2話
二人でしばらく目を閉じて昼寝をしてみる。生温い風が辺りを漂うだけで快適でも何でもないのだが、校舎に戻っても休日だというのに訓練だの何だのとしょっぱい理由でサンドバッグにされるだけなので、現実逃避するのには十分過ぎる環境だ。
「なぁ、お前将来の夢とかないのか?」
隣で悠々と寝転んでいるそいつは唐突にそんな質問を投げかけてくる。少しだけ頭を捻るが特に何を思いつくわけでもなく、俺は返答せずに小指を立てた。
「うん? ……あぁ恋人か。さてはお前夜逃げでもする気か? 何しろこの近辺にもはや若い女の子なんてひとりもいないからなぁ」
最初は200人ほどこの軍校に集められた筈なのだが、いつの間にか数名ほどになっていた。教員は不定期に戦場に駆り出され、度々学校は無人になる。そんな状況での逃走は難しい訳も無く、情勢が悪くなるにつれてほとんどの人間がそれぞれの故郷に帰っていった。帰る場所があるのかないのか、俺達が残っている理由はそれだけだった。
「ここにいれば最低限の生活はできる……色恋沙汰には無縁だが。あと生活物資も枯渇しかけているが。それでも俺だって年相応に可愛い女の子と愛を育んだりしてみたいんだよ!」
そんな悲痛な叫びが虚しく響き渡る。隣で聞いていた奴は腹を抱えているが、俺は叫ばずにはいられなかった。
そんな他愛も無い話をしているといつの間にか陽は真っ赤に染まり、夕焼けが綺麗に瞳に映る。
「そろそろ戻るか」
重い腰を持ち上げながらそう呟いて、二人で寮までの道を歩く。