表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして、彼らは。  作者: SINEI
序章
2/2

『炎』

気がつけば、シノは村の中心近くまで来ていた。この村の中心には、広場のようなものが設けられており、その中心には『儀式の炎』と呼ばれる炎が灯される燭台がある。燭台は特別なものではないが、村の人たちが手作りしているという話も聞いたことがあったが、シノは宗教やしきたりに興味がなく、あまり詳しくはなかった。

「そろそろか。」

シノがそう言ったとき、既に『儀式の炎』の燭台が顔を覗かせていた。通常『儀式の炎』は常に灯されている。だが、この雨のせいか、又は他の何らかの影響で消えてしまっていた。

「じーちゃん、あの炎についてなんて言ってたんだっけ…。」

シノのお爺さんは、生前は村長をやっていた。だが体調が優れなくなり、シノの父である『マクドウェル』にその義務を託した。村長がマクドウェルになり、村の方針は大きく変わった。『儀式の炎』を使った行事を、廃止にするとしたのだ。

「儀式の炎は消してしまえ!」

マクドウェルのその台詞は皆の心に強く残った。

シノのお爺さんは全力でそれを止めた。そして、マクドウェルに対し、

「あの炎は決して消してはならぬ。さもなくばこの村の未来は途絶えるだろう。」

そう言い切ったお爺さんはマクドウェルを睨みながら、シノに『儀式の炎』を守ることを命じた。『儀式の炎』が担っている役割は、シノのお爺さん以外知らなかった。そして今や、誰もそれを知らない。昔は沢山いたのだが、時代が進むにつれ、皆旅立ったり亡くなったりでその記憶は失われていった。

そんなことを考えていたシノは、自分がもう『儀式の炎』の前まで来ていたことに気が付く。

「儀式の炎、消えたらどうなるんだ…?」

純粋にシノはそう思った。あれだけシノのお爺さんが全力で守っていた炎、今は失われてしまった炎、これが今回の件に関連しているのか?そう考えるのはごく普通のことだ。そしてつい、そんな言葉が口から出てしまった。すると、どこからか『声』がした。

「知りたいか。」

それは、聞いたことのない声だった。そして、その声は耳から聞こえたのではなかった。シノは突然の出来事に驚き、警戒態勢に入る。

「そう、構えるな。」

また声が聞こえる。どうやらこちらの行動はむこうから見えているようだ。

「誰だ?」

今度はシノがそう言った。答えてくれる望みは薄かったが、今のシノに出来る最善の行動だった。

「ふうむ、炎が消えているな。お前が消したのか?」

案の定こちらの質問には耳を傾けられなかったが、対話はできそうだった。

「違う、気付いたら消えていたんだ。」

シノは周囲に気を配りながら言った。

「ほう、なるほど。そして探しても無駄だぞ。」

謎の声ははっきりと答える。

「俺はお前たちが代々祀ってきた…神、とでも言っておこうか。」

謎の声はいくつか前の質問に答えた。

「神?どういう事だ?」

シノは困惑した。自分は今、神と対話しているのか、そう自問した。

「少し違うな、半分正解と言ったところだ。」

そう、謎の声が答える。

「!?」

シノは驚いた。考えたことがそのまま相手に伝わっていた。信じられないと思ったが、それは紛れもない事実だった。

「質問していいか?」

ここまで驚きっぱなしのシノも冷静を取り戻し、また、質問を試みる。

「何だ、言ってみろ。」

よし、答えてくれそうだ。シノはそのまま、一番の疑問点をぶつけた。

「あんたはさっき、半分正解と言った。どういう事だ?」

シノはさっき半分否定されたことが気になって仕方がなかった。答えは出なくとも、ヒントくらいは聞きたいものだ。

「ふむ。俺はもとは神だったが、今はもう神ではなくなったのだ。話せば長いが…簡単に言うと、悪行を犯し、地に落とされたってとこだ。言うところの『堕天使』ってやつ?」

今度はラグも無くすんなり答えた。だがシノは、もう一つ疑問を感じていた。

「じゃあなんであんたはこの村で祀られていたんだ?」

そう、この堕天使は永きにわたって、この村で祀られてきた。炎について何かヒントを得られる希望なのだ。

「正しくは崇めていた、ってとこだな。俺はお前たちの村を守っていた。そして対価として、炎を灯していたんだ。」

またわからないことが増えた。対価として炎?意味がわからない。だがいよいよ村に更なる異変が起きていることに気付く。そこには、二つの赤い光があった。その光は、ゆらりゆらりと揺れながらこちらに近付いてくる。その存在にシノが気付いたときには、



もう遅かったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ