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体長15cm、異世界にて恋願う  作者: 愛♡KEMONO
シルバー・エンカウント編
3/60

03 ステータス・オープン!

 現在、僕たちは二階建てで木造の酒場の前にいる。

 看板には.......何が書いてあるかわからない。

 見たことのない字が書いてある。


「ふぅ......やっとついたぁ〜」


 少年、つまりエフォルが大きく伸びをしながらつぶやいた。

 どうやらここが目的地のようだ。

 エフォルたちは二階でも借りているのだろうか?


「じゃあ、私はお父さんにペットを飼っていいか聞いてくるね」


 ルー(少女)は僕をエフォルに渡し、駆け足で酒場の中に入っていった。

 .....お父さん?

 ん?一緒に住んでるの?

 僕が頭の中に疑問符を浮かべていると、

 

「オッケーもらえたよ!

 エフォル、中に入ってきてぇ!」


 ルーが酒場の中から声をかけてきた。

 .....仕事が早くて助かる。


「わかったぁ!...いくぞ....」


 .....なんか僕に対してのセリフが暗い。

 何だぁ?まだ対抗心でもあるのか?

 そもそも人間と動物が結ばれるわけないだろ?

 それに、お前らラブラブじゃん!!

 ....独占欲が強いタイプか?

 ルーは、苦労するなぁ....たぶん。


 まあ何にせよ、僕は少年に抱えられながら酒場に入った。


「ギュッ!?キュキュー!!」

(グエッ!?酒クセェ!!)


 僕は強烈な洗礼を受けた。

 こんなに強烈な酒の匂いは、人間だった頃も嗅いだことがない。

 匂いだけで酔いそうとはこのことだろう。


「お父さん、どう!?かわいいでしょ!?」


 ルーが僕を指さしながら、エプロン姿のおっさんに話しかけている。

 おそらくこの人がお父さんなのであろう。


「あぁ、もちろんだとも!!

 ルーは世界で一番かわいいぞぉ!!」


 そう言ってルーを抱きしめて、ほおをスリスリさせてる。

 .....わかった.....親バカだ、この人....。

 さすがにここまでくると......キモいな.....。


「違う!私じゃない!!

 ......もう、お父さんやめて!!」


 ルーが苦笑いしながら、親バカから逃げようとしている。

 .....結構本気で嫌がっている。


「何を言うか、我が愛しい娘よ!!

 父親たるもの、六時間も会えなかった娘を心配するのは当然であろう!?」


 .....そうなの?


「んん〜....しつこい!!」


 ルーが耐えられなくなり、親バカを腹パンして拘束から脱出した。

 .....あまり効果はないようだが。


「ルーよ、まだまだ腕力が足りていないぞ!!

 もっと修行に励みなさい」


 あれ?この人単なる親バカじゃなかったの?

 結構いいこと言ってる。

 僕も、ルーは冒険者にしては細身だと思っていたところだ。


「......もしくは......」


 もしくは?


「一生パパのそばにいなさい!!

 そうすればいつまでも守ってあげられる!!」


 だめだこいつ.....救いようがねぇ.....。


「.....修行頑張るね」


 ルーが冷めた笑顔でそう告げた。


「ど、どうしてだ!?そんなに頑張らなくてもパパが守っt.....」


「私はエフォルと結婚するの!!」


 酒場が一気に静まった。


「.....だから....いつでも一緒に居られるように....強く....なる....」


 ルーがそう言うと、


「ヒューヒュー!!いいねぇお嬢ちゃん!!おじさんも強くなってお嬢ちゃんと結婚するよぉ!!」

「エフォルは幸せもんだなぁ!!そんないい嫁さん候補がいてよぉ!!....俺なんて....今年で32なのに.....まだ彼女すらいねぇんだぞ!!」

「エフォルも根性見せねぇとなぁ!!そんないい子すぐに取られちゃうぞぉ!!たとえば俺とかにな!!」


 酒場の賑わいは最高潮に達した。

 挙げ句の果てに、


「テメェらごときに俺の娘はやらん!!」


 とか言って親バカが暴れ始めて、酒場は大乱闘オッサンブラザーズになった.....。

 それからしばらくおっさん達が暴れまくり、閉店の時間までまともに僕のことを切り出せる状態じゃなかった。

 まったく....迷惑な話だぜ。


 喧騒が収まった現在、閉店の看板を外に出して、丸い机で親バカ、エフォル、そしてルーが向かい合っている。

 僕は机の上にいる。


「.....ルー....それはモンスターだ.....」


 親バカがさっきとはまったく別人のような表情で言った。


「うそ....だよね、お父さん?」


 ルーが困惑した表情で聞き返した。


「いいや、本当だ。

 ルーも知っているだろうが、パパは肉屋とモンスター売りをやっている。

 だから、動物とモンスターの区別はしっかりとできる」


 親バカ以外の全員が沈黙した。


「モンスターには微量であっても魔力がある。

 ルーもエフォルも冒険者なのだから知っているね?」


 二人とも頷いた。


「動物なら、魔力を感じない。

 だけど『そいつ』からは魔力を感じる。

 しかも今まであった中でも最大級だ.......」


 親バカは僕のことを顎で指しながら言った。


「そんなぁ.....」


 ルーが悲しそうな表情をしている。

 

「.....間違いない、そいつは化け物(モンスター)だ」


 その言葉を聞いた途端、僕を見るルーの目が変わった。

 化け物を見る目だ。


 そうか.....モンスターってそういう目で見られるんだ.....。

 僕は少しだけこの世界を理解した。


 ガタッ......

 親バカが立ち上がった。

 手には(なた)を持っている。


「危なかった.....まさか....こんなに小さいモンスターがいるとは......」


 そのまま僕に近づいてきた。


「かわいい見た目で人間に取り入る奴なんて聞いたことないが、モンスターであるなら駆除しなくちゃ.....な.....」


 そしてその鉈を振り上げた。

 出口はエフォルが塞いでいる。

 僕は、自分が非力であることをもう知っている。

 .....今度こそ.....ジ・エンドかな?


 僕はそう思った。

 だが、


「待ってぇ!!」


 ルーが僕と親バカの間に割って入った。


「ルー、どきなさい。

 言ったでしょう。そいつはモンスターで、ルーを騙そうとしてたんだって」


 親バカがルーの肩をつかんで無理矢理どかそうとしている。

 けどルーは、一向にどく気配がない。


「まだこの子は何もしてないもん!!かわいそうだよ!!」


 ルーが叫んだ。


「....でもいつか悪いことをするかもしれない。

 いや、モンスターならきっとする!!」


 親バカが強い口調で言った。


「じゃあ.....私がテイムする!!」


 その一言でその場が凍りついた。


「私も『モンスターテイマー』のスキル持ってるもん.....『キャパ』は少ないけど....」


「何を言ってるんだ!?

 確かにこの程度のモンスターなら、少ない『コスト』だろうが......それでも『キャパ』を使うのはもったいない!!

 将来のために(いち)でも多く温存しておいたほうがいいに決まってる!!」


 なんだぁ!?

 人....今はモンスターか?のことをこの程度とかって言いやがって!

 しかもなんだよ!キャパとかコストとかって?

 僕の疑問を軽く無視して、親子喧嘩は続いた。


「エフォル、いますぐ『水晶』持ってきて!!

 一階の倉庫にあるから!!」


「あ、ああ!わかった!」


 エフォルが出て行った。


「ちょ!?エフォル!行かなくていいんだぞ!」


 親バカがエフォルを止めようとしたが、すでにエフォルは部屋から出ていたため、聞こえなかったようだ。


「水晶でこの子の能力を見てから、テイムする。

 .....絶対にこの子は殺させない!!」


 ルーがいつになく強い口調で言った。

 やめて!僕のために争わないで!!

 .....どうやら、なんとか助かりそうだ。

 代償としてテイムされるそうだが、この際生き残れればどうでもいい。

 .....今度からルー様とお呼びしよう。


「持ってきたよ!!」


 エフォルが戻ってきた。

 手には丸くて濁った水晶を持っている。

 そして、それをルー様に献上した。


「.....まったく....後悔しても知らないぞ.....」


 親バカが諦めたような表情をしている。

 けど、どこか嬉しそうだ。


「う〜んと.....確か.....『スキャン』」


 ルー様がそうおっしゃると、僕と水晶の周りに魔法陣らしきものが現れ、激しく発光した。


「キュー!!」

(まぶしい!!)


 僕の目へのダメージはお構いなしに光は強くなっていき、急に発光が止んだ。

 すると、水晶に文字が書かれていた。

 .....もちろん読めないが。


「えぇ〜と.....お父さん.....これなんて読むの?」


 ルー様もお読みになれないらしい。

 この世界での識字率は高くないのかな?


「こういうときのために、ちゃんと文字の勉強しておきなさいって言ったでしょう.....」


 勉強不足かぁ....ルー様はお勉強がお嫌いなのですか?


「えへへぇ〜、ごめんなさい」


 ルー様がはにかみながらおっしゃった。


「かわいいから許す!!」


 親バカが言った。

 ......なんだ....お前のせいか.....。


「どれどれぇ〜.....」


 親バカが読み上げた。

 まとめると、


 名称  不明

 Lv   1

 Hp   5

 Mp  100

 攻撃  3

 防御  4

 素早さ 19

 魔力  5


 スキル なし

 

 こんな感じになった。

 なんかMpだけ高い。


「おっと、忘れてた。

 テイムコストは.......39!?」


 テイムコストが39らしい....すごいの、それ?

 みんなの顔を見回すと、ルー様は絶望されていて、エフォルと親バカは腹を抱えて笑っていた。


「あはははっ!!なんだそいつ!!

 こんな弱っちいぃ能力のくせにコストが39!?

 あっはっはっは!!冗談にしてもおもしろすぎる!!」


 エフォルは僕を馬鹿にしてきた。

 こいつ......あとで報復する!!

 ......今はちょっと勝てそうにないから、あとでな!!


「うそ......どうして.....」


 ルー様がその場でへたり込みなさった。

 

 何?なんかやばいの?


「もうしょうがないから、こいつは店で売ることにするが......いいな、ルー?」


 えぇ!?テイムしてくれないの!?

 しかも店で売られちゃうの!?

 ルー様、助けてください!!


「.....うん.....」


 ルー様がお頷きになった。


「キュウゥゥゥッッ!!!」

(ルウゥゥゥッッッ!!!)


 僕は精一杯叫んだ.....が、ルー様はお目々すらお合わせになってくれなかった。


 こうして僕は、身売り中のモンスターになった。


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