075 幕間[#4]
担当:四葩
「もう行ってしまいますのね」
早朝逸る気持ちが抑えきれず皆を叩き起こし船に乗り込もうとしたあたしに聞き慣れない口調の聞き覚えのある声音が投げかけられる。
振り向けば黄色のドレスを着たロートとその斜め後ろに侍っているクレズがいた。
視線に気が付いたのか綺麗なお辞儀をしてくれる。
そういう仕草といい、口調といい…本物の王女さまだったのね
「うん。欲しかったものは手に入ったしね。石、ありがとう」
「はい。今度は盗まれないでくださいね」
呪石が入った袋を掲げながらお礼をしたら
コロコロを笑いながら盗人本人から忠告された。
「はいはい。それじゃあもう行くわ」
寝付けなかったぶん寝不足だけど次で兄様に会えんだ、気分は高揚としている
「張り切ってるな。お陰で寝不足なんだが」
紅茶を啜る仕草が若干億劫そうにしてルイが愚痴る。
「悪かったわね…気持ちが逸っちゃって。少し寝てきたらどう…シナが言うには夕暮れぐらいに着くらしいし」
「あー、寝る前に次の国のこと聞こうとおもってな。アンジェ行ったことあるんだろ」
「ええ、昔ね。国名はレグリスタリア…王族のいない国よ」
「へぇ、じゃ誰が治めてるんだ」
「確か12年に一度儀式かなんかが行われて選ばれるのよ」
「12年とは…なかなか長いですねぇ」
ルイとの会話にするりと入り込んだのはヤオだった。手にはティーカップがある。
「そうよね。不慮の事故や病気で亡くなったらどうするのかしら」
シナも言いながらやって来てあたしの前に湯気がたつティーカップを置いた。
となりにエルが座る。全員が揃ったみたいだ
「まぁその時はもう一度儀式するんじゃないかしら…今まで一度もないらしいけど……」
だからきっと、今でもあの人が治めてるんだろうな
「ん、あの人って」
あれ、口に出てたか
「昔その国に行ったのはシスター…あたしの育ての親みたいなの人の友人が選ばれたからお祝いに行っていたの」
シスターとおんなじ柔らかく笑う人だったなぁ
彼女は孤児院での悲劇は知っているのだろうか
「ふーん。なら次の国は入国に手間取らなそうだな」
「そうね」
会話の後各々が自由に過ごし、気がつけば陽が西へ傾いていた。
水面が赤を反射させキラキラを揺らめいている
「もうすぐで国が見えると思うわ」
「シナ…」
あたしに並び立ち水平線を眺め出した
「綺麗ね…夕日も海も…とても美しい」
「そうね」
「……ねぇアンジェ…貴女は石を求める理由を話してくれなかったわね。いえ…きっとこの後だって話してはくれないのでしょうね」
シナの方を見ても視線が交わらない
シナは水平線を見たまま横顔を晒していた。
「でも、それでいいと思っているの。どんな理由であれ貴女はわたしを救った、その事実さえあれば……だからアンジェ、そんな顔しなくていいわ」
会話が始まってからシナをみていたあたしの姿が彼女の瞳に映る、罪悪感で薄暗い顔が
呪石を集めていた理由は兄様を生き返らせるためだ
それはどんなことをしてでも叶えたい願いだ
けれどあたしは知っているのだ
ルイにだってヤオにだって、エルにだって生き返らせたい人がいるんだってこと
シナはきっと、あの人だろう…彼女の師匠
願いは一つしか叶わないかもしれない
他人に教えてリスクを高めるのは出来ない
優先すべきは兄様だから
けれど、あたしは…
「だからアンジェ、そんな顔しなくていいのよ」
あたしの頬にシナの手が触れ海風に晒されていたそこにじんわりとした温もりが移る。
「わたしは救われた恩返しに貴女に付いていってるの…貴女の好きなようにしなさい」
「えぇ…そうするわ」
「さぁ国が見えてきたわ…行きましょう」
シナの言うとおり海だけしか見えなかったところに陸地が見えてきた。
あの国で全てが終わる
ついに来ました最後の国です!
あともう少しお付き合いください!




