04 雑用係
キュー
種族 不明
Lv 2
Hp 6
Mp 1000
攻撃 4
防御 5
素早さ 20
魔力 5
テイムコスト 39(13)
スキル 名称不明
レベルが上がっているが、それよりも気になることがある。
「おう....初めて見た.....名称不明スキル.....」
おとぎ話で、伝説の英雄とかが持っていたとかって話は聞いたことがある。
でも、知ってるのは噂だけだ。
能力値は.....ん?
「おい.....Mp上がりすぎじゃねぇか?」
いきなり100から1000に上がるのはやばいって次元を超えている。
「あぁ.....たぶんですけど、キューちゃんのMpは元から、100を超えていたんだと思います」
「え?....いやでも、水晶には100って書かれてたぞ?」
「安い水晶では、計測できるステータスの上限が低いんです。
だから、キューちゃんは最初から1000ぐらいのMpがあったのでないかと思います」
「.....そうか」
「....キュゥ.....」
なぜかキューが浮かない顔している。
「どうした?スゲェじゃねぇか.....Mp1000なんて伝説の大賢者様ですら到達してないぞ?」
キューが力をためて、手から何か出す仕草をした。
「.....魔法が使えないってことか?」
「キュゥ......」
人間は杖とかの道具があれば、スキルがなくとも魔法を撃つこともできる。
けど、その道具はモンスター用にはできていない。
モンスターはいくら魔力があっても、自分で魔法を撃てない限り意味がないというわけだ。
「大丈夫だ....きっとそのうち撃てるようになる....。
それまではオレが守ってやるから安心しろ......な?」
なでなで.....
キューの頭を撫でてやった。
「キュゥ.....」
スリスリ......
指にほおをスリスリしてきた........ほお柔らかい.....そして、かわいい。
「あのぉ.....そろそろベルさんもステータス計ってくれませんか?
.....後ろ詰まってますよ.......」
「あ、すまん.....」
オレは後ろに謝りながら、水晶に魔力を込めた。
ベル
純人類
Lv 24
Hp 103
Mp 35
攻撃 112
防御 111
素早さ 137
魔力 21
キャパシティ 2
スキル 剣技(小)、体術(小)、スタミナ上昇(小)、名称不明
テイムモンスター 名称不明
固有スキル 幻獣テイマー
「はあ!?どうなってんだ!?」
能力値がすごいことになってる。
「.......故障ですかね?いや、でも.....これまだ数回しか使ってないし......」
「キュッキュウ!」
キューがどことなく偉そうな態度を取ってきた。
『えっへん!』って感じだ。
「......名称不明ってスキルがあるし......やっぱり、キューの力か.....」
「いやいや、そんなすんなり納得しないでくださいよぉ......。
能力値がほぼ2倍になるスキル......そんなものがあったら、キューちゃん争奪戦が始まるレベルですよ.....」
「いや、でもあるし.....それに、オーク狩りの時は2倍なんてもんじゃなかった.....」
「マジですか......はぁ.....こういうよく分からないものってギルマス好きそうですよね?」
「呼んだ?」
オレの後ろに、ギルマスがいきなり現れた。
「ゲッ!ギルマスだ!」
「何が’’ゲッ’’なのかな、借金野郎?」
背筋がぞわってした。
「きょ、今日は金揃えてきたからよぉ.....そんな顔すんなよ、な?」
「やっとか.....で?返金が遅れた分の利子は?」
「テメェ!利子なんて聞いてねぇぞ!」
「前に言ったじゃないか、高くつくって.....」
「ん?言ってたか?なんか言ってた気がする.......」
「そういうことだ。というわけで、今日からベル君は冒険者ギルドの雑用係に再び就任だ。おめでとう!!」
「おめでとうございます、雑用係さん!」
「テメェら....。
チッ......でも、仕方ねぇか.....。
だけどよ.....キューはその間何していればいいんだ?」
「キュー!!」
オレの顔に抱きついてきた。
「.....ベルと一緒に雑用係になりたい......そういうことでいいのかい、キュー君?」
「キュー!!」
キューが頷いた。
それって......オレの側を離れたくないってことか?
「..........」
なでなで.......
オレは無言でキューの頭を撫でてやった.......なんか.....急にそうしたくなった。
頭を少し強めに撫でたのだが、やっぱり嬉しそうな顔をする........すごくかわいい.....。
「.....そうか。じゃあ、キュー君もおめでとう!君も雑用係就任だ!」
「キュー!!」
「キュー君には給料をやろう。
ベル君とは違って君には何の罰もないからね」
「はぁ!?キューだけずりぃぞ!!」
「ベル君......君は自分のやったことを理解しているのかい?
もし、理解してないなら.....フフフフフ......」
ものすごく意味深な笑みを浮かべている。
オレのやったこと?
キューが死にそうな時にギルマスから金を借りて、よくわかんないけど借金になって.......なんだっけ?
「わ、わかったよ......」
よくわかんないけど、わかったって言っておく。
わざわざギルマスの説教なんか聞いてるほど暇じゃねぇんでな.....。
「キュー、初めての自分のお金だ......ちゃんと使うんだぞ.....」
そういえば、キューは一体何にお金を使うんだ?
........ちょっと気になる。
どっちにしてもキューの金を取るなんてことはしねぇ。
「キュー!!」
ぎゅっとしてきた。
「まったく.....キューには勝てねぇな.....」
「キュ?」
オレも意味はわからない。
ただ自然とそう言ってみたくなっただけだ。
「では、最初の仕事だ。
ベル君はギルドの掃除をしてくれ。
キュー君は受付の見張りだ.....つまり、マスコットだ」
「おいぃ!ちょっと待て!!
なんだ?キューは座ってるだけで金がもらえて、オレは......」
にっこり.......
あ.....いい笑顔........。
「.....わかったよ.....わかりましたよ!」
「わかってくれたようだね。
もちろん、汚れを残したらやり直しだからね」
「クソッ!この鬼畜野郎め!」
「はっはっは!なんとでも言うといい!
だけど、言えば言うほど君の仕事が増えていくことを......お忘れ無く♪」
「......掃除行ってきます.....ギルドマスター....」
こいつ本当に面倒クセェ!そして、本当にウゼェ顔してやがる!!
「よろしい!」
「キュッキュー!」
キューが応援してくれた。
キューはギルマスとは違って天使みたいに見える.....。
「ああ、せいぜい頑張るよ......」
キューのために頑張ろう........そう思うと体が軽くなった気がした。
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「はぁ.....超疲れた.....」
トイレ、倉庫、廊下、階段......ギルドは掃除する場所が多すぎる。
これだからここの雑用は嫌いなんだ.......一応今日の分は終わったけどな。
「キュキュ!」
(お疲れ!)
ポフポフ......
僕は尻尾をベルのほおにポフポフしてあげた.......さぞ気持ちいいことでしょう。
「あぁ.....お前もお疲れ」
キューも頑張っていた。
みんなの前で変な踊りとかやったりしているのが見えた。
正直、キューを見世物にするのは嫌だったが.....キューが嫌がってないなら、まあいいだろう。
「やあ、キュー君のおかげで今日は大盛況だったよ。
あ、’’ついでに’’ベル君もお疲れ」
「おい、何がついでだオラァ!!.....ちょっと今からツラ貸せ!.....裏で喧嘩しようや!」
「あっはっは.....面白い。
その代わり、雑用期間を1ヶ月延ばす.....これで手を打とう」
「......お疲れ様です.....ギルドマスター.....」
オレは(引きつった)笑顔でギルマスを労った。
雑用期間は、今’’は’’一週間となっている。
これ以上伸ばされたら、たまったもんじゃない。
「いやぁ....キュー君のおかげで大きな喧嘩も起きなかったし、みんな楽しんでくれたようだ....。
そこらへんを加味して、はいどうぞ」
キューに銅貨3枚を渡してきた。
「な!?いくら何でも多すぎだろ!」
「キュー君.....それは君のお金だ。
ベル君のことなんか忘れて、自分のために使いなさい」
「......無視かよ.....」
「キュ!」
受け取ったはいいけど、僕は特に欲しいものはないなぁ.....。
それならベルにあげようと思って、ベルのほっぺに銅貨を押し付けてみた。
ベルに使って欲しい......やっぱりそれ以外思いつかないよ。
「おい....それはお前の金だ。
さすがに受け取るわけにはいかねぇよ」
やっぱりそうくるかぁ.....なら!
「キュキュキューキュ!」
(ご飯一緒に食べよう!)
そう思ってまたスリスリィ.....ご飯が食べたいんですアピールをしてみた。
「いや、だから......それはお前の自由に使っていいって.....」
伝わらなかったか.......そりゃそうだよね。
僕は次の手段として、食器を指差した.....これなら大丈夫だよね?
「.....飯がくいてぇのか?」
「キュー!」
「リーシャ、まだ飯って作れるか?」
「もう調理の人は帰っちゃいましたが......仕方ありません!私が作ってあげます!」
「あぁ.....ついでにオレのも頼む」
「はい!’’ついでに’’作ってあげます!
何を作って欲しいですか?」
「キュー、何が食いたい?」
空中に『肉』って書いた。
「.....なんでもいいから肉を持ってきてくれ....で、いいよな?」
「キュー!」
「ベルさんお酒はどうします?」
「.....今日はいらねぇ.....」
オレがそう言った瞬間、リーシャは手に持っていたトレイを地面に落とした。
「な、な、なぁ!?」
そして呼吸が荒くなった。
表情は何か恐ろしいものを見ているような感じだ。
「リーシャ、いますぐ医者を呼びなさい。
.....不吉だ.....もしかしたら、とんでもない災害が来るかもしれない!」
ギルマスまで悪乗りしてきやがった。
「テメェら.....オレをなんだと思ってる!?」
「「.....ベル(意味深)」」
その言い方は何て言うか.......今までのオレの行動をすべて再検討して出た言葉......のようだった。
「.....そうか.....なら仕方ねぇな.....」
オレはおとなしくオレが’’ベル’’であることを認めた。
「今回はちょっと事情があってな......また少し金がいるんだ」
「キュゥ?」
「.....完全に決まったわけじゃねぇんだ....。
だから....その.....まだ内緒だ.....」
「うっわー....これ絶対酒に使う気だ......いったいいくらの酒なんですか?」
「.....ギルマス.....リーシャを殴っていいか?」
「.....あぁ....確かにリーシャは最近調子に乗りすぎている....。
ほどほどなら構わん!やってしまえ!」
「はぁ!?ちょっとギルマスさぁん!!何言ってんですか!?」
「というわけだ.....表に行こうか、リーシャ?」
「.....ご飯作ってきます!!」
厨房に逃げていった。
殴れなかったのは残念だが、飯を作ってくれるなら許してやってもいい。
「あぁ.....ほら、代金はこれでいいだろ?」
オレは代金として銅貨一枚を払おうとした。
「キュー!」
スッ.....僕はベルがお金を渡す前にギルマスの手の上に乗り移った。
そして銅貨三枚を手の上に置いた。
「......まったく.....君はベル君と違って、よくできた子だよ.....」
なでなで.....
「キュゥ.....」
僕は気持ちよさそうに鳴いた。
ギルマスもなかなか撫で上手だ。
「おい、キューはオレのもんだ。返せ!」
ベルが僕のことを少し乱暴に取り返した。
そしてぎゅっと抱きしめてくれた。
「困った飼い主だね、君は.....。
まあ、今回の食費は奢ってあげよう。
キュー君に触れることができたんだ.....そのぐらいいいだろう」
「たりめぇだ!キューに触っていいのは本来オレだけだ」
「キュゥ......」
スリスリ......なでなで......
僕はベルの手のほおスリスリして、ベルは僕の頭を撫でた。
「しっかりキュー君を大切にするんだよ」
「わかってる.....そこで相談があるんだが......後でちょっといいか?」
「ん?ああ、別に構わないが.....ここじゃダメなのか?」
「......ここじゃあ......ダメだ」
キューの頭を撫でながら言った。
「......なるほど。
明日の雑用中の時間に少し時間を空けておく」
「ああ......助かる」
「キュゥ?」
僕が疑問の目を向けると、少し微笑むだけで、何も教えてくれる気は無さそうだ。
今日のベルは少し秘密が多い。
でも、何か......いい予感がする。
「できましたよぉ!特製『パンデミック・ギガンテミス』!!」
たくさん肉を焼いて、野菜の上に適当に乗っけたものだ。
「お前のネーミングセンスはどうにかなんねぇのか?」
「え?まさにピッタリって感じじゃないですか?」
「.....まあ、旨けりゃ気にしねぇが......」
そう言って肉を一口食うと.......それは肉だった。
「どうです?」
「.....うまい」
「キューちゃんは......めっちゃがっついてますね」
パクパク.....パクパク.....
「おぉ......キューがこんなに食べてるところ.....初めて見たぞ」
「それは君が豆しかあげないからだろ......」
「キュゥキュキュゥキュ!!」
(そうだそうだ!!)
「ん?豆最高だろ?.....酒の味がよく思い出せる」
「「.......はぁ....」」
「.......キュゥ....」
二人と一匹は、同時に深いため息をした。
「キュー君.....これを持って行きなさい」
イッツァ、干し⭐︎肉!!
「キュー!!」
喜びのあまり、手に飛び乗り、手のひらにスリスリしてしまった。
「キュー君は本当にかわいいな....。
そうだ!ベルのモンスターになんかならないで、俺のところに来ないか?」
「テ、テメェ!?何言ってやがる!?」
「毎日三食おやつ付き、寝床も室内のソファを使わせてあげよう!
あと、毎日お湯を使った水詫びも提供する。
仕事内容は今日と同じだ........どうだい?」
「なんてうらやまs.....いや、ダメだぞ!キュー.........お前何幸せそうな顔してんだ!?」
「キュゥ、キュゥ、キュゥゥ、キュキュゥ......」
(ご飯、おやつ、ソファ、お湯の水浴び......)
キューは魅了されている!
「ダ、ダメだ!......この悪魔め!キューは渡さん!!」
ベルが僕をぎゅっと抱きしめてきた。
少し強すぎだが、気持ちいい。
「キュゥ......」
ベルの方を向いて、胸にスリスリ.....ほどよくやわらかい。
「キュー.....こいつのとこなんか....いかねぇよな」
ベルが少し弱々しく聞いてきた。
表情も不安げだ。
「キュー!!」
(もちのろん!!)
「キュー......よしよし.......」
いつもより優しい。
大満足の撫で方だ。
「あの.....せっかく作ったんですから.....早く食べてくれませんか?」
「.....悪りぃ....」
「キュー」
オレとキューは一言謝った後、黙々と料理を食べた。
その後礼を言い、ギルドを後にした。