056 壊門
担当:四葩
「さて、行きましょうか」
月明かりの薬の域から爆弾たる鉢をゴンドラに運びあたし達も乗り込んだ。
ここにはいないニタは王宮で上の連中を黙らせる準備中な筈だ
「今までで一番静かで楽に終わりそうね」
「どの国でもクーデターには代わりないがな」
ポツリと呟いたシナの言葉をルイが茶化す。
そういえば確かにどの国でもクーデターの手伝いをさせられてる気がする
立場的に大丈夫なのかしら……背後には気を付けないと
「ゴンドラが複数あればもっと効率がいいのですが……生憎こちらだけでして」
「でもあたし達じゃ操縦出来ないし結局皆で行ってたわよ」
申し訳なさそうにしていたヤオに気にしないでと言外に伝えると微笑まれた。
それから淡々と門に着いては鉢を設置する作業が続いた
「鉢は見張ってなくていいの?」
シナに質問に応えたのはヤオで
「基本的に夜は家の外に出ないので大丈夫ですよ」
「ふーん夜遊びも出来ないのか」
「まぁそうですね……娯楽は少ない方だと思います。他国を知らないので問題にはなりませんけどね」
ルイの言葉にも律儀に応え終始和やかにゴンドラが進む。
本当に和やか過ぎてクーデターをしている気がしない
「ふぅ…これで全部ね」
最後となる軍の域前の門に鉢を設置し終え任務完了だ。この域でさえ誰もいないってまがぬけてる
空が段々と白んできた…朝がくる
「じゃぁ港まで行きましょうか」
「そうね、ちょっと早いけど大丈夫でしょ」
そう応えればゴンドラが旋回する。
呪石の情報をもらえればこの国に用はない
爆破の前に出れれば一番無難だけど……時間的に無理そうね
「アーサーってどんな奴なんだ?」
ルイの質問に唯一本人を知っているヤオが思案する。
「そうですねぇ美丈夫というのがしっくりくるかと、あの方は……なんでしょうね、圧倒的な風格が漂っているんですけど少年の無垢さが多く残っている感じですね」
矛盾してるわね……なんだかその人
と思っているのはあたしだけではなかったようで
「矛盾してる……」
「はは……会えば分かりますよ」
エルの言葉に苦笑いをしてヤオが話を切る。アーサーってどんな人物なのかしら
「何者だ!」
港にはブシュリカの船が何隻も止まっていて圧巻され、
呆然としていれば先ほどと異なり見張りに見つかった。
「ニア・ジウアロの使者の者です。アーサー氏にお目通りを」
「畏まりました。どうぞ上がってくださいませ」
下っぱにも情報が回っていたのか難なく甲板へ上がれる。
「はじめまして、ニアさんから伺ってるよ。ブシュリカのアーサーだ。おや……ヤオさん貴方までいるとは……久しぶりだね」
甲板には金髪碧眼の美丈夫が爽やかに微笑んでいた。
「久しぶりですね。アーサー殿。こちらアンジェさん方です」
「はじめましてアンジェと申します。呪石について教えていただきに参りました」
ヤオの紹介に続き挨拶しつつ目的を伝える。
頷きが見えるにニタの根回しは完璧らしい。本当に閉じこめられてるのかしら。アクティブ過ぎる
「畏まらなくてもいいよ。……赤い呪石のことだね。あれはここから北へ行った所にある国のロートという少女が持ち主だ。……これが国までの地図、良かったら使ってくれ」
「ありがとう」
手渡された地図はこの国から目的地への最短ルートで書かれている
良いものを貰ったわね
「それじゃぁ早いとここの国を出ましょうか」
乗ってきた船に戻ろうとしたその時
ドドーン、ドン
「あぁ始まったね……出ていくのは後の方が良い。甲板で自由にしていてくれ」
「ありがとう。そうさせてもらうわ」
アーサーはそういうと船の内部に入っていった。
「しかし静かね……もうちょっと騒ぎになると思ってたのだけど」
「確かにね。これなら出ても大丈夫だったかもしれないわね」
のんびりと甲板から王宮の方を眺めながらシナと話す。もう出ていっても良いかしらね
「もう出ても大丈夫だよ。ニタの宣誓が始まるみたいだから実質クーデターは成功だしね」
甲板へと出てきたアーサーが言う
「宣誓って何を言うのかしらね」
「興味があるなら聴くかい?」
無線を手に訊いてくる。準備がいい
「お言葉に甘えて。門を壊した共犯として聴いていた方が良さそうだし」
『私、ニア・ジウアロは王家の代表として国を開く。これより皆は好む色を身に纏い、今まで通りに商いをし、学を高め、武を磨いていってほしい……皆で国をより良くしていこう、私はその為だけに生涯を尽くすことをここに誓う』
凛とした声音だった。彼女が国を引っ張っていくならこの国は大丈夫だろう
今までずっと国を憂いていた彼女が尽くすと誓ったのだから
「打算で手伝ったけど、あたし手伝って良かったわ」
あたしが言うと四人も頷く。ヤオの目がちょっと潤んでるのは見なかったことにしてあげた
「さてと、行きましょうか。次の国へ」
あたしの目的までもう少し
次回は幕間です。2週間後を予定。




