夢の生活
私は今、とても充実している。まるで、夢のようだ。
美しい妻と娘に囲まれて、仕事は大した失敗は無く業績は上向き。
世の中は平和で、未来にこれといった問題も心配も無い。
変わり映えのない日々なのかと聞かれれば、それなりに刺激もあって飽きたこともない。
科学技術は止まることなく日進月歩し、豊かな生活は常により豊かへと向かっている。
私の人生は順風満帆、上手く行きすぎて怖い程だ。
今日も私は満足のゆく一日を過ごし、眠りについた。
…………。
朝が来て、目が覚めた。
さっきまでの事は全て夢だった。
ありもしない事、夢で見たいたのだ。現実とは大きく違う。
私には、妻も子もいない。
やりたいことが満足に出来ず、不自由な生活だ。
充実なんてしていない。
目が覚めた今、あの素晴らしい夢の出来事がほぼ思い出せなくなってきている。
私が消える。私の人生の全てが。夢の人生が。
消えて……くれ……る……な――。
* * * * *
「おやおや、どうしたのマー君。起きたと思ったらどうして泣きだしたの?」
母親が、先ほど目覚めばかりの我が子を抱き上げてあやす。
生後三か月になる彼が見た夢は、果たして正夢となるのだろうか。
それが判明するのは、まだずっと遠くのお話。
このお話、狙ってもないのに、偶然ピッタリ500文字でした。