040 在処
担当:四葩
部屋を出てフヨンに着いて行けば赤色の装いの人が増えていく。きっと外の域の国民だろう
国民の服って域によって色の違いはあるけど、どれも淡い色合いなのねぇ
「こちらです」
フヨンが示した建物の内部は見事に赤色の人しかいなかった。
「……なるほど」
小さくひとりで得心した。色が淡いのは集団でいる時に目が痛くないようにか
「ようこそジウアロ国へ。入国目的と滞在期間を」
そう告げたのはフヨンやその他国民と同じ袖のゆったりとした服の壮年男性であった。この人が王家専属外師?
「あたしたちはとある宝石を手に入れたい。滞在期間は一月……もちろん目的の物が手に入れば即に出るわ」
「ほぅ宝石とな。陛下へのお目通りは出来ぬが、宝石ならば飾の域で事足りるでしょう」
国王への謁見についてフヨンが話してくれていたらしい。挨拶などはめんどくさいし、今は会えなくてもいいか。
「外の域以外にも出歩いていいのか」
ルイが尋ねれば肯定が返ってきた。
「地に入らなければですがね」
手形を受け取ったあたし達は、早速飾の域へとゴンドラに乗り水路を進んでいた。
「あっすみません。一度屋敷へ戻ってもいいでしょうか」
櫓の持ち手であるフヨンが思い出した事を申し訳なさそうに告げる。
「大丈夫よ。ゴンドラで待っていればいい?」
「いえ、お疲れでございましょう。招声致しますのでどうぞ屋敷へ」
「……ショウセイ?えっ待って、域には入っちゃ駄目なんでしょ」
「招声は域の者が他の者を招待することです。基本的に我が国は人の交流がないのであまり行うことはないですね」
私、初めて言いました。と頬を染めるフヨンに全員が唖然とする。
「……あの、すみません。お時間が有ればでいいので」
「いやいや、招声?してちょうだい。是非」
これってつまり、域に知り合いがいれば入れるってことでしょ……こんな抜け道があったなんて
「人の交流がないって、どうやって生活しているの?」
行先を変えたゴンドラが水路を進むなかシナが尋ねる。
確かに食事とかどうしてるのかしら
「品物専用の無人ゴンドラが定期的に来るのでそこから必要な物を買っています」
「そこまでやるのか……」
ルイがぼそりと呟く。
竜と人とか曖昧な共存でなくて完全に隔絶されていたら……なんて考えてるのかしらね……あの国はなるべくしてああなったんだと思うけど
前方に水門が見えてきた。
「どうぞ皆様、薬の域招声フヨンが申し上げます」
ゴンドラを降りたフヨンは手を組み一礼をすると袂から取り出した布から四束分を裂いた。一束ずつ縒っては何やら不思議な結びを施しあたし達に渡してきた。
「ふぅ、お待たせ致しました。皆さんゴンドラから降りても大丈夫ですよ」
最後の一束がエルに渡りゴンドラを降りることができた。
「兄上!只今戻りました」
薬草の独特の匂いが立ち籠める道のりをフヨンに連れられて向かった場所は正真正銘の御屋敷だった。
フヨンってもしかしてお嬢様的存在?だから敬語キャラなのか
「おや、遅かったですね。フヨンおかえりなさい」
伸びやかなテノールが届く。優しさと愛おしさを乗せたどこか既視感を彷彿とさせる声音だった。
「兄上また篭っていらっしゃっているのですか?以前話していたアンジェさんをお連れしました」
あぁ、ほらやっぱり。これは兄たる者が下の者に発する音だわ
「以前は愚妹を助けていただきありがとうございました」
向いに座った青年が頭を下げた。長い髪を緩く束ねた尾がしゅるりと重力に従っている。
「私、名をクーロン・ヤオと申します。以後お見知りおきを……となにか私の顔に付いていますか?エルフのお嬢さん」
フードを被ったエルが微かに震える。目の前の人物は微笑む顔を崩さない。
「付いているな、眼鏡が……役割は逆だろうけど」
ルイが言い放つと視線をルイへと移し
「えぇよくお分かりで。少々見え過ぎてしまうようになったので」
「見え過ぎてしまうのは、そのチェーンに付与されている石のせいじゃないの」
青い碧い深海を固めた石がぶら下がっている。こんなに早く見つかるなんて
お茶を汲みに席を外したフヨンは表彰したいくらいだわ
「いいえ、アンジェさん。お連れの方が言うようにこれは見えづらくするものですよ…ですから、この石はお譲りすることはできません」
きっぱりとクーロンは告げる。
「何故貴方が知っているの?石を集めていることは伝えてないじゃない」
「ですから、見え過ぎてしまうのです。この国位の範囲なら」
石を失えば、きっと狂ってしまうでしょうね
微笑んだまま朗らかな声音で彼は残酷に断定した
次回は2週間後を予定してます




