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少女と呪石とほどほど人外  作者: 宮居/四葩
第2章
32/80

031 解呪

担当:宮居

「兄様が持っていたものが…どうして母様に?」

「ウルがあげたんだ。君を守護するものとして」

「実際は呪いだったみたいだけど?」

そう、それは呪いのかかった腕輪だった。

正確に言えば、呪石が装飾された腕輪。

「知っててウルは、彼女にそれを渡したんだよ」

「いつからそれは?」

「何10年も前の話しさ。誰が呪いをかけたのか、元々のものだったのか、誰が作ったかは、オレは知らない。ウルに聞いてくれ」

「どうして、呪いってわかってて……?」

母親に、渡したのか?

「ウルは半竜人だって言ったよな。君に、苦しい思いをさせたくなかったから、かな。後で聞いた話だと"死より苦しいものが、この先待ってるから"…とか」

要は、殺そうとしたわけだ。

その呪いは、そういうものでは無かったのだけれども。

呪いには種類がある。

殺すもの、苦しめるもの、姿を変えるもの。様々だ。

「呪いの種類を、ウルは知らなかった。オレかシナに1度ちゃんと見せてくれれば、わかったんだが、彼はそうしなかった」

「ウルがそれを持っていたのを知らなかったの?」

「直前までな。竜の子を身篭った彼女に、ウルが渡しているのを見た。その時が初めてだ」



沈黙ーー。



それを破ったのは、シイだった。

「兄様はボクの為に、ボクを殺そうとして……呪いに頼っちゃったんだ……?」

確かに、殺すなら、呪いなんていう不確定なものに頼らずとも方法はあった。

「まだ産まれる前だしな」

「産まれた後は…?ボクは兄様に何度も会ってるよ?色々なことを教えてくれたのは兄様だよ…?」

「可愛くて仕方なくなっちゃったんじゃないか。気づけなかったオレらもだが……1人で悩んでいたんじゃないか。真偽は知らないけど」

「かわ……っ」

シイの顔が赤くなる。単純かこの娘は。

「……ウルは、この国の未来を考えて、初めて産まれた半竜人を殺そうとして、失敗した」

シイの反応を無視してルイは話す。

「お陰でこの国はぐちゃぐちゃだ……おそらく、彼もかき乱された1人。だから、弱っていて、簡単に入られちゃったんだな」

ルイが、よく分からないことを言い切った後、



外から、大きな音が聞こえた。



「……暫くオレは向こうに戻る。どうしてもってなったら呼んでくれ。出来れば関わりたくない」

まだルイは、こちらの理解など知らず話す。

口笛を吹いた。竜の翼の音が聞こえる。

「中心街に行けば、何が起こったかわかるんじゃないか?まぁ、安易に近づけば死ぬだろうが。あぁ、アンジェ、これ」

ルイがなにかを投げる。石のような形をした何か。

「彼らの会話だ。聞けばわかるさ」

録音を頼んだやつだ。

これは、魔法か?

「再生を命じれば再生される。じゃあ後は頼んだ」

やって来た竜の背に乗って、ルイは飛んでいった。

「……何が起こっている……?」

「とりあえず、中心街の様子が見れるような場所へ……」

エルが言う。シイは走り出していた。

付いていくことにする。

走りながら再生する。

4人の会話だ。殺気やなんかも感じられる。

その場にいるような感覚だ。


あいつら、何者なんだ……?


シイの足が止まる。

と同時に、コーネリアの仕上がるという台詞。

ウルの苦しむ声。

「アンジェ!」

遠くから、聞きなれた声が響く。

「どうしてこんなところに」

シナだった。

「シイまで連れてきたの?」

彼女の口調は刺々しい。

「あなたにとやかく言われる筋はないわね」

「ボクはボクの意思でここに来た」

「ルイからなにか聞いたわね?」

何故そんなことがわかるんだ。

誰も、何も、言わない。

「まぁいいわ。ルイに会っているなら好都合。シイ、あなたに聞くわ」

シイに寄る。



「あなたは、ウルを、助けられる?」

「兄様を、助ける……?」

やはりなにか、呪いか、魔法か、なにかにやられたようだ。

「今ウルは、操られている」

とある"誰か"の呪いによってー。

それをシナは教えてやらない。

「方法がないわけじゃない、上手くいけばあなたの嫌いな人たちも殺せるわ。だけど、失敗すればウルか、あなたが死ぬ」

「兄様が死ぬのは嫌……」


……なにか、嫌な予感がする。

シナの言うことを、聞いてはいけないような……


その時翼の音が聞こえた。

先ほど聞いたばかりの音だ。

上から、誰か降りてくる。

「……ルイ」

「帰ったんじゃなかったのか?」

「事態が変わった」

ルイは指で自分の竜に指示を出す。

頷き彼は、壁の向こうへと飛んでいった。

「この国の崩壊を、1番望んでいる人が、邪魔しに?」

「邪魔したいわけじゃないさ。壊れるなら壊れた方がいい、こんな国」

「じゃあ何しに来たの?」

「もっと簡単で、確実な方法を教えに」

そう言ってルイは1冊の本を取り出した。


「どちらがいい?この国が滅ぶのと、ウルが死ぬの」

「そりゃあ……」

シイの言いたい事はわかる。

ルイはシナに聞いているのだ。

彼女は黙っている。

この国と、ウルを天秤にかけているのだ。

シイがルイとシナの顔を交互に見る。

彼女にとっては……この国も、大切なものなのだ。

そして、彼にとっても。

「……ウルは、多分、怒るだろうね……」

小さく呟くシナ。

決めたようだ。

「いいよ、ルイの望むようにしなよ」

「りょーかい」

ニヤっと笑ってルイは言う。

そして1度目を閉じて、開いて。

なにかを呟き始める。

呪文……?

魔法か?呪いか?

本が自然に開いて、空に浮かぶ。

文字が空で踊り出す。

「はぁ……じゃあ、安全なとこ行こうか?」

シナが寂しそうに、そう提案した。

「安全なとこ?」

「ルイの子が、話つけてると思うし……とりあえず、シイの家まで」

「ボクの?」

「話って?」

「いいから」

静かに笑って、多くを語らず、シナは歩き出した。

それに続く。

……この人たちは全く、どうしてこう自分勝手にことを進めるのか……




「待っていたぞ」

シイの家に戻ってくると、見知らぬ誰かがいた。

「久々だな」

「今はあんまり時間が無いの」

「あぁ、そうさな。話は終わってるから、急ごうか」

「ついてくよ」

シナはこちらにそれだけ言って、明らかに人ではないものについていく。

……この人(?)も半竜人か。

どちらかと言うと、竜が強めに見える。

今まで会って来た人たちが、人に近いだけで、本来の姿はこちらなのかも知れないが。

人肌ではなく、緑色の鱗。

赤色の角も生えている。

髪の毛は人並みにあって、茶色だ。短髪なので性別はわかりにくい。

ただ話口調や声からして男性のようだ。


「着いたぞー」

そこに居たのは、たくさんの竜だった。

壁に小さな穴が空いていて、そこを通った先の景色だ。

色々な色の鱗を持つ竜たち。

「いっていいよ」

シナが言うと、1匹の竜が飛んでいった。

ルイの子だろう。

見知った影が、中央街の方へ消えていく。

「あの子がルイと合流したら、あの壁は消える」

シナが言う。シイの方を、(正確には腕輪を……?)見つめる。

「そしたら……」

大きな音が鳴った。

壁が、崩れていく……

「わっ」

シイが声を上げた。

腕輪が光っている。その呪石が。

緑色の光を放っている。

「何……?」

「さぁ、始まるよ」

シナがその光を見て言う。


「ガァァァァ!」

竜たちの目の色が変わった。

叫び声を上げながら、人の住む街へ突っ込んでいく。

シイの姿も、変わっていた。

半竜人ではなく、ちゃんとした竜に。

竜の並に巻き込まれないよう、シイの背中に乗った。

シイがそう言ってくれたのだ。

彼女は狂ってはいないらしい。

「あなたの場合は半分浸食されてるからむしろ力が付くんじゃない?」

とのこと。

現にあの小さかった半竜人が、立派な竜になって3人の人を乗せて飛んでいる。



上から見る景色は凄まじかった。

竜たちが暴れ、人を殺していく。街を壊していく。

「シイ、あっち。あの紫色の竜のところへ」

シナが言う。その竜にはよく見ると人が乗っているようだった。

「……兄様」

シイも気づいたようだ。すぐに飛んで行く。

紫色の竜の背中には、気を失ったウルが乗せられていた。

「こいつであってるのかい?」

「えぇ。ありがとう、アリゴール」

「お安い御用さ」

シナと彼(?)は知り合いだったらしい。

「彼はさっきここまで案内してくれた子よ。ルイの子の友達」

小さい声で彼女は説明した。半竜人の時の鱗の色と、竜になった時の鱗の色は違う場合もあるのか……

「一旦降りましょうか。シイ、あの樹のもとへ」

シナの指差す先には、何故か無傷な椎の木があった。



樹の根元に降り立つと、そこには大きな穴があって。

「ついてきて」

シナの後に続くと、樹の中だろうか……さっきまでうるさかった音が聞こえない、不思議な場所に出た。

「ここはもともと、わたしの師匠である、たちばな美月みづきの暮らしていた家なの。彼女は死んでしまって今はいないから、彼女の人形たちの家になっているけど。美月は呪いの人形師だったのよ」

「そんな人に、呪いを教わったの?」

「形態が違うって言いたいのかしら。彼女の得意分野は人形作りだったけど、他の呪いも扱えたから。あの辺じゃ1番の人だった」



「あれー。久々に来てくれたと思ったら、会いに来てくれたわけじゃないのね」

しばらく歩くと階段があって、それを下っていったら人がいた。

「彼女は最期の人形、アルカリア」

人形……?こんなに大きいのに?

「自分の子供サイズの子が作りたかったのだって」

少しさみしそうな顔をしてシナがいう。

「それで、なんでこんなところに?」

あたしが問うと、アルカリアが答えた。

「それを治すため……と、その腕輪をとるためね」

どういうわけか半竜人に戻ったシイがウルを抱えている。それを指さしながら彼女は言った。

「裏を使うんでしょ?いいわよ。で、あなた達はこっち」

シナが言葉にうなずき、ウルを抱えて奥に消えた。

残されたあたし達はアルカリアの後ろをついていく。



「さーて、それ、あいつが持ってた物のはずなんだけどどうして?」

あいつ……ってことは、彼女はウルのことを知っていて、腕輪を持っていたことも知ってることになる。

「まぁ、取るのは簡単だし、あっちよりも早く終わる気がするし。いいんだけど、なんとなくね」

ルイから聞いたことを話す。

「はぁ……シナはそんな大事なこと黙ってたのね。全く……。まぁいいわ。ありがとう。じゃあシイちゃんこっちおいで」

シイを椅子に座らせる。

腕輪に手を当て、目を閉じる。


パリンっと小さな音が鳴って、腕輪が壊れた。

「はい取れた。痛みはない?」

ものの数秒だった。

「かなり呪いの力も弱ってたみたいよ〜こんな簡単にいくなんて思わなかったわ」

石は……無事のようだ。

「痛みとかは……ないです」

「そう?良かった。で、これはどうする?」

「それ、あたしが貰っていいかしら」

石を掲げ聞くので答える。

「特に異論がなければ壊そうと思ってたのだけど……これが必要なの?」

「そう」

「ふーん……まぁ、シナも返せとは言わないだろうし、シイが要らないなら」

「ボクはそんなもの」

「じゃあ決まり」

石を受け取る。これでやっと2つ目か……

随分と長かった……。



アルカリアは不思議だった。

呪いは解いた、あの石にはなんの効力も無いはずなのに、欲しいとは。

彼女はその石をどうするつもりなのか…?

恐らく、金にはならない。

他からみたらただの石だ。

わたしたちからしたって、元々呪いのかかっていたってだけの石。

文庫にもなにも書いてなかったし……。

彼女が呪いを扱えるとも思えないし、石の呪いは復活することないだろうし……。

大丈夫、かな……。

シナがなにか知っていたら、聞いてみるとしようか。

本人は、多分答えてくれないだろうし。


「じゃあ、ルイのところにでも行く?」

全てを押し隠して、問う。



4800文字でした。やっと2章が終わりそうです。


あと久々にアクセス解析とか、ブックマーク数とか見たら増えてました嬉しいです。間が開いてしまって申し訳ない。

良ければ感想・評価宜しくお願いします。

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