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体長15cm、異世界にて恋願う  作者: 愛♡KEMONO
シルバー・エンカウント編
2/60

02 緑の巨人

「.......キュゥ.....キュキュウッキュー!!」

(.......うぅぅ...バラバラはいやだぁあッ!!)


 僕はとんでもない悪夢から目覚めた。

 自分の体がバラバラになっていき、最終的には消滅する.....。

 怖かったぁ〜.....。


 .....そういえばさっき、自分の声がおかしかった気がするが.....気のせいだろう。


 僕がそう思い立って周りを見回すと、そこにはめちゃくちゃ高い木々が生えている森だった。

 超でかい!どれもこれもが木登りに数時間はかかるような大きさだ。

 しかも葉っぱもでかい!

 僕の顔と同じくらいの大きさがあるんじゃないか?

 そう思って、地面に落ちてる葉っぱに手を伸ばすと.....モコモコした手が僕の視界に入ってきた。


「キュゥ?」

(なにこれ?)


 しかも自分の喉から、自分の声じゃない声が出た。

 やっぱり声変わってる!!


「キュッ!?キュー!!キュキュゥ!!」

(なにこれ!?すごい!!言葉が全く喋れない!!)


 すごいじゃねえよ!どうすんだよこれから?

 僕は冷静になった。

 えぇ〜と.....銀と金の尻尾が生えていて、全身薄い金色の毛が生えていて、喋れるのは『キュー』だけ.....。

 バラバラにはならなかったようだけど.......まさか人間以外に転生するなんて......。


 そんなことを考えていると、近くの木についている樹液に自分の顔が映った。

 .....ツノの生えた子狐だ。

 一言で言い表すならそうなるだろう。

 少し付け足すと、目の色は金色で、ツノは毛に埋もれてほとんど見えない。

 そして......超かわいい!!今すぐ抱きしめたい!!

 いや、待てよ....これは自分だ....ならば!!


 う〜ん、かわいいよぉ〜僕ぅ〜。えへへぇ〜嬉しいよぉ〜僕ぅ〜。


 僕は自分の体を(もてあそ)んだ。

 はたから見ると、自分の体を撫で回しながら、体をクネクネさせている生き物だ。

 結構キモい.....特に表情が。


 カサカサ......

 ふいにそんな音が聞こえた。

 近くの茂みからだ。

 茂みとは言っても僕の背丈よりも高いのだが。


「キュ、キュゥ?」

(な、なに?)


 カサカサ......カサカサ......

 僕は身構えた。

 蛇でもなんでもかかってこい!!

 .....できればモンスターはやめてください.....。


 すると、茂みの中から緑の巨人が現れた。

 

「キュゥウッ!?」

(はぁあッ!?)


 全身に傷を負い、巨大な鋼鉄の剣を持ち、布一枚を体にまとった巨人だ。

 僕の身長の4倍はある。

 そしてそんな化け物が僕のことを見下ろしている。


 ラスボス級のモンスターの登場で僕の頭はフリーズした。

 それ故、次に僕のとった行動は、

 

「ギュギュゥ!?キュキュキューウ!!」

(あ゛ぁん!?やんのかゴラァ!!)


 相手を挑発する行動だったのだ.....。

 なんでこんなことしたのかは、自分でもわからない....。


 .....ボリボリ.....

 僕の必死の強がりに対して、巨人は尻をかいて返事した。


 ブッコロォス!!

 僕は巨人との距離を詰めた。

 きっとこんなかわいい見た目でも、戦闘能力はあるだろうと楽観視したのだ。

 足元にたどり着き、両足を踏ん張った。

 次に片足を少し浮かせ、一回転しながら全体重を浮かせた足にかけ、相手にぶつける......つまり、回し蹴りをしたのだ。

 強力な風圧を纏わせた回し蹴り(個人的感想)は、巨人の足に吸い込まれるようにして直撃した。

 そして、


「キュッキュウウウゥゥゥッッ!!!」

(イッタアアアァァイッッ!!!)


『僕』の悲鳴がこだました。

 .....硬かったんや.....まるで鉄のような硬さやったんや.....。

 そして、僕が骨が折れたんじゃないかと本気で心配しながらうずくまっていると、巨人につまみ上げられた。


「キュキュ!!キュキュウゥゥ!!」

(おいこら!!放せぇ〜!!)


 僕は手足をバタバタさせながら抵抗したが、巨人の手から抜け出すことができなかった。

 巨人は僕を顔の前の高さまで持ち上げて、じっくりと観察し始めた。

 でっかい牙が付いていて、息が臭い.....。

 だから僕は、


「キュキュキュウ!!キュッ!!」

(息クセェんだよ!!ペッ!!)


 巨人の顔に唾を飛ばしたやった。ザマァねぇぜ!!

 すると、


「.....ペッ」


 巨人も僕に唾を飛ばしてきた。

 それはとてもとても


「キュキュウゥゥゥウ!!」

(クサアアアァァァイ!!)


 臭かった。

 あれだ、あれ.....ゲロの臭いだ!!

 テメェ歯磨き毎日してんのか!?

 クッソ!顔全体ベトベトしてるぅ......。

 このやろぉ!!ぶん殴ってやる!!

 だからもう少し顔を近づけろ!! 

 ......いやいや、口を開けて近づけてこないでぇ!!

 お願い食べないで!!さっきの悪口とり消すからぁ!!


 巨人が僕に今にも噛みつきそうになっている時、


「おっ!!ゴブリンみ〜っけ!!」


 ものすごい高い位置から、人の声らしきものが聞こえた。

 僕は恐る恐る上を見上げると.......またしても巨人がいた。

 今度は肌色で、しっかりとした服を着ている。

 人間だね。

 .....どうやら巨人がでかいんじゃなくて、僕が小さいらしい.....。

 だって今、緑の巨人のことを『ゴブリン』って呼んでたもん.....。

 

 人間が近づくと、ゴブリンは僕をぽいっと捨てて逃げていった。

 地面にぶつかって痛いんですけど.....慰謝料もらえますか?


「くっそ!!逃げんなぁ!!」


 その人間は少年だった。

 少年は僕の目の前で、地団駄を踏んでいる。

 足を地面に打ち付けるたびに、ドゴォンドゴォンって強烈な地震が発生している。


「エフォルが大声出すからだよぉ〜」


 そう言ってまた人間(巨人)が現れた。

 今度はビック少女だ。


「うるさいなぁ〜。俺の威圧で逃げたんだよ!」


「そんなことないよ。だってまだエフォルは子供だし」


 確かに少年はまだ子供だ。

 ....おそらく.....中学生ぐらいかな?


「子供扱いすんな!そんなこと言うならお前だって子供だろ!」


「いいや、私はエフォルよりも大人ですぅ!」


「たった1歳分だろ!!」


「「....ふんっ!!」」


 ....なんかイチャイチャしてるぅ....。

 僕はそんなことを考えながら、その光景を眺めていると、少年が僕に気づいた。


「うわっ!!まだモンスターいるじゃん!!

 こいつを倒せばレベルアップできるかなぁ?」


 少年が僕に剣を向けてきた。


「キュキュー!!キュキュッキュー!!」

(やめてぇ!!僕は敵じゃないよぉ!!)


 僕は必死に、自分が無害であることを伝えようとした。

 .....まあ、人間の言葉じゃないから通じないだろうけどね。


「やめてよ!!かわいそうじゃない!

 こんな可愛い子がモンスターなわけないでしょ!!」


 少女が大声を出した。


「キュキュー!!」

(そうだそうだ!!)


 僕も一応、応援した。


「で、でもよぉ〜......」


 少年が納得できてなさそうな表情をしている。


「んん〜!!じゃあ、そこで見てて!

 .....おいでぇ〜。怖くないよぉ〜」


 少女が手招きしている。


「キュー!!」

(わーい!!)


 僕は少女のもとに駆け寄った。

 敵じゃないことを示すいいチャンスだ。


「わぁ〜!なにこの子!

 すっごくモコモコしてて可愛いぃ〜!!」


 少女が僕を抱き寄せ、撫でてきた。

 少年が不服そうな表情をしてたので、


 ヘッ!!悔しいかぁ〜?悔しいんでしゅかぁ〜?


 という感情を精一杯顔に出して見せつけた。


「ルー.....そのモンスター....なんかおかしいぞ」


「この子はモンスターじゃない!!

 ......ねぇ〜?」


「キュ〜」

(ねぇ〜)


 僕は満面の笑みで少女に同意した。

 少年が悔しそうな表情をしている。

 ケッケッケ....ざまあねぇぜ!!

 この俺様に剣を向けた罰を思い知るんだなぁ!!

 僕はこの時、最高にゲスい表情をしていたが、そのことはこの少年(エフォル)にしかわからなかった。

 

「.....やっぱり変だよぉ…..早く離れなよぉ.....」


「もう、エフォルしつこい!!」


 あ〜あ、怒らせてやんの〜。

 女の子を怒らせるなんてひどいやつだなぁ、少年よ。


「....なんだよ!!せっかく心配してやってんのに!!」


「....へっ!?心配?.....エフィルが、私を?」


 少女の顔が赤くなった。

 なん.....だと!?

 今のでそんな表情になるの!?

 なんだ?チャームの魔法でも使ったのか、少年よ!?

 

「......あ、当たり前だろ......お、幼馴染だしな.....」


 少年も顔を赤くしてる。

 うぅ....なんかムカムカする.....。


「....そ、そう......ありがと.....」


 少女がそう言ってさらに顔が真っ赤になった。

 もう見てらんない!!


「キュキュー、キュー!!」

(爆発しちまえよ、お前ら!!)


 ちくしょう.....自分の名前すら覚えてないのに、彼女がいないことだけは覚えてる.....。

 世界は理不尽だぁあ!!


「お腹減ったの?

 ....ねえ、エフォル.....この子『私たちの』部屋に連れてかない?」


 あ゛あ!?

 そのセリフってまさかとは思うが、同棲とかじゃないよなぁ!?

 夜にくんずほぐれつなんてしてないよなぁ!?

 ....あと、お腹は減ってる....飯くれ!!


「ああ、確かにおいてくのはかわいそうだし.....。

 連れて行こう、『俺たちの』部屋に」


 なんだテメェ!?

『俺たちの』の部分だけ強調してたよね!?

 見せつけてくれんじゃねぇか!!

 もう黙ってらんねぇ!!


「キュキュッキュー!!」

(彼女をかけて勝負じゃオラァ!!)


「.....わかったよ」


 おう!?わかったのか?

 ちなみに勝負の内容はじゃんけんな!


「飯がくいてぇんだろ?」


「キュキュー!!」

(ちがぁうッ!!)


 いや.....飯は欲しいけどさぁ!!


「エフィルすごい!!

 この子の言いたいこと分かるの?」


「へっ!俺様にとっては朝飯前だよ!」


「.....かっこいい」


 なんだこいつら!?

 ただ単に、僕を話題にしてイチャイチャしているようにしか見えない.....。


「行こうか.....『俺たちの』家に.....」


「.....はい....」


 結婚しろよ、お前ら!!

 結婚式に僕を呼んだら、ずっと席に座ってお経読んでてやるからなぁ!!

 なむあんだ〜な〜まんだ〜な〜むぅぅぅ….みたいな?

 ....できればみんなの衣装をスク水にしてくれるとありがたい。


 僕が(よこしま)なことを考えている間に、二人は歩き出した。

 ....ひとまず、この森から連れ出してくれるだけで良しとしよう。

 

 こうして僕は少女に抱かれながら『少年(少女)の』家に連れて行ってもらうことになった。



 ......これから起きることを知らずに。


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