030 走馬灯
担当:四葩
「リューク、貴方って言葉遣いが悪かったのね……さようなら」
冷めた声音。地べたから見上げるともう振り返ることを微塵も感じさせない足取りで去る背中がリュークには視えた。
流れ出た赤は自分の周りに拡がり、その赤は体温をも引き摺っていく。
思い返せば、自分の人生は常に他人に左右されるものだった。年端のいかない頃は衣食住に苦しみ、物心つけば親に売られ、王に飼われてからは似た境遇の奴等を蹴落とし競争を勝ち進み、やっと解放されたと思えばこの現状
……なんと呆気ない人生だろう
"自由"、焦がれてやまないずっと欲していたものの、今、手には入ろうとしている
……そうしてリュークという名の青年の幕が閉じたのだった
「あらぁ」
その閉幕を始めに識ったのは遠くにいた、コーネリアだった
張り詰めた空気の中、唐突に声を上げたが声をあげる
「なーんだー。簡単にやられちゃったじゃない。折角穴をあけてあげたのに」
「……彼がそれを選択するとは、思えなかったから……ね」
「そうねぇ。まぁいいわ。そこの彼は使えるんでしょう?」
「……どうでしょうね?」
「使えないのに使う意味なんてないしね。貴方がそういうことするとは思えないから、信じてるわ」
「そう……」
わたしは集中する。
彼に呪いをかけて、
彼女の腕輪の呪いを……暴走させる為。
「何を話しているのかしら」
自分たちを蚊帳の外にして会話する王とコーネリアにシナがウルにきく。
「わからない。彼、って言ってるしシイたちじゃないよ」
「貴方は彼、に分類されるわね」
「なに、心配してくれるの」
暢気に話すウルにシナの声が冷ややかに変わる
「……俺に何かあればなんとかしてくれるだろ」
「いらない信用ね、捨て置くに決まってるでしょ」
「……シナは優しいなぁ」
微笑むウルと憎々しげに眉をひそめるシナは会話中でもその視線を王とコーネリアだけに絞っていた。
それだけ目の前の二人は脅威だった
「会話は終わり?若い人って素敵ね。信頼し合っているのが伝わってくるわ」
「確かに。もう歳を重ねると打算、妥協ででしか関係をつくれないからね」
緊張する二人に対し王とコーネリアは和やかに会話を続ける
「そうそう、アンジェやエルは元気かしら。お嬢さん」
「……」
「嫌われているね、コーネリア」
「貴方よりはましだと思ったけど…駄目みたいね」
拗ねたように話すコーネリアはそれでも楽しいそうであった。
再び無言が続く
丘であるここからは大きな椎の木が見える。背後にはその木の名の少女がいるはずだ。ウルの大事なシイが
「良い機会だが…何を話そうか…腕輪についてでも話すかい…それともシイ」
「あんたがシイの名を口にするな」
考えていた少女の名にウルが咄嗟に怒鳴る
「素晴らしいね、そんなに彼女が大事か」
「王……仕上がるわ」
「ご苦労コーネリア。君は流石だね……」
黙り込んでいたコーネリアが王に微笑む
「ゔぁっ」
「ウルっ」
苦しみ出したウルにシナの目線が動く。
シナの目に映るのは頭を抱え膝を着くウルの姿だった。
「さぁウル、彼女の為に抗い給え」
霞む思考の中、自身を見上げ笑いかける幼い少女の姿が浮かぶ
ーー−シイ−ーー
音に出来ずに告げた名は、もう届かない
次回は長くしたいです(´◦ω◦`)




