043 学師
担当:宮居
外師がいるであろう建物の近くに降り立つ。
ある男の話を聞くためだ。
「あぁ、そいつか……そいつは学の師をやっていますよ」
少し嫌そうな顔をしながら答えてくれた。
"そいつ"呼びが気になるが、予想通りだ。
「ありがとう。助かった」
「案内致しましょうか?」
「それには及ばない。情報をくれてありがとう」
「誰でも知ってることですよ」
外に出て人目のないところで、また法術を組む。
「ん……?知った気配だな……」
後ろを振り向く。
この国では見ることの出来ない、法術と呼ばれるものを感じる。
「……あいつ、来たのか。珍しい」
男がそう呟くと、ルイとシナが現れた。
「おー。やっぱり」
「久しぶり、"ニコル兄さん"会えて良かった」
学の域に限定してしまえば、そこまで広くない国だ。場所の特定は簡単だった。
「その呼ばれ方も久々だなぁ。お前何しに来たんだ?ここには来ないって言ったじゃないか」
長身黒髪、左目を髪で隠して、右目は蒼い目をした、ニコルという男が答える。
「ちょっと用事があってね。今連れが呪石を集めててさ。協力して欲しいんだわ」
「ふーん……まぁいい。場所を移そう。あとあまり法術は使わない方がいいだろ。この国ではそんな力はないんだし」
魔法や呪術とはまた違った、法術と呼ばれる力。
これは昔、呪鎖の使えるものが、もっと便利にその力を使えるように、と、魔法のようにしたものだ。但し魔法と違って、呪鎖を扱える者にしか習得できない。
呪術を使える者でも、呪鎖が扱えないと法術は使えない。そうなっている。
「あんたが作ったのにな」
「その所為でここにいるんだろうが」
ニコルは法術を生み出した人。元はルイと同じ団体で働いていた。呪鎖の扱いも上手い。シナに負けず劣らずだ。
研究がしたいと言って抜け出して、薬に長けているこの国にやって来て、法術を生み出して、王に見つかり、この力は危険だ、とか言われてこの国から出ることを禁じられている。
それを正当化するためなのか、王が監禁等を嫌っているのか知らないが、師は国外に出ることは出来ないから、ニコルは学師なんて役職を当てられ、この国にいる。外師は国外に出られるらしいが。
薬と法術の関係は今もって不明だ。
どうやって生み出したのか教えてくれない。
「それを教えたらお前もこの国に縛られるぞ。リーダーがそれじゃ駄目だろ」
とか言って。
だけどルイには法術を教えてくれた。だから法術を使えるのはニコルとルイの2人のみ。
1度移動の法術を使って、帰ってきたことがあったのだ。
そして律儀に国に戻った。王にバレたらお前らにも迷惑かかるし、だそう。
……迷惑なんてこと、ないのにな。
「オレんちでいいよな」
「勿論。他に話すに最適な場所ある?」
というわけで歩いて移動する。
「はー。相変わらずというかなんというか?」
「王宮に出たら師として扱って貰えるが、それ以外はこんなもんよ。域を歩いていても、オレが師だって気づいてるやつはそんなにいない」
ニコルの家はあまり綺麗とは言えない、古そうな家だった。
それでいいのか……?
「まぁ、呪鎖掛けやすいしいいだろ。それにこの域の奴らは家か研究室にこもって学術に励む者ばかりだから、そんなに問題は無い」
だからこそ、ニコルが師でも問題ないというわけか。
家に入って、扉に呪鎖を掛ける。外に音が漏れないようにだ。
「じゃあ話を聞こうか」
テーブルを挟んで向かい合って椅子に座る。
お茶なんかは出ない。
「薬師が、うちの連れが集めてる呪石を持っててどうにかそれを頂けないかなと」
「あーな。あれは複雑な呪石だわ」
「やっぱり?」
「呪いいくつかかってんだろうな」
少し悲しそうな顔をして、ニコルは続ける。
昔話を、自分が法術を生み出した時、協力してくれた彼の話を。
2話連続短くてすみません。
次は過去編出来るかなと思ってます




