03 プレゼント
ブクマ感謝です!
「キュッ......キュキュッ......キュゥ......」
「おい.....そんなに泣くなよ......」
オークのクエストの帰り道......もう街の中に入ってるからすぐギルドに着くって時、キューは泣いていた。
「キュ.....キュキュキューキュキュ!?キュ!キュキュキュッキュ!!」
(尻尾が.....尻尾が傷ついたんだよ!?ほら!ここの毛がなくなってる!!)
「いや、そんな見せつけられても......あんまり変わってないぞ?」
「キュキュキュ!!キュ!!」
(ベルのバカ!!アホ!!)
ポコスカポコスカ......
「八つ当たりすんなよ.......。
.....そうだ、これをやるよ.....」
細い革の素材だ。
オレのポーチの一部の取れちゃった部分だ。
つまり.......ゴミ?
「キュ....キュキュ?」
(プレ....ゼント?)
「ほら.....だから泣きやめよ.....」
あぁ.....これ余計泣き出す感じか?
「キュキュ.....キュキュ、キュ!」
(嬉しい.....嬉しいよ、ベル!)
スリスリ......ギュッ.....スリスリィ......
僕はその変な皮を撫でたり、抱きしめたり、ほっぺスリスリしたりした。
ベルからの初めてのプレゼント......なんかよくわかんないけど嬉しい!
「.....あ、あんまり喜ぶなよ......逆に悪い気分になっちまう.....」
スリスリィ......
キューは一向に辞める気配がない。
こんなのでここまで喜ぶのか?
じゃあ、こいつにはこれからもゴミを渡せば.....って!!ダメだろ、そんなの!!
「あぁ!やっぱりこれはあげねぇ!返せ!」
「キュ、キュ!?キュキュゥ!キュキュッキュ!!」
(な、なに!?やめてぇ!これは僕の物!!)
「意外と強情だな......なら!」
こちょこちょこちょ......
お腹のあたりをこちょこちょしてやった。
「キュキュキュキュキュ!!キュキュィ!!」
(アキャキャキャキャ!!ヤメレィ!!)
僕が笑ってる間にプレゼントは取り上げられてしまった。
どうして?.....嬉しかったのに.....。
「キュ....キュ.....キュッ.....」
(うっ....うっ.....うっ.....)
「お、おい.....やめろよ....泣くんじゃねぇぞ!」
やばい....やばいって!!
こんな所で泣かれたら、
「ギュギュゥゥウウゥゥウ!!!ギュギュギュギュゥゥゥゥウウ!!」
(うわぁぁああぁぁん!!!ベルがいじめるぅぅぅぅうう!!)
めちゃくちゃ目立っちまうじゃねぇか!!
案の定、周りの人たちが振り向き始めた。
「ひどいねぇ....あんな可愛い子をいじめるなんて.....」
「あれって『ゴブリンブラッド』じゃね?うわぁ....あんなひどいやつなんだぁ.....幻滅だわぁ」
「キューちゃん.....かわいそう......」
しかも悪口言われてる!!
「キュゥゥゥウウ!!キュゥゥウウウウ!!」
「おいおい!マジで勘弁してくれよ!....チッ!仕方ねぇ!」
ひとまずキューの口をふさいだ。
「ンギュゥゥウウウウ!!」
なんか苦しそうだし、つばが手についたが.......気にしない。
そしてそのまま路地裏に逃げこんだ。
============================
「キュゥ......キュキュキュ....キュ....キュ.....」
(うぅぅ......ベルのバカ....アホ....クソ.....)
「.....ふぅ....やっと泣き止んだな......」
でも、
「.....キュッ!」
(.....ふんっ!)
すごく怒っていらっしゃる......。
「おいおい....オレはただプレゼントがこんなもんじゃ......なんか嫌だなぁって思っただけだぞ.....」
皮クズ(プレゼント)をぶらぶらしながら言った。
「キュキュ!キュ!キュキュ!」
(ちょうだい!それ!ちょうだい!)
僕はぴょんぴょん跳ねて皮を取り返そうとした......届かなかったけど.....。
「.....まったく....しょうがねぇな.....ほら」
何言ってもダメそうだったから、渡してやった。
「キュー!!」
スリスリィ........
キューは超うれしそうにゴミ....いや、皮クズで遊んでいる。
はぁ......プレゼント....か....。
まだよくわかんねぇが、キューはオレに力をくれた。
なのにオレは、何もしてあげられてねぇ....。
その上、飯もまともなものをあげてねぇ。
....なんでこいつは、こんなに嬉しそうなんだよ.....。
もし、オレが良いプレゼントをしたら......キューはもっと喜んでくれんのか?
なでなで.....
「キュー?」
オレが頭を撫でてやると、指にスリスリしてきた........可愛い。
今.....キューの喜ぶ顔が思い浮かんだ。
プレゼントを用意するのも......悪くないかもな.....。
わかったよ.....スッゲーのを用意してやるよ!!
「キュー.....早くギルドに行くぞ.....」
今のところこいつには内緒だ。
びっくりさせてやる。
「キュー!!」
元気よく返事をして、ご主人様の手に乗った。
.....ご主人様がなぜかおっかない顔で僕を見てくる。
ニヤァ....みたいな感じだ。
とうとう僕を食べる気なのかな?
......ま、まさかね?
ちょっと恐怖を感じながらも、すぐにギルドに着くことができた。
そしてベルはドアを開け、
「よう....帰ったぞ」
オレはリーシャに挨拶した。
夕方だからギルドは混んでいる。
「あ!早いお帰りですね!」
リーシャが元気に返事してきた。
早く帰れたのは、クエストの帰り道を走ったからだ。
キューの力は凄かった。
バヒューンって感じだった。
とは言っても、もう夕方にはなってしまったのが。
「あぁ.....これが証拠だ」
オークの右耳x11をカウンターの上に置いた。
「えっ!?11個!?ていうか成功したんですか!?」
「ア゛ァン!?お前はオレが失敗すると思ってたのか?」
「はい。当然じゃないですか?」
「.....そ、そうなのか?」
「オーク二体組みの単身討伐は、Aランク冒険者でも難しいって言われてるんですよ?」
「.....そうなのか.....。
まあ、オレは単身討伐じゃねぇけどな......キューがいる」
そう言いながらキューの喉を撫でてやった。
気持ちよさそうだ。
「もう、見せつけてくれんじゃないですかぁ〜。
あの孤高のベルさんがここまで心を許すなんて.....キューさん、あなた中々やりますねぇ」
「キュキュゥ、キュキュキュゥ〜......」
(いやぁ、それほどでもぉ〜......)
「まあ、この可愛さなら納得です。
でも、あんまりベルさんを虜にしないでくださいよぉ。
ベルさんはうちの大切なトラブルメーカーなんですから!」
「ただの厄介者じゃねぇか.....。
それに、オレはキューの虜になんか.....」
スリスリィ......
キューがほおスリスリしてきた。
「ならな.......」
スリスリィ......
「.......チッ!」
「ベルさんがデレてる.....キューちゃん....今度その技術教えてください!!」
「キュー!!」
「ありがたき幸せ!!」
「.....何通じ合ってんだよ.....。
それより、早く報酬よこせ」
「わかりましたよぉう......ほら、もってけ泥棒!」
銅貨5枚と大鉄貨5枚だ。
「おぉ.....スゲェな.....」
まさか1日でこんなに稼げるとは......。
安酒が500杯以上飲める!!......スゲェ.....。
「ギュッ!!ギュギュー!!」
(こらっ!!酒の事を考えるんじゃない!!)
「ぷっ!キューちゃんに怒られてる!
ベルさんカッコ悪〜い!」
「うるせぇ.....ヨッ!」
ペチーン!!
すごくいい音ともにデコピンがおでこに炸裂した。
「ウギャウ!!」
リーシャが大きくのけぞった......そして、
「ど、どんだけ力入れるんですか!?今のは......デコピンの破壊力超えてましたよ!!」
おでこを赤くしながら怒ってきた。
「わ、悪りぃ......そんなに力を込めたつもりはねぇんだがな......。
あ.....キューの力のせいかもしれない.....」
「挙げ句の果てに、キューちゃんせいにするんですか!?
......最低ですよぉ〜、ベルさん」
なんか.....なんかムカつく顔でオレを見てきた。
今度はグーで顔面いっとくか?
「キュキュー」
キュー水晶を指差してる。
「.....あ、そうか。
確認しちまえばいいんだよな.....」
「水晶使うんですか?
これ.....一応有料なんですよ?」
水晶に使用量は一回鉄貨一枚。
安いが、冒険者は使う回数後多くなりがちだ。
合計すると結構な額になる。
オレは節約して酒を飲む派だ。
「あぁ.....キューとオレ、一回ずつ頼む」
ここでオレとキューのステータスを再紹介しておく。
オレは自分とキューのステータスは完璧に覚えている。
冒険者ならそれぐらいみんなしている。
まずはキューからだ。
名称 不明
Lv 1
Hp 5
Mp 100
攻撃 3
防御 4
素早さ 19
魔力 5
テイムコスト 39(13)
スキル なし
こんな感じだ。
オレの幻獣テイマーでコストが13に下がっている。
モンスター売りの所で計測したっきり、ステータスを確認していない。
次にオレのステータスだ。
ベル
純人類
Lv 24
Hp 57
Mp 19
攻撃 59
防御 55
素早さ 67
魔力 13
キャパシティ 2
スキル 剣技(小)、体術(小)、スタミナ上昇(小)
テイムモンスター 名称不明
固有スキル 幻獣テイマー
キューの事件で一気に上がった。
特に素早さは、そこらへんのBランクの冒険者よりも高い。
攻撃、防御、Hpもレベルの割には格別に高いらしい。
.....日頃の努力の賜物だな。
テイムモンスターとか、キューの名前が名称不明ってなってんのは、キューの種族名が水晶内の情報に適合できないとかって言う理由らしい.....さすが幻獣だ。
「キュー!」
キューがオレの肩から降り、水晶の方へ向かっていった。
そして、水晶に手をかざし、ステータスを表示させた......もう使い方は覚えたらしい。
表示されたステータスは.......