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体長15cm、異世界にて恋願う  作者: 愛♡KEMONO
スモール・ギフト編
17/60

06 銀の姫君

「おっと.....こいつは......斬りごたえのありそうな奴が来たな......」


 おん....ゾンビですか。

 スケルトンがいるならゾンビもいるよね.......ってそんなことより!


「キュキュゥ!!」

(クセェ!!)


「あんまりこいつの息を吸うなよ.....身体が腐るぞ.....」


「キュゥ......キュ?キュゥ!?」

(へぇ......ん?えぇ!?)


「ゾンビはCランクモンスターだ。

 スケルトンよりも長い時間をかけて魔力が染み込んで、動くようになった死体.....みたいな感じのモンスターだ」


 ベルが解説してきた。

 仮にもベルも冒険者だ。

 多少のモンスターの知識は持っているらしい。

 その調子で、掛け算割り算くらいは覚えて欲しいけどね......。


「こいつの息は変な魔力が混じってて......何か毒らしい....だから、絶対吸うなよ」


 自分の袖の一部を剣で切り取って、僕の顔に巻きつけてマスクのようにしてきた。

 ベルはバックから布(布団)を取り出し、それを自分のマスクにした.....ちょっとでかいけど。


「ガァア.......グゥアァァ......」


 変な声をあげながら、ゾンビは僕たちに近づいてきた。


「うっわ.....奥にまだ二体いるぞ.....」


 ベルがそう言って少し経つと、二体のゾンビが洞窟の陰から見えてきた。


「キュー.....先手を取る.....しっかりつかまってろ.....」


「キュー」


 静かに返事をした。

 僕の返事を聞いた瞬間、7メートルの距離をわずか数歩で接近し、ゾンビの顔に剣を叩きつけた。

 グシャア......骨とか肉が潰れた音が聞こえてきた。

 肉片がそこら辺に飛び散ってるし......グロいっす!


「よし!」


 オレの欲しかった感触だ.....やっぱりこうでなくっちゃな!

 ゾンビは頭がなくなると、何もできない肉片になる。

 オレは勢いをそのままに奥の二体に接近した。

 剣を持った個体がオレに剣を振り下ろした。

 一瞬だけ剣を受け止め、勢いを殺さないように受け流した。

 腹下に潜り込み、カウンターでゾンビの胸を剣で真っ二つにした.......と思ったが、

 パキィィン!!

 音とともに周辺にキラキラ光る破片が飛び散った.......ん?は?へ!?

 け、剣が.....


「お、折れタァ!!」

「キュキュゥ!!」

(折れタァ!!)


 オレたちが叫んでいる間に、ゾンビが体勢を立て直し、オレに拳を突きつけてきた。

 それを手をクロスして防ぎ、急いで距離をとった。

 オレの腕から何かが焼けるような音が聞こえてくる。

 ゾンビの体は高い魔力で満ちている。

 それに触ったら、もちろんその影響を受ける。


「キュー!!」

(ベル!!)


「心配ねぇよ.....ほとんど服の音だ」


 手をブンブン振って大丈夫だって伝えた。

 実際問題ない。


「キュゥ......」


 安心してくれたようだ。

 問題なのは、ゾンビは素手では倒せない上に、手持ちにはナイフしかない。

 ナイフは明らかに攻撃力不足だ。


「キュー.....クエスト達成だ......帰るぞ......」


 オレはそうつ告げた。

 実際、クエストは達成している。

『スケルトンを入り口周辺のものを中心に掃討する』

 これがクエスト内容だ。

 これは『信用クエスト』と呼ばれていて、ギルドが受注者の達成報告を聞いた瞬間、その報告を信用して報酬を渡すってことになっている。

 まあ、失敗していても報告すれば報酬はもらえるが、嘘がバレればギルドの信用を失う。

 オレたちが今いるのは、入り口から結構奥に進んだところだ。

 つまり、今回はちゃんとクリアしているわけで、何も心配することはない。


「キュー!!」


 キューが元気に返事した。

 ここから早く離れたいって顔している。

 .....ゾンビの匂いはクセェよなぁ.....オレもそう思う。

 

 それからオレ達はダンジョンを抜けて、街に戻った。

 ゾンビから逃げるだけなら問題ない。

 130もの素早さがあれば、たいていのモンスターから逃げられる。

 ゾンビなんて止まって見えた。



************************



「.......ということがあった」


 オレはギルマスに報告した。


「そうか.....それは災難だったな.....。

 どちらにしても、クエストは達成だ。

 有力な情報ももらったことだし、今回は報酬を多めにしておこう」


「.....気がきくな.....ところで相談なんだが......」


「ん?なんだ?........他に何か気になることでもあったのか?」


「いや、ダンジョンは他に大したことはなかったぞ」


「じゃあ.......ああ、昨日言ってた件か」


「ああ、そうだ........その......キューにプレゼントをしてやりてぇんだけどよぅ.......その.......何をあげたらいいかわかんなくて.......」


「なるほどね......いつになくまともな相談じゃないか」


「う、うるせぇ......」


「いつもはやれ金を貸せ、やれ剣を買ってくれみたいな感じだったからな」


「そんなことはいいから早く教えろ!」

 

「……いいかい?プレゼントっていうのは中身も大事だけど、それよりももっと大事なものがある」


「.......それはなんだ?」


「誰がプレゼントをするかが何よりも大事なんだよ」


「つまり......オレ?」


「そうだね......で、キュー君は君のことが大好きだ。

 つまり、キュー君は君からのプレゼント’’が’’欲しいって思ってるはずだ」


「........ん?それで結局何をあげればいいんだ?」


「だから、君からのプレゼントならなんでも喜ぶってことだよ」


「いや、だから!オレは其れ相応の物を用意したいって.....」


 ギルマスが手で言葉を遮ってっきた。


「確かに君の言いたいことはよくわかる。

 俺が言いたいのは、君を意識させるプレゼントが一番ってことだ」


「オレを意識させる?」


「大好きな人からのプレゼントならなんでも喜ぶ人がいたとしよう。

 その人が欲しいもの.....つまり大好きなものは何か?

 答えは簡単。プレゼントをくれる愛しいあの人......ここではベル君だ。

 だからこそ、君らしい....君を意識させるようなプレゼントがいい.......ということだよ」


 オレはポカーンと口を開けて聞いてることしかできなかった。


「まあ.....頑張りたまえ」


 ギルマスはにっこりと微笑んだ後、ギルドの二階に戻って行ってしまった。

 オレが口を開けていた理由......それは......


「わっけわかんねぇよ!!!」


 さっき言っていたことが何一つわからなかったからだ。

 なんだよ!!オレを意識させるもの?意味がわかんねぇよ!!


「ンガァァア!!」


 オレは頭をかきむしった。

 最初と何にも変わってねぇじゃねぇか!!

 結局自分で考えろってことだろ?

 ギルマスめぇ……適当に綺麗な言葉ばっかり並べやがってぇ!!

 もっと簡単に言えってんだよ!!


 オレは怒りながらもギルマスから与えられた仕事を全て終わらせた。

 今日はちょっとだけギルドが閉まる時間よりも早く仕事が終わった。

 だから、キューの仕事っぷりを少し観察することにした。

 

 キューは基本的に受け付けのカウンターの上で受け付けに来た冒険者に「キュー!」って挨拶しているだけだ。

 時々撫でられて......幸せそうな顔をしてやがる。

 .......後でキューを撫でた野郎は闇討ちしてやることにする。

 

 ん?そういえば.......キューって『あれ』がなくないか?

 ......なかなか良くないか?

 そうだ!『あれ』をプレゼントにしよう!


 その後ギルマスに頼んで仕事を抜け出し、ある店に向かった。

 店で色々と注文したあと、ギルドに戻ってキューを受け取っていつもの草原に寝っ転がった。


 キューがものすごく興味深げな視線を送ってきたが、


「もう寝ろ」


 一言言って眠った。

 不満げに頬を膨らませたキューの顔は.....すごく可愛かった。



*****************************



「イチ.....ニー.....サン.....っておい!休むんじゃねぇよ」


 次の日の朝、オレは算数の勉強......ではなく、キューのトレーニングを監督している。


「キュキュー!!キュキュ!!」

(もう疲れた!!もうやだ!!)


「.....まだ百回もやってねぇんだぞ?休憩には早すぎないか?」


「キュキュキュ!!キュキュキュー!!」

(53回だよ!!腹筋53回!!)


 それを休憩なしにやらせるのはひどくない?

 こうなったら、奥の手を使うしかあるまいな.........。


「キュゥゥ........」


愛くるしい目つき(キュート・テロリスト)

 僕の用いる最高の破壊力(可愛さ)を持つ技だ!

 相手を下から見上げつつ、首を30度くらいかしげる。

 尻尾を若干そわそわさせてあざとさアップ!!

 どうだ!?この可愛さにはなす術もあるまい?


「......そんなことやってないで、早く腹筋しろ」


「ギュギュッ!?」

(グベッ!?)


 ベルが僕の最強戦術をあっさりと無視してチョップをかましてきた。

 頭がヒリヒリする。

 んんん〜!!!


「キュキュ!!キュ!!キュ!!キュゥ......キュキュ!!」

(ベルの鬼!!バカ!!アホ!!この......うんこ!!)


 グニィ......

 ほっぺの両端を引っ張られた。

 ま、まさか言ってることがわかるっていうのか!?


「......なんかよくわかないけど.....ひとまずイラついた」


「キュキュゥ!!キュ!!キュゥ!!」

(放せぇ!!この!!このぉ!!)


 ジタバタ.....ジタバタ......ゼェ.....ハァ.....ゼェ.....ハァ......

 だめだ.....もう.....疲れた......。

 .....ん!?このかき氷の食べ過ぎに近い感覚は!!


「キュ!!キュキュッキュキュ!!」

(ベル!!レベルアップしたよ!!)


「......どうやら来たみたいだな......よし、今度はどんな力だ?」


 ナイフを適当に振ってみた。

 .....変化なし。

 ジャンプしてみた。

 .....変化なし。

 オレには変化がないのか.......んん〜!?


「おい、キュー........まさか......」


 キューの毛並みが......ピッカピカになっている。

 輝いて見えるほどに、きれいに整えられているのだ。


「......毛をきれいにする能力......じゃないよな?」


「キュー♡」

(正解♡)


「あぁ.....クッソ!全然使えねぇじゃねぇか!!」


「キュッキュキューキュ!!キュキュキューキュキュ、キューキュキュキュッキュ!!」

(めっちゃ便利だよ!!手から適度に水分を出せるし、なんかいい香りもするし!!)


「何言ってんのかわっかんねぇ........。

 はぁ......次は武器何にするかなぁ.....」


 オレはキューの熱い演説(?)を無視して壊れちまった剣の後釜について考え始めた。

 今度は剣以外にしてみるか?

 一応槍とか使えるしなぁ......。


「キュキュキューキュ、キュキュー!!キュキュキュキュ!!」

(そこまで言うなら、見せてあげるよ!!僕の新しい力を!!)


 僕はベルの頭に飛びかかった。

 

「お、おい!何するんだ!?」


 キューが髪の毛をワッシャワッシャしてきた。

 すごく気持ちいい.......ツボが程よく押されて力が........抜け.....る.....。


ー数分後ー


「キュゥ.....キュキュキュ!」

(フゥ.....いい仕事した!)


 いかに僕の能力がすごかろうと、ベルのお酒でベトベトの髪は手強かった。

 ものすごい反発してくる上に、触れただけで僕までベトベロになってしまうからだ。

 さぁて.....どんな感じに......って、えぇえ!?ダレェエ!?

 僕は、さっきまでベルのいたところを見た。

 だけどそこには......全く別人がいた。

 銀髪のサラサラの前髪が、目にかかるくらいまで伸びている。

 青い目が髪で少し隠れていて、どことなくおとなしそうな性格に見える。

 どこかの国の姫と言われれば、納得してしまいそうな見た目だ。

 最低でも血の付いた剣を振り回し、酒に溺れるベル様には見えない。


「おい......なんか言えよ......」


 確かにベルの声だ。

 でも、それすらいつもと違うように感じる。


「キュ、キュキュー......」

(か、かわいい......)


「…….ほめ言葉と受け取っておくぞ.......ありがとな」


 やばい、恥ずかしい。

 こんな可愛い子なのに、言葉使いが荒いとか.....萌えますな!!


「満足だろ?もう髪は直すぞ.....」


「キュッキュ!!」

(待って!!)


 僕は必死にベルの手にしがみついた。


「キュキューキュ!!」

(オシャレしよう!!)


 その後、なんだかんだあり、僕とベルは街をぶらつくことに決めた。

 お金がないから、ベルの服を買うことはしない方向に決まったが、僕はベルに対する人の反応を楽しめればそれでいいのだ。



================================


 

「おい......あれ見ろって!ヤベェ美人がいる!」

「うわぁ!まじかよ!どっかの国の来賓か?」

「肩に変な生き物乗せてるしなぁ......」

「その割には.....護衛もいないしなぁ......」

「冒険者の服着てるけど.....最近流行ってたっけ?」


 ヒソヒソ.....ヒソヒソ......

 ふっふっふ......聞いて驚け!このお方こそ、僕のご主人様だ!すごいだろう?

 ちなみに、今のベルは、前髪を少し左右に分けている。

 さすがに前が見えない状態で出歩くのは危険だからね。


「おい、キュー.....やっぱり帰ろうゼ......」


「キュキュッ!!」

(ダメッ!!)


 僕はベルの首元に抱きついた。

 まだこの優越感に浸っていたい。


「まったく......オレは、お前が何がしたいんだかわからないよ......」


 ズサッ!!

 突然、わざとらしく靴を鳴らしながら、一人の男が立ち塞がってきた。

 細身で背はベルと同じくらいで、年もベルと近いと思う。

 茶髪で、服と似た色の青目をしていて、なかなかにイケメンだ。

 金色の刺繍の入った青い服を着ていて、いかにも貴族ですぅって感じを醸し出している。


「そこの女性!!少し話を聞いてくれないか!!」


 大声で叫んできた。

 ベルはまるでゴミでも見るような目でその男を見た後、


「.....なんだよ......」


 面倒くさそうに返事をした。


「その白銀の髪、岩のような口調......気に入った!!」


「オレはお前が気に入らねぇ......」


 .......うん.....『岩のような口調』は褒め言葉に入らないよね。

 そんなこと言う奴は気に入らねぇよね。


「ぜひ!!この私と、男女交際をしてくれないか!!」


「アァン?そんなの嫌に決まって......」


 ......あれ?止まった?どうゆうこと?


「......飯をおごってくれんなら.....考えてやってもいいゼ」


「キュッキュウ!?」

(ファッヒュン!?)


「そうか.......ありがとう!!美味しいご飯をおごるよ!」


「キュ!?キュキュ!?キュキュキューキュキュ!!」

(ベル!?どういうこと!?僕というものがありながら!!)


「.....よろしくな」


 あぁ......わかった.....。

 ベルは、この男に貢がせようとしているんだ......。

 だって、目に『金』って書いてあるもん。

 おごってくれることがわかった途端、口が笑ったもん......。

 えぇカモみっけたった的な雰囲気出してるもん。


「そういえば名乗っていませんでしたね。

 私の名前はクィルリン・ネディルカです。クィルと呼んでください」


「オレは......ベルだ」


 ん?なんか間があったような気がするけど.....気のせいかな?


「じゃあ、ベルさん!改めてよろしくお願いするよ」


「ああ、よろしく.....」

 

 その後、ベルはクィルに服を買ってもらって、一度別れて夜に再び集合することになった。

 ベルは昼飯も奢って欲しそうなオーラを全身から放っていたが、返事をした後別れた。


 約束の時間まで剣がないから配達クエストをして時間を潰した。

 街の路地裏の障害物を華麗に回避しながらの超アクロバティックな配達は、ジェットコースターみたいで楽しかった。

 まあ、間の時間は楽しかったといえば楽しかったが.......少し....いや、結構不満に思っていることもあるのだ。

 突然ですが、タイトルを変更しました!

 理由はなんとなく.......です。

 今後もこんな感じに勝手にタイトルを変更を変更することがあるかもしれませんが、作者のモチベーションのために御了承して頂けだけると、とても助かります。


 ここまで読んでくれて本当に有難うございます!

 そして、読み続けてくださるとスーパー嬉しいです!

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