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災いのもと  作者: 真城夷澄
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電子メール

 強大なる力を前に、人類は抗うことすらままならないのか。

 人よ。争いによって何が生まれるのか再び考え、決断するがよい。

 最後の時を、どう過ごすのかをな。


 ※ ※ ※


 人というのはとても弱い生き物で、群れていなければ寂しくてたまらないのだと思います。

 仮に、最後の時が来たとき。

 人はどのような行動をとるのでしょうか。

 恐らく、一人孤独に死ぬことを避けようと、周囲にいる方々と共に過ごすのではないかと思います。

 私の場合、その時になってしまわない限り何とも言えないのですが……。

 あなたはどうでしょう。

 人類絶滅が迫りくる中、何をして過ごすのか。

 また、誰と共に最後を迎えたいのか。

 今一度、よく考えてみてください。


 あなた自身が、最後の時をどのようにして迎えたいのかを。

  電子メール 一通目


 おーい。

 このメールが君たちに届いた頃、君たちは何をしているのかな?

 平日の昼間だし、君たちの多くは、きっと勉学や業務に勤しんでいる頃なんだよね。

 なにも、皮肉で言ったわけじゃないよ。

 もちろん、すぐに開いてくれた君たちには『拡散』っていうお仕事が待ってるだろうからさ。

 ああ、これもまた皮肉に入ってしまうんだろうね、たぶん。難しいな。

 ……何が言いたいのかって?

 そうそう。それが本題だよね。

 うう、参ったな。

 それがね……僕、謝りたくてさ。

 いままでのこととか、これからのこととか。

 君たちのこととか、この星のこととか。

 たくさんあるんだ。

 君たちにしてあげたかったことの全部が、出来ないのかもしれない。

 本当に、心から申し訳なく思ってる。

 確定したわけではないのだけれど、少し不安になってね。

 突然でごめん。

 今回、伝えたかったことはこれだけだよ。

 本当に、本当に、ごめんなさい。

 ……うん? 誰なのかって?

 名乗り遅れてごめん。

 でも、何て言ったらいいのか分からなくて。

 ……名前なんて呼べるものは、僕にはないからさ。

 君たちになら、好きに呼んでもらっても構わないよ。

 ……うん。ありがとう。いい響きだね。

 ごめんね。少し急いでて。

 じゃあ、今日はこの辺で。

 またね。


※ ※ ※


  電子メール 二通目


 また会ったね。久しぶり。

 あの頃も同じ時間帯だったよね。

 午後一時くらいだったはず。

 二十年ぶりくらいになるのかな。

 あの時、小学生だった君たちの内の何人が僕のことを覚えていてくれたのか、少し興味があるんだ。

 まさか、忘れたなんて言わないよね?

 ……その顔。絶対に忘れてるでしょ。

 ああ、大丈夫。怒ってなんかいないよ。

 ただ、このことが、僕には寂しく感じられて。

 突然やってきて、ネガティブな雰囲気をつくってごめんね。

 ……じゃあ、この前僕が話したこと、覚えてないことになるのかな?

 今は落ち着いているし、少しだけなら君たちと話せるかも。

 前回話したことは、お得意のインターネットで調べるといいよ。

 君たちは本当に便利なものをつくったよね。

 頭の代わりになるものなんて、僕なんかでは到底思いつかない代物だ。

 僕の声が、そのデータベースにしっかりと残ってるはずだから。安心してもらって構わない。

 それで、今回の話なんだけど……。

 君たち、何でそんなにいがみ合っているのかな?

 同じ人間同士、仲良くやっていくべきだと僕は思うんだ。

 別に、仲直りすることを強要しているわけではないよ。

 単純に、その行動が不思議で仕方がないのさ。

 お互いに不利益なことばかりで、見ているこっちも不愉快になるよ。

 この不愉快さも、決して憤りとかではなくて。

 心の器が、悲しみによって冷えてしまっただけなんだけど。

 ともかく、争いは止めた方がいい。

 当事者だけにとどまらず、外部にも被害が出てしまう前に。

 これからは、みんなで仲良く過ごすんだ。

 ……でないと、後々後悔することになる。

 暗い話で、本当にごめんね。

 君たちの全員が悪いわけじゃないのは僕もわかってるから。

 じゃあ、また。

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