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体長15cm、異世界にて恋願う  作者: 愛♡KEMONO
シルバー・エンカウント編
6/60

06 冒険者ギルド

ブックマークありがとうございます!

「おい.....受付嬢.....リーシャ.....起きろ!」


 オレは、受付のカウンターに突っ伏して寝てる受付嬢(リーシャ)に、おはようのチョップをした。


「んぎゃっ!?もぉう!!なんですか!?」

 

 リーシャが怒りながら起きた。

 その際、長い金髪がふわっと舞った……ちょっと羨ましい。


「クエストを受注したい。

 できれば複数受注したいんだが.....いいな?」


「.....ダメに決まってるじゃないですか.....。

 また酒でも飲みすぎましたか、ベルさん?

 まあ、ベルさんは酔っ払ってても、そうでなくても脳みそふやふやですけどね!」


 ドガッ!!

 リーシャの頭に再びチョップが炸裂した。


「ヌギャウ!!うぅ......痛いです!!

 ベルさんみたいにバカになったらどうするんですか!?」


 オレは全力でパンチする構えをとった。

 次の一撃で.......ヤる(殺す)!!


「う、うそですよぉ〜。ベルさんは頭いいですもんねぇ〜。

 私知ってますよ!ベルさんが足し算引き算できないこトギャアアッ!!」

 

 オレはリーシャの頭にゲンコツを、全力の2割程度の威力で放った。

 だいたいゴブリンが気絶するレベルだ。


 バタ......

 受付嬢は気絶した。

 こいつの防御力はゴブリンと同レベルか......ゴミめ!


「あんまりうちの従業員をいじめないでくれるかな、ベル君」


 二階の階段から一人の男がおりてきた。

 黒髪に赤い目をしている。

 リーシャと同じような赤い服を着ているが、ちょっとゴージャスになっている。

 

「よう、ギルマス」


 オレが気さくに挨拶した。

 そう、こいつはギルドマスターだ。

 何度も会ったことがあるんだが.......名前なんだっけ?

 .....忘れたからギルマスって呼ぶことにする。


「久しぶりだね。

 でも、噂はたくさん聞いてるから、久しぶりに会った気がしないな。

 ......願わくは、もう少し良い噂を聞きたいんだけどね」


「......『幻獣』を見つけた」


 オレがそう言うと、ギルマスの表情が変わった。

 こいつの世間話は長い......しかもウザい。

 単刀直入に話をしたいなら、この方法が一番だろう。


「.....それは本当かい?」


「ああ。しかも、会話(?)ができた」


「ほう....それは面白い。

 で、どんな化け物だった?」


 ギルマスが興味津々な顔で聞いてきた。


「.....ああ.....銀貨1枚で売られていて、モコモコしてる可愛い奴だった」


「そうか.....なんて恐ろしい.....ん?なんだと!?銀貨1枚!?安いな!

 .....じゃなくて、それが『幻獣』なのか!?」


 大方、羽とか触手とかが生えた化け物を想像していたのだろう。

 

「ああ......可愛さだけが取り柄のモコモコだった」


 そう言うと、ギルマスは眉間を押さえながら椅子に座り、天を仰ぎ始めた。


「そんなのが『幻獣』.....なのか....。

 もっとこう......面白そうなやつなのかと思ってたよ.....」


「......オレもそう思ってた」


 オレは深々と頷いた。

 幻獣と聞いて、キューの姿を想像するやつはいねぇだろう。


「で?『幻獣』を見つけたなら、テイムしてくればいいじゃないか?

 ......また金がないのか?まったくしょうがないやつだな、君は....」


 ギルマスはそう言って、自分の皮袋から金を取り出そうとしたが、


「いや.....金は貸さなくていい。

 その代わり、クエストの複数受注と、受付嬢の時間外労働を許可してくれ」


 オレがそう言った瞬間、リーシャの耳がピクって動いたのを、ギルマスは見逃さなかった。

 

「いいだろう。ちょうど最近、勤務時間中に男に媚を売って、仕事しないで酔い潰れたバカがいたなぁ〜.....ね?リーシャ君?」


 ギルマスが目元を暗くしながら言った。


「あ....ハハッ!!一体誰でしょうね?そんなやつ.....今、ここにはいませんよね?」


 リーシャが営業スマイルを浮かべながら言った。

 ......若干引きつっているが。


「残念だが、俺の目の前にいるんだよねぇ〜、そんな大バカ者が!!

 リーシャ、君がやりなさい!!」


「そんなぁ〜!!嫌ですよ!!労働基準法に反します!!」


「ギルマス命令だ!!それに、そんな法律はない!!」


「い〜や〜だぁ〜!!」


 そのあとも、ギルマスとリーシャは口論し続け.....結局、オレの要求は受け入れられた。


「シクシク......私(の自由)......犯されちゃった......」


 リーシャはしばらくそんなことをつぶやいていた。


「....はぁ....またせたね。

 ところで、なんで今回はお金を借りようとしないんだい?」


「.....いつものオレならそうしたと思う。

 けど、今回はちょっとカッコつけちまったんだ。

 少しくらい努力しないと、バチが当たっちまうだろ?」


 オレがそう言うと、ギルマスはふっと笑った。


「......面白い。

 酒にしか興味のない君に、努力なんて言葉を吐かせるモンスターか.....。

 いいねぇ.....やっぱり興味がわいたよ!」


「おい.....確かに酒にしか興味はないが、これでも努力はしてんだぞ!」


 .....酒のために。


「....もう少し努力が酒以外に向くことを願うよ。

 まあ、どうしても無理だと思ったら、俺のところに来い。

 幻獣を見てみたいからな」


「お前のところに来ることはねえよ。

 今回は本気(ガチ)だ」


 オレはキューのことを考えながら言った。


「.....そうか。がんばれよ」


 ギルマスが少し驚いた表情でそう言った。


 そのあと、オレを恨みのこもった目で睨んでくるリーシャから、ゴブリン退治のクエストを複数個(100個)受けて、冒険者ギルドを出た。

 


================================



 現在、オレは街の近くの草原に来ている。

 この街の名前はライリ。

 だだっ広い平原の端の方に位置する街らしい。

 オレのいるこのアルト草原は、街から片道徒歩2時間で来ることができて、モンスターのレベルも低い。

 まさに初心者の狩場としてうってつけの場所だ。


 当然、4年間Dランクから抜け出せないオレも、大変お世話になっている。

 今日も今日とてゴブリン退治。

 最近、ゴブリンの顔の違いがわかってきた自分に恐怖し始めた。


 酔いがない状態でこの場所に来たのは....何ヶ月ぶりだろう?

 おかげさまで、頭が良く冴える。

 あと四日.....それで銀貨1枚集めなくちゃいけない。

 つまり、銅貨100枚で、鉄貨でいうと........たくさんだ!

 考えるのはやめよう!

 とにかくゴブリン殺せばいいんだろ?


 オレがそう考えていると、


「ギギャー!!」


 ゴブリンが5体現れた。

 ゴブリンは、緑の肌と小柄な体を持つモンスターだ。

 5〜10体ぐらいの群れで行動し、武器を使ってくる。

 ゴブリン討伐はDランクのクエストだが、それはあくまで冒険者が、4人のパーティを組んでいることを仮定しての話だ。

 一人で討伐クエストを受けるのは、強力なスキルがある化け物冒険者だけだ。

 だが、オレはそんなもの持っていない。

 ただ単に、パーティを組んでくれるやつがいないだけだ。

 .....報酬4倍って考えれば悪い話ではないな!!


「ギャギャー!!」


 どうやらゴブリンは、オレのことを殺したくて仕方ないようだ。

 オレも殺したくてしょうがないから、お互い様だ。

 オレは右手に剣を持ち、左手にナイフをつかんだ。

 一応、二刀流だ。かっこいいだろ?

 まあ.....


「ギャアアッ!!」


 ゴブリンが悲鳴を上げた。

 片目にナイフが刺さっている。

 .....ナイフは投げるけど。

 4メータル(この世界での4メートル)ぐらいなら、正確に投げられる。

 

 オレは戦闘中に武器を構えずに、片目を押さえてる厨二病やろうに接近し、剣で頭をかち割った。

 生憎とオレの剣はナマクラでなぁ、しっかりと斬ってやることもできねぇんだわぁ....。

 

「ギャー!!」


 剣を叩きつけた後の硬直を狙って、別のゴブリンが棍棒を振り下ろしてきた。

 それをオレは、剣を放し身軽になり、サイドステップで回避しながら、顔面にゲンコツをくれてやった。


「グギャァァッ!!」


 ゴブリンは、表情を崩し(顔面を崩壊させ)ながら吹き飛んでいった。

 満足いただけたようで何よりだ。


「ギャー!!」「グギャー!!」


 二体のゴブリンが、前から接近してきた。

 後ろからもこっそり一体近づいてきている。

 前の二体はどっちも棍棒で、後ろのやつは剣を持ってやがる。

 だからオレは、すぐさま後ろを向きながら自分の剣を回収して、一匹のゴブリンに接近した。


「グギャッ!?」


 驚いているのか?そんなことより、隙だらけだぞ?

 オレはそいつの腕に剣をたたき込み、叫んでいる間に首を剣でへし折った。


「グゥゥ......」


 二体の方がうなり声を上げている。警戒してんのか?

 残念だが、オレから逃げることはできねぇぞ。

 だってオレは.....


「ギャアッ!!」「グギャッ!?」


 ゴブリン二体がほぼ同時に吹き飛んだ。

 .....お前らの2倍の素早さがあるからな。

 ゴブリンは、そのまま地面に打ち付けられた。

 .....一体はまだ意識があるらしいな。

 何が起きたかわからねぇって顔してやがる。

 片方は剣でぶった斬って、もう一方は蹴り飛ばしたんだって教えてやってもいいが.......


 グシャァッ!!

 ゴブリンの血しぶきが舞った。

 ゴブリンの顔面には、棍棒が叩きつけられている。

 .....めんどくせぇからパスする。



=============================



「チッ.....クセェし汚ねぇ.....」


 オレは返り血を落としながら言った。

 結局落ちなかったし、酒臭さの方が酷いが.....。

 今回はうまく倒すことができた。

 これでクエスト1個分はクリアした。 

 報酬金は大鉄貨5枚だ。これを200回繰り返せばいい。

 けど期間は四日しかないし、生活費も必要だ。

 .....大丈夫かな?


 そんなことを考えていると、


「ギャー!!」


 別のゴブリンの群れがこちらに気づき、叫んだ。

 こうやって仲間に敵の存在を知らせているらしい。

 今度は8体だ。

 剣を持った個体が四体もいる。

 一番奥には、どこかで見たことのある槍を持ったゴブリンがいる。


「ヨォ.....久しぶりじゃねぇか....クソ槍使い!」


 そいつは、前回のクエストでオレに槍を当ててきたやつだ。

 おかげさまでポーションがなくなってしまい、クエストを断念せざるをえなかった。

 だが安心しろ......今回は始めっからポーションがない。

 金がなくて補充できなかった....。

 なら、簡単な話だ。

 当たらなければいい!!


「グギャギャッ!!」


 クソ槍使いが一声かけると、ゴブリン達が一斉に向かってきた。

 

「あと199回.....しんどくなりそうだ.....」


 オレはゴブリンの目ん玉からナイフを回収して、剣を構えた.......。




*************************************




 おっさんは、おっさんじゃなかった。

 酒臭いお姉さんだった。

 銀髪で曇った青い目をしていた。


 そして、僕の頭を優しく撫でてくれた。

 気持ちよかったなぁ〜....。

 できればワンモア頼みたい。


 よくわからないけど、僕のコストを下げてくれる能力を持っているらしい。

 しかもキャパも多く持っている。

 デメリットもあるし、本人も何か嫌な思い入れがあるらしいが、僕にとっては唯一の救世主だ。

 絶望しきっていた僕に、その存在は大きすぎた。

 涙が止まらなくなってしまった。

 しかも、


「こいつに酷いことすんじゃねぇぞ!!」


 何そのセリフ.....ギャルゲーかよ.....。

 それに、それって男のセリフだよね.....おかげさまで涙腺崩壊ですよぉ......。

 .....四日後か....できればもっと早く会いに来て欲しいけど、お金のこともあるし.....仕方ないね。


 あれから、ご飯の量が少しだけ増えた......全然物足りないが....。

 ご飯がなくても、四日後までは絶対耐えてみせるけどね!


 あと、通行人にアピールするのをやめた。

 僕は『あの人』にテイムされたい。

 他の人がテイムできるとしても、僕は断ると思う。


 あの酒臭さ.....きっと生活習慣が乱れているに違いない。

 僕が絶対に規則正しい生活をさせなくちゃ!

 髪の毛もボサボサでベトベトだった。

 ちゃんと洗わせなくては!


 もっと撫でられたいなぁ〜.....抱きしめて欲しいなぁ〜......。

 ....ちゃんと来てくれるのかな?

 もし来てくれなかったとしても、僕から会いに行くけどね。

 あとは........


 その日から、僕の頭の中は『あの人』でいっぱいになった。

 相変わらず、みんなの目線はよろしくない。

 特にフリークの視線は、痛みすら感じる時がある。

 でも僕は、自分が不幸だとは思わなくなった。

 ただ待つ、それだけで『あの人』が近づいてくる気がするから.....。


 .......そういえば、『あの人』の名前ってなんだろう?

 きっと綺麗で、かっこいい名前だろう。

 うぅ〜ん....この世界の人の名前はよく分からない。

 全く予想ができない......。

 まあ、適当に推測していよう!

 僕は『あの人』の名前を予想して時間を過ごし始めた。


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