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少女と呪石とほどほど人外  作者: 宮居/四葩
序章
3/80

002 序章[#2]

担当:宮居

「……オムライス」

「アンジェ、好きだもんな。ルイスは?」

「姉さんと同じで」

また真似してくる。作る方は楽だろうからいいんだろうけど。

「分かった。用意してくるから片付け進めておいてくれ」

ファザはそう言って奥へと消えた。

いつまでこいつと一緒に居なきゃいけないんだろう。

嫌気がさしてその場から離れた。



あたしは自室に行った。唯一荒らされなかったあたしの部屋。

ルイスは付いて来なかった。流石に空気が読めたらしい。

中に少し進み、棚に置いてある写真に手を伸ばす。みんなと撮った写真だ。


「………、兄、様……っ」


どうして?どうしてウィル兄様が、みんなが殺されなくちゃいけなかったの…?

なのに、なんであたしとルイスが生き残ってるの……?

「返してよ……、兄様を……、みんなを返してよ!」

写真を握りしめたまま泣き崩れ、喚いた。

ルイス以外は大好きだったみんな。もちろん、シスターだってそうだ。

何より、好きで好きで仕方ない兄様を亡くしたことが辛かった。

せめて、兄様だけでも戻ってきてくれたなら……。


-……戻る……?-

『-……昔ね、死んだ人が生き返るかもしれない、って方法が書いてある本があったの。それを実際にする人はいなかったけどね。とても危険だと言われていて、なおかつ、デタラメだって言われていて。信じる人もあまり居なかったわ-……』


前にシスターが話していたことを思い出す。

確かあれはルイスが変わった話をしてくれと駄々をこねていた時だった。

シスターもあまりその本を信じていなかったらしい口振りだったし、何より、あたしも馬鹿げた話だと思って聞いていたのだ。

だが、今は状況が違う。あたしは兄様を失った。

もしその本の方法が本当だったとしたら兄様は生き返るかもしれない。

「アンジェー、どこだー?夕飯出来たぞー?」

部屋の外からファザの声が聞こえた。

「今行くから」

今日探しに行くとファザまでついて来そうだ。明日に回すとしよう。

あと面倒くさいのはルイスだ。

事ある事にくっついて来るからどうにかして撒かなければ。

それを考えながらファザの元へ行った。



翌日、あたしはファザに部屋の片付けを任せて図書館に来た。

ルイスもついて来ると言っていたがファザの手伝いをするようにお願い(と言う名の邪魔者払い)をして1人で。

「ったく………しつこいんだからあいつは……」

ボヤいてから図書館で生き返りの本を探そうとする。

が、よく考えたらその本の形状を知らないということに気がついた。

「1冊1冊見てみるしかないか」

幸いにもこの図書館は宗教・呪術系で分けられているので、そこで探すことにした。

それでも冊数は多いので探すのは時間がかかるだろう。

どれだけ面倒くさくても、兄様が生き返るかもしれないならばあたしは探してみせる。

「兄様、待ってて。あたしが兄様を生き返らせてみせるから」



何時間たっただろうか。8つある棚の内、5つの棚を調べ終わった。

それでも例の本は出てこなくて、本当に噂だけだったのかと思い始める。

-……兄様は戻って来ないのかな…-

涙目になり始めた、その時、

「……何……?」

2つ先の棚の方からなにやら異様な光が見えた。

変に思い、そっちへ行ってみる。

一番上の端に禍々しい気を纏った本が1冊あった。

脚立を使ってその本を取り出すとさっきまでの禍々しい気と光は消えていた。そしてページを開く。


『-……この書は大変危険な物であり、容易く願いが叶う訳では無い。過酷な旅の後に叶うであろう………ー』


「!これだ……っ」

あたしはようやく目当ての本を探しだした。

これで、これで兄様を生き返らせることが出来る。

とりあえずこの本を借りよう。

早く内容を確認したくてすぐに図書館を出た。

どうやら貸し出しの係の人間はこの本のことは知らないらしく、すんなりと借りることが出来た。

あたしは人がいない近所の空き家に入った。あたしたちの秘密基地だ。

よく兄様と一緒に遊びに来ていた場所だ。ルイスも何故かいたけど。

思い出の場所に来たかったと言うのもあったし、人が来ることはまず無いので、ゆっくり内容を理解する暇が出来ると思ったからだ。

手頃な所に座って本を開いて読み始める。



どうやらこの本は強い願望が無いと見つからない代物らしい。だから知ってる人間が少なかったのか……。

そして生き返りの成功率は物凄く低いとのこと。元々生き返りを実行する人間が少なかったのもあるかもしれないが、生き返ったという例が1つも記されていないのだ。

最後の3ページに生き返りの方法が書いてあった


『生き返らせたい者がいる場合は4つの石を集めなければならない。その石は不思議な力を持っている。一般的には呪われた石と呼ばれるが、強力な力を持っている故に恐れられているからだ。それぞれ青、緑、紫、赤色である。1つ1つ形状は異なるため、探し出すのは困難だろう。だが、その4つを集めた時、願いは叶えられる。』


「4つの呪われた石……。ということは旅に出なければ駄目か……」

探しに行くのは決まっていた。その場合、ファザになんて言って出ていこうか……。

ルイスなんて放って置けば良いだけだし、孤児院にはもう誰もいない。

あたしは1人で生きていける。そして、兄様を生き返らせる。

それが出来れば後はもうどうでもいい。

あそこを出られる言い訳を適当に考えて、無理矢理説得させる他無いか……。

本を閉じ、孤児院に戻ることにした。




「ファザ、」

「アンジェ、戻ったのか。もう片付け終わったぞ。後は皆を墓に埋葬するだけだ」

「……そっか。ありがとう」

ルイスはどうやら疲れて寝ているらしい。ならば好都合だ。

「ファザ、あたし、ここを出る」

ポヤポヤしてたファザの顔が強ばった。

やっぱり反対されるか……?

「どうして?」

「そろそろ自立したい。そして、色んな世界を見てみたいの。ウィル兄様がこれからやろうとしていた事、あたしが代わりにやりたいんだ。多少ならお金は稼いである。埋葬を終えたら、あたしは旅に出る」

ほぼ嘘だけど。

兄様が生き返ればやろうとしてたこと出来るからね。

あたしはそれの補助をしていきたいからあながち間違ってないのかな。

「俺は反対だ」

……やっぱりか。

「でも、お前の決めたことだ。好きにすればいい」

「え」

「アンジェが考えてその結果になったんだろ?俺にお前をここに縛り付ける権利はないし。自由にすればいいよ」

意外と考えて無いようで考えているのねファザも。


「今、心の中で馬鹿にしてただろ」

「ううん。ありがとう、ファザ」

これで、旅に出れる。準備を始めなくちゃ。

「ルイスは俺の所に連れていくよ。まだあいつは小さすぎる」

「とてもありがたいわファザ」

「………今日一番の笑顔だな……。まあいい。それと、護身用にこれを持っていきなさい」

そう言ってファザが出したのは短剣だった。

前に何処かで見たことがある気がするが、思い出せない。

「これは……?」

「シスターの私物だ。これがお前を守ってくれるはずだ」

そうだ、前にシスターが部屋でこれを手入れしていたのを何回か目にしたんだった。

所々傷があるが、きっとシスターが何かしらと戦った時に付いた傷だろう。

「分かった。持っていく」

「埋葬は明日でもいいか?アンジェも準備があるだろう?」

「ええ。今から準備してくるわ」

そう言って自室へ向かう。

きっと長い旅になるだろうから、荷物自体は少なくて良いだろう。

動きやすい服で、着替えは…駄目になったら買えばいいし2組もあれば充分かな。

ちょっとした防具もあるし、問題ない。

「こんなもんかな……。あ、」

引き出しに、兄様から貰った髪飾りが出てきた。

御守りとして、旅の最中は着けておこう。


とりあえずの荷物を纏めて、3人で食事をとって明日の埋葬(あたしは旅に)備えて早めに休むことになった。

担当者が2話続けて同じなのは、トラブルがあった為に1人抜けたからです。ご了承ください。(このあとがきは完結した後あらすじに移動させます)


next→8月2日

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