「時には嘘をつくことも必要なんだゼ…..」


「……そうですか…..これ以上追求すると、またデコピンされそうなのでしませんけど….できればもう少し優しく接してください!」


「….考えておく」


「....頼みますよぉ〜。

 で、今日もゴブリンのクエストですか?」


「そうだ。昨日と同じように特別待遇(チート)を使わせてもらうゼ」


「はい…..それはいいんですが…..あまり無茶はしないでくださいね….」


「....言っただろ?お前の残業は無駄にしないって」


「はい、よろしくお願いしますね!

 まあ、残業代はもらってるんで、完全に無駄になることはないんですけどね!」


 なんか…..色々台無しな気がする…..。


「じゃあ、行ってくる….」


「はい、いってらっしゃいませ!」


 オレはギルドを出た。



==========================



 そして、また二時間近く歩き、昨日と同じアルト草原に来た。

 太陽がまぶしいゼ!


 それから結構な距離を歩いて、やっとゴブリンの群れを見つけられた。

 スライムを襲っているようだ。

 スライムとは、核とそれを包むゼリー状の物体でできたモンスターだ。

 核は魔石によってできていて、魔力を流すことで水を作れるらしい。

 ゴブリンも少量の魔力を持つから、スライムの核を利用することができる。

 それゆえ、ゴブリンがスライムを襲う場面がときどき見ることができる。


 オレはゴブリンに気づかれないように近づき、一体のゴブリンの首に剣を叩きつけた。


 ゴギィッ!!

 そんな音を立てながら、ゴブリンの首が90度近く曲がった。

 間違いなく即死だ。

 すると、近くの森から高速で何かが飛んできた。


「あっぶね!!」


 オレは間一髪でそれを避けた。

 弓矢だ。

 森に弓を持ったゴブリンがいる…..しかも、3匹以上!?

 弓を持ったゴブリンは相当少ない。

 ごぶりんすれいやぁ(自称)のオレですら、一度しか会ったことがない。

 弓は厄介だ。

 それが3匹もいるとなると……結構危険だ。

 護衛は4匹。森に二匹、オレの近くに二匹。

 

 シュッ!

 弓が飛んできた。

 目の前から飛んでくるのであれば、割と余裕で避けられる。


「ギャギャー!!」「ギャッ!!」


 オレの左右のゴブリンが、タイミングを合わせて剣で攻撃してきた。

 オレはそれを無視して弓使いのいる森に駆け出した。

 

 シュッ!.....シュッ!.....シュッ!.......

 弓が連続して襲いかかってきた。


「チッ!......どうなってんだ!?」


 普通ゴブリンは群れで行動するが、連携は取れていない。

 だがこいつらは、弓のメンバーの近くにゴブリンを配置したり、弓を交互に撃ったりしてきやがる。

 何かが…..おかしい…………まさか!!


『ゴブリンキング』


 オレの頭にその名前が思い浮かんだ時、


「ギャギャー!!」「ギャー!!」「ギャッギャ!!」


 オレの後方にゴブリンが10匹ぐらいが現れた。

 森とゴブリンでオレを包囲している。

 そして、森の奥からひとまわり大きなゴブリンが出てきた。

 手には大剣を持っている。

 .....間違いなくこいつがゴブリンキングだ。


 ゴブリンキングとは、ゴブリンの上位互換で高い知能と戦闘能力を持っているやつだ。

 Cランク級(ゴブリンはEランク級)のモンスターだ。

 これは単体での話で、ゴブリンを統率している個体はもっと危険だ。

 アルト平原にも出現するという話は聞いたことがあるが、こんな街に近い場所にはいないはずだ。


「グゥゥ…..」


 ゴブリンキングがうなり声を上げた。

 その目はしっかりとオレに向けられていた。

 

 チッ…..ついてねぇな……。

 今のオレは、左腕が使えない......つまり、こいつには絶対勝てない…….。

 この包囲を突破できる気がしない……。

 どうする?


「グギャァァァアッ!!」


 ゴブリンキングが叫び声を上げると、ゴブリン達が突撃してきた。

 剣持ちが6匹、槍が2匹、棍棒が5匹だ。

 後方では、弓持ちが矢を構え始めた。


 どうするかって?

 そんなの決まってる.....こいつらを殺して金を手に入れる。

 約束は.....守る.....腕を失ったとしても!

 

「クフフ......」


 オレは少し笑った。

 まったく.....贅沢な幻獣様だよ....あいつ(キュー)は!


 オレは目を見開いて向かってくるゴブリンを見た。

 弓があと数秒で発射される。

 槍があと2秒でオレに届く。

 剣があと3秒でオレを斬りさく。

 ゴブリンキングが勝ちを確信している.....。


 オレはその全てを覆す!!


「いくゾォ!!」


 オレは腹から声を出し、自らゴブリンに向かっていった......。

=========

は、場面変更、


*********

は、視点変更みたいに使い分けています。


今回は、場面変更多発させてしまいました。

......見にくくて申し訳ないです......。


次回以降気をつけます!

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