037 幕間[#2]
担当:宮居
引きつった顔でルイは言う。
「そんな、人が聞いて面白いことなんて無かったさ」
「いいから話なさいよ。あんた達に何があって、なんであの国を嫌っているのかとか、はぐらかされっぱなしでイラついてるのよ」
「と言われてもなぁ」
「何よ。そんなに話したくないの?なら、シナに聞くけど」
「……それだけは辞めてくれ。はぁ……しゃーねぇな……何が知りたい?」
「そうね……じゃあ国の成り立ちから今までを話してもらおうかしら」
「とてつもなく長いんだが」
「時間はたっぷり、あるでしょう?ところでなんで外で寝かしてるのよ」
「部屋の中よりいいかなと思ってな。仕方ない……移動するか……」
いや普通に部屋に寝かしててくれて良かったんだけど、と思いながらルイについて行く。
……なにこれ。
「な?外で良かったろ?」
"部屋"はとても狭かった。部屋というか倉庫だ。
寝るときはどうしているのだろう……?
「上は屋根貼れるようになってるから、普段はそこで寝てるんだよ」
「……誰の船よこれ」
「さーてー……国の成り立ちだっけなぁ…」
ルイは質問には答えない。答えられない理由があるのか……。そういえばシナが見当たらない。
決して大きいとは言えない船だ。どこにいるのだろう……?
「ほれ、紅茶入れたが飲むか?」
「ありがと」
アッサム茶葉のミルクティだ。甘い。
「最後に残った樹、あるだろ」
唐突にルイが話し始める。あたしは頷く。
「元々あそこは、シナの師匠である橘の住処だった。橘美月って聞いたことあるか?」
ない、と答える。あたし達とは違う名前……どこの国の人だったのだろう……
「まぁ呪術者の中では有名な人だったんだ。シナがそこを探し当てて、呪術を教わり、オレは縁あって、シナに会うことが出来た。しばらくは一緒にそこで住んでたんだ。彼女の"子供"たちと。そして月日が経って……ウルがドラゴンを連れてきた。この場所は偶然当てたらしい。彼はまぁ……魔法使いの子供だったから、何か感じたのかもな。樹の近くで倒れているのを橘が見つけて、一緒に暮らすことになった。ドラゴンが飛べるようになった頃、近くの森に生息していたドラゴン達が、オレ達にコンタクトを取ってきた。ウルが何故か彼らと話せたんだ。まぁそこから……ウルが国を作ることを提案した。ドラゴンは国を守る。人はドラゴンを殺さない。住みやすい環境を提供するって。まぁウルが主体となって上手くやっててさ。故郷の人間に協力を頼んで……彼の地元は2つに別れてて反乱が起こりそうでな。そこで片方の勢力の人間たちをあの国に連れてきたんだ。んで、ドラゴンと人間はうまく共存してた。あの国は1つの国として成り立ってた」
「ルイの故郷は?」
「もうなくなったよ。ウルの故郷にやられたんだ。シナもそう」
「あ、ごめん……」
だから、ウルのことを嫌っているの…?
「別に気にしなくていい。ウルを嫌っているのはその件もあるが……ウルが連れてきた人間のトップが、王になって、跡継ぎとかの話になった時、ウルが王にならないかって話があって、その婚約者にどうだって、あいつから持ちかけられたからだ。橘が認めた人だから、ウルのことは疑ってなかった、故郷を潰したやつだって知る前は嫌いでもなかった。だけど、橘やシナ、オレが訓練を重ねてきた場所が、国となって、その王にあいつがなるって考えて、その側に、妻として居ろって、聞いたら……お前はどう思う?」
自分に置き換えて、考えてみる。
兄様を殺された。孤児院を潰された。
その原因が、近くにいた友人だった。
「……お断りね」
短く、返す。
「とにかくオレはイラついたよ……そこからあいつを避けるようになったんだ。オレ達は森の中に隠れ家を持っていたし、国の奴らは知らなかった。オレは普段はそこで過ごしていた。シナや仲間たちと一緒に」
「……その時、橘さんは…?」
「死んだよ。ウルが国を作る頃、アルカリアを完成させて」
「なんで……?」
「彼女は呪いの力で生きてたから……アルカリアに自分の力を全て注いで、死んでった。アルカリアは橘そのものって言ってもいいくらい」
「そう……」
シナは……色々なものを、あの国で失っている…
ルイは、シナのことを大事に思っているのだろう……あたしが、兄様を思うように。
「まだ聞くのかー?」
伸びをしながらルイは言う。
「まだ全部話してもらってないじゃない。時間はあるわよ?」
「えー……聞いて面白いかよ……」
「いいからいいから。ウルは候補としてシナを選ぶことはしなかったの?」
「さぁな……シナはその話をしなかった。そもそも彼女は……うん……これは本人から聞いてくれ」
ルイがはぐらかす。こう言われてしまったらそうするしかないだろう。その時間は……まだ取れるだろうし。
「んー…まぁ色々あったが、オレはウルの誘いを断り、シナもその話はしなかったし、結局王は自分の息子を、後継者とした。その後継者がまぁ……何があったか橘に不老不死の呪いをかけさせ、父親が逝ってからやりたい放題でな……小さい子が好きだ、自分の側にはそういうのを置きたい、とか言い出して、ウルの話も聞かなくなった。その頃から、竜と人は……喧嘩をするようになった」
「喧嘩?」
竜と人とでは圧倒的に竜が強いだろうから、一方的なものになりそうだけど。
「敵対視するようになって、人は竜の力を恐れ壁を建てた。のに、同時期に人と竜との間に、子供が産まれてしまったんだ。人は恐れた。竜との子を。そしてその後の父親は彼女を取り返そうとした。で、暫くは内戦は絶えなくてな……。その間にも何故か竜人は増えていった。で、結局ウルが彼らを引き取り、壁を強固なものに作り替え、半竜人たちのコロニーを壁の側に作り、この近くには寄らないことを人たちに告げ、争いを終わらせた。半竜人たちは、ウルを信頼しきってた。彼も、半竜人だったからな。だから竜と話せたんだろう」
……ウルが、半竜人?
「彼が抱えていたドラゴンは、彼の妹だった。争いに巻き込まれて死んでったけどな。で、その代わりに、シイを可愛がってるわけだ」
「ウルの、両親は……」
「知らない。多分あの土地以外にも半竜人たちの住む、または人と竜とか生存する国があったのかもしれない。彼はそこから来たのかもしれない。詳しくは知らないし知りたくもないな……まだ話さなきゃダメか?」
「うーん……そうね……一旦整理もしたいし…これからついてくるなら、時間はまだある訳だし、今日はこのくらいでいいわ」
「んー……まぁ機会があれば、質問にも答えてやるよ。今日はもう寝るかー」
ルイが伸びをして、倉庫から出ていくので付いていく。
いつの間にか、屋根が出来ていた。
シナもいる。
「お疲れ、交代するよ」
「うん……あともうちょっと。3時間後にね」
「りょーかいー。じゃあアンジェ、おやすみ」
ルイが私の目の前に手をかざす。
強制ですか?なんなのよ全く……。
あたしの意識は暗闇に落ちていく。
「アンジェ、着いたぞ」
その声であたしは目を覚ます。
屋根は無くなっていて、空が見える。
声のした方を見ると、ルイとシナがいた。
そちらに歩み寄る。
街が見えていた。ジウアロ国に到着のようだ。
3つ目の石、見つかるといいけど。
遅くなって申し訳ない……m(*_ _)m過去編全部書いてたら長くなり過ぎるし…と迷っていたらこうなってしまった。




