004 入国
「そこで何をしている」
その声を聞き振り返ったあたしの目に映ったのは……
「あれ?いない?」
広がる青い海だった。
先程の台詞はルイスのものだ。
人の声だと思ったのだが、人の姿は見当たらない。辺りを見渡す。
「なんだったの……?」
「おいお前ら。どこ見てんだ」
また声がした。前方からだが声のみ。姿はない。
「……。」
魔法か何かで、姿を隠しているのだろうか?
「タチ悪い魔法にはかかってるが俺は魔法なんか使ってねぇ。下だ下」
「うわっっ!」
下と言われ足元を見るとそこには……
「やっと気づいたか。こんなとこに来るから意外とやれる奴なのかと思ったがそうでもなかったな」
「カエル……?」
足元には、緑色のカエルがいた。
「タチ悪い魔法にかかってるって言ったろ。もともとは人間だ。それはそうと質問に答えろ」
「あ、僕たち……」
「この世界を自分の目で見てみたい。ある国全てを見てみたい、と家から出てきまして。1番近かったのがこの国だったのでやってきたのですが」
「なるほど。訪問者か。怪しいものではなさそうだから門を開けてやるが、今のこの国は気をつけろ。よそ者にいい顔しないからな」
カエルは跳ねて、門の近くまで行った。
ついていく。
何かのボタンをぽちぽちと押したあと、警備室と書かれた部屋に行き、パソコンを操作した。
ゴゴゴ……
と音がして門が開かれる。
黒く大きな門が開いた。
「ようこそ危険な国、『アルケア・ヘレナ』へ」
「広い……」
「とりあえず宿ね」
中へ入るとそこには想像もしてなかった世界が広がっていた。
高い壁に囲まれ黒き門に閉ざされた世界。
危険な国とも呼ばれるくらいだ。殺伐としているような……そんなのを予想していたのだが。
……明るい。家の壁が明るい色をしている。
城の方へ向かって一直線に家が並んでいる。それが何列も連なっていて、端の方は城壁に沿って、他より高めに作られている。
人々は外へ出て子供たちは走り回り大人たちは仲良さげに話している。
門正面から城までの一直線は商店街のようになっていて買物客が沢山いる。
宿なんかもチラホラと見える。
店の並ぶ通りを、城に向かって歩く。
1番安い宿を見つけそこに泊まることにする。城から1番近いところが最安値だった。
荷物を部屋に置いて、外に出る。
まだ、夕飯には早い……
「ならば、そうね」
城へ向かうことにした。他国のお城、見てみたかったのよ。
ルイスも部屋から出てきたみたいだ。ついてきてるが気にせず進む。
城も大きな壁に囲まれていた。
そして大きな門。
国に入る前のとは違い少し青みがかった黒である。国王の趣味だろうか。
「お前ら……この国の者ではないな?」
門兵が声をかけてきた。
頷く。
「旅をしてまして。国王様に挨拶をしたいのですが可能ですか?」
「暫し待たれよ」
門兵が門の近くにあった扉を開け中に入っていった。
暫くして、同じ扉から先程の門兵が出てきた。
「面会を許可する。ただし今日はもう遅い為明日にしてくれとのことだ。旅の者。外の話を聞かせて欲しいと王は言っておられた。話をくれた礼としてこの国の話もしてやろう、と」
割とあっさりしてるのね。普通他国の庶民に王と会わせるかしら。まぁ、会えるならどうだっていいけど。
因みにあたしが居た国では貴族以上の地位がないと王との面会はできないわ。
建国記念日の誰でも参加出来るパーティーで会えるくらいかしらね。その日だけは庶民も王と会話できるの。唯一の機会ね。
「わかりました。明日出直します」
一礼してその場を去った。宿へ戻る。
夕飯を食べ、ベットに倒れた。
「……兄様……待っててね。必ず……」
夢の中で兄様に会えますようにと、1つ祈って眠りについた。
─翌日─
値段の割には悪くない宿で朝ごはんを済ませ、城へ向かった。
「待っていたぞ。入れ」
門が、開く。
真っ直ぐ前を見つめていると大きな城の扉の前に誰かいた。
「我が国の王。ソラ様だ。隣にいるのは王妃のカアリ様」
門兵が教えてくれる。
前に進み出て一礼をした。
「はじめまして国王様。王妃様。わたくしアンジェと申します。お目にかかれて光栄です」
「ほぉ。アンジェ、というのか。いい名だ。わたしはソラ。そしてカアリだ。さぁ歓迎しよう。わたしの部屋まで案内する」
「んふふふ。可愛い子ちゃんね……」
「あぁ、そうだな。君たちは旅をしていると聞いたが、どこから来たんだ?」
「海を挟んで隣国からです」
「海を渡ってきたのか……面白い話が聞けそうだな。楽しみにしてるよ」
王を先頭に、隣に王妃、その後ろにアンジェ、ルイス。その列を挟むように従者が何人かで長い廊下を歩く。
一室の扉の前に誰か立っていた。
「おぉ。シナ。どうしたんだ?」
「王を、お待ちしていました」
「なにか用があるのかね?今わたしは来客を…………なるほど。わかった」
シナと呼ばれた人の目を見て王が何かを察した。
「どうせだから君たちにも会わしてやろう。唯一誇れるこの国の素晴らしい点を」
─地下牢─
「すごいな……」
「広いだろう?広いだけじゃなくて人数もいるんだ。みな優秀な奴隷だよ。その中でもとっておきを見せてやろう。シナ」
シナが先頭に立って地下を歩いていく。
1番奥の広い牢の前でシナが止まった。
「──。」
シナが何かを呟いた。
牢の扉が、ひとりでに開く……。
「うちの自慢だ。エルフ。こやつは奴隷ではないんだがな。中へ入っても構わんよ」
シナが手を前に出した。
「─。」
また何かを呟く。声は小さくて聞き取れない。
「ぐっ……」
エルフが声を出した。シナがなにかしたのか……?
「安全は確保したので」
シナが小さな声で言った。
「ふふふ。君たちには教えてあげてもいいか」
自信満々。得意げに王が言う。
シナの肩に手を当て、
「彼女……シナは、呪いを扱えるんだ。このエルフの首輪には呪いのかかった石がハメられていてね。その呪いと共鳴してシナは強大な力を使えるようになった。エルフを拘束することだって出来るんだ。素晴らしいだろう?」
「……鎖呪を扱ってます」
手を少し掲げて言うので指の先をよく見てみる。
……薄らとだが、鎖が見えなくも……ない。
エルフの方を見る。
彼女の身体には無数の傷が付けられている──……
「彼女は何故ここに?」
エルフの状態……そして首輪の呪石を確認して、王に問う。
「彼女は裏切り者さ。この国の現状を自国を持ち帰ろうとしていた。内通者だったんだ。あの時シナがいてくれて助かったよ。偶然とはいえ彼女を拘束できたんだからな」
莱梛です!短い!思ったより短くなってしまった!!
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