010 仲間
担当:宮居
タイミングを図ったように音もなく現れたシナに付いて歩く。
「あなた、部屋はあるの?」
「一応、1室頂いております」
例の部屋から数分歩いて廊下の端。
シナが壁を押した。
ゴゴゴ……っと言う音と共に扉が出現する。
「へぇ……」
こんな仕掛けもあるのか。
扉を開けると階段が現れた。地下へと行けるらしい。
「この下です。位置的にはエルの牢の後ろですね」
そう言って降りていく。その後に続く。
……もしかしてシナは、あたしが何を話そうとしているか知っているのかも?
彼女は呪術師だ。
心が読めてもおかしくは……ない。
階段を降り切るとまた扉が現れた。
「どうぞ……ここなら誰にも聞かれることはありません。誰かが訪ねて来たらわかるようになってますので」
「へぇ……奴隷って言う割にはちゃんとした部屋与えられてるのね」
シナが椅子を進める。ルイスが隣に座ったのを見て、思わず蹴り飛ばしそうになった。
駄目だ。こいつのことは見ないようにしよう……変なことしたら、追い出してやる……
「どうぞ。あぁ、毒など入ってませんので御心配なく」
「それ、余計な一言じゃない?」
いただきまーすとルイスが言い、カップに口をつけた。
途端。
大きな音を立ててルイスが後ろに倒れた。
「……どういうことよ?」
「邪魔そうにしてたので、彼がいると話しにくいんじゃないかと思いまして。眠っていただこうかと」
「あたしが何考えてるかわかるわけ?」
「いえ。そこまでの芸当は出来ません。呪いというのは魔法ではありませんので。アンジェ様の様子を見て、そうでないかと思っただけですよ。それとも、迷惑でした?」
今日はよく喋るな……。
いつもの様子とは大違いだ。
「迷惑ではないわ。寧ろありがたい」
「なら、良かったです。では、本題に入りましょうか」
「貴女……ほんとはあたしが何考えてるかわかってるんじゃない?」
「そんなことはありませんよ……言っていただかないとわかりません」
カップに口をつける。喉を湿らせてからシナは続ける。
「ただ、大体はわかっております。わざわざこの部屋に招いたのもその為……この仮説が正しかったら、ですけど」
立ち上がって壁に手を当てた。扉と反対の壁だ。
「───…」
何かをぶつぶつと言っている。
数秒後、壁が動いた。
「……エル」
1部の壁が反対側、牢側へと向き、エルが部屋へと現れた。
「ってかこれ、今見られたら牢の中には誰もいなくなっちゃうんじゃ?」
「そこら辺は、これで」
両手を振ってシナが言った。
呪術でなんとでもなる、ということだろうか。
「自分の仮説はあっているでしょうか。エルのこと、ですよね」
「そうね。貴女の仮説を話してくれないかしら?」
エルの方をちらっと見てから
「そうですね……。簡単に言えばこの呪術と、この石のことですかね」
エルの首輪に触れる。
その石は赤い光を放っている。
とても綺麗な、強い光だ。
シナは続ける。
「呪術を、あなたは必要としている。そして、この石を欲しがっている。違いますか?」
「いいえ。間違ってないわ」
もしかしたら彼女は、大きな協力者となってくれるかもしれない。
少しこちらの手中を晒すとする。
「あたしは今、希望を叶えるために、その石を集めている。おそらく呪石といわれるもので願いを叶える力があるらしいの。それは各地に散らばっていてあたしはそれを集めてどうしても叶えなきゃいけないことがある。そこで貴女に……協力していただけないかと思って、ね」
「呪石、ですか……。それは初めて聞きました。装飾品として使われているとは……」
エルの首輪を見て言う。
「……協力の話ですが」
暫く紅い石を見つめたまま何も言わなかったシナが口を開いた。
「出来ないことはないです。寧ろ、喜んで協力させていただいても、と言ったところですが、こちらからもお願いがあります」
「協力してくれるのなら、聞くわよ」
出来ることなら何でもする、と答える。
「……自分を……この城から、この国から、解放して欲しいのです。自分にも……叶えたい、叶えなきゃいけないことがあります。それに協力してくるのなら、こちらも協力しましょう」
「いいわよ。ここから出してあげればいいのね?」
難しいことではないはずだ。協力してくれる奴がいる。
シナが頷く。
「じゃあ、手を組みましょう。お互いの願いを叶える為に」
手を差し出し握手する。
「……よろしく、お願いします」
「ってか貴女……よく喋るのね。いつも無口だったから」
現在会議中──ここから抜け出す為、そして希望を叶える為のだ──よく話すシナを見て言う。
カップに口を付け喉を湿らせてから、
「奴隷は、人との会話を最小限に抑えるよう言われていますので」
他の奴隷は、何日も言葉を発することなく過ごしてますよ。とシナの言葉が続く。
「ここから出て、会わなければいけない友人と話す時もこんな感じです。確かに元からあまり話すタイプではなかったんですけどね」
「……へぇ……。その友人さんと……是非とも会ってみたいわ」
「彼女は……警戒心が強いので……どうでしょう?」
静かに、シナは笑った。
「そういえばー……」
あらかた作戦は決まった。細かいことはまた近々話すことにして、今日はお開きということになった。
扉に手をかけ言う。
「シナはなんで敬語で話すの?」
「特に、理由はありませんよ」
苦笑する。
「じゃあ、それ辞めてくれる?せっかく、仲間になるんだし」
「……」
シナは黙ってる。微笑を顔に浮かべて。
「……そう……だね。仲間……わかった、アンジェ」
「ん。それと……エル」
エルに近づく。頬に触れる。
「貴女を利用するわけじゃない、それは勘違いしないでね?貴女を解放してあげることだって、話聞いてたらわかるでしょう?貴女は、あたしを信じて、普段通りにしてて?いい?」
エルは頷いた。
「よっし。じゃ、今日はこのへんで。おやすみ、シナ」
「おやすみ、アンジェ」
ルイスはまだ、目覚めていない。
それを置いて部屋を出る。
期間空いたのに短くてすみません……
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